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8-11 ドレスを仕立てるってこんな感じになるんだな。

正直、ドレスの事なんか全然わかってません。

もし服飾史に詳しい方がおられましたら参考文献などをお勧めしていただけると幸いです。

 ワンボックスカーが届いたので、早速倉庫に運んだ。

 一台は俺が管理することになる。

 少し気になるのがロバたちだ。

 これまでさんざん世話になってたからなぁ。

 少し名残惜しい。

 年寄りだとは聞いていたけど、まだ引退するわけでもない。

 今度、雇用される商人と頑張ってくれると嬉しい。

 そうそう、その雇用される商人がきまった。

 ロドリコとアノーという名前だったか。

 二人とも、実は俺も面接させてもらっていた。

 春の段階で、顔を見ている。

 とはいえ、覚えているかと言われると怪しい。

 微かな記憶だけど、確かロドリゴの方は、盗賊に身ぐるみはがされて、路頭に迷っていた人だった記憶がある。

 やる気戻ってるのかなぁ。

 もう一人のアノーは、全然印象に残ってない。

 まだ倉庫にも顔を出してないので、どう接すればいいのかつかみかねてる。

 今日は、ベネットのために仕立てたドレスを受け取り、そのあとはアルノー村にあるレイナ嬢宅へ送り届ける予定だ。

 日本語の勉強を教えてもらっているので、食事を提供することになっているが、ちょっと疑問に思っていたことがある。、

 車の助手席にいるベネットに尋ねてみた。

「ベネット、レイナさんって料理できるの?」

 ベネットが少し固まる。

「う、うん。その……お米のポリッジは作れるかなぁ……」

 おかゆかよ。

「え?おかずとかは?」

 まさかおかゆだけで過ごしてるんじゃないだろうな?

「んー、ジョシュ君とかがおすそ分けしてくれる料理を食べてるって言ってたよ。

 冷めて不味いとか。

 いろいろ言ってたけど、温めなおさないのはなんでなのかな。」

 面倒なんだろうなぁ。気持ちは分かる。

「なんだっけ?

 あの、ヒロシの世界にある調味料。

 味噌だっけ?

 あれだけでポリッジを食べることも多いんだって。」

 いや、もうなんだその貧相な食事は。

「だから、私に嫁に来て欲しいとか言われちゃったよ。

 ジョシュ君に頼めばいいじゃないですかって言ったら、それは断固拒否するとか言ってたけど。」

 そこはさすがにプライドが許さないんだなぁ。

 しかし、前途多難だ。

 

 仕立て屋について、車を路肩に寄せる。

 路上駐車とか、していいものか悩んだけど、いきなり車をインベントリに戻すわけにもいかない。

 流石に目立ち過ぎるしな。

 他にも馬車とかいっぱい止まってるし、法律で路肩に停めちゃいけない法律もない。

 人が通れるスペースを確保しておけば許されるだろ。

 ゆる、んー……気にはなる……

 駐車場でもあればいいんだけどなぁ。

 そもそも馬車自体は多く往来しているけど、駐車スペースがあるのは一部の高級店だけだ。

 しかもプールボーイみたいに馬車を預かって馬やロバの世話をしてくれるみたいな感じだから、当然街の仕立て屋みたいなところにあったりはしない。

 長時間止めるなら、馬具屋に預けるわけだけど。

 短時間ならみんな気にせず路駐なんだよなぁ。

 いいか悪いかで言うとよくないけど、方法がない。

 諦めて、エンジンを止めてキーを抜く。

 ベネットは気にも留めてないから、すぐに降りてしまう。

 うぅ、扉を開けてあげたりとかしたいんだけどなぁ。

「どうしたのヒロシ?」

 降りてきた俺にベネットは寄り添い戸惑い気味に聞いてくる。

「いや、ちょっとその。いやなんでもない。」

 まあ、迅速もっとーの傭兵だ。

 てきぱきしているのは、当然だろう。

 普段は、それがとてもありがたいから文句を言うのもおかしい。

「んー、まあいいけど。」

 ベネットは分かりかねている様子だけど、これは分からなくていい。

 俺のわがままだしな。

「行きましょうか?お嬢様?」

 そう言って、俺は彼女の手を引く。

「うん。」

 嬉しそうに、指を絡めてくる。

 

「とてもお似合いですわ!」

 店員さんのテンションの高さに俺はちょっと引いてしまう。

 いや、確かに似合っている。

 白と赤、それにところどころに黒いレースが配色されていて、とてもいいドレスだ。

 若干、胸が大胆に開いているのが発注とは違うけど。

 その、うん。

 素晴らしい。

 本来は、そこにスカーフやショールを巻くんだろうし、何だったら豪華なネックレスを身に着けさせるだろうから下品というわけではないはずだ。

 でも、その、今の状態だと目のやり場に困る。

「ヒロシ、どうかな?」

 どうかなって、満点です。

「文句のつけようがないよ。

 俺も似合ってると思う。」

 少し照れながら、でも嬉しそうに笑ってくれた。

 他にも身に着ける手袋やら帽子やらスカーフなんかもおすすめされた。

 言われるがままに買ってしまいそうになるが、ベネットに止められてしまう。

「身に着けて一番似合うなってものだけにして。」

 そういわれると途端に困ってしまう。

 だって、どれも似合ってる。

 組み合わせもあるから、あれこれ選んでいたらいくらでも時間が過ぎてしまうだろう。

 んー、帽子はドレスに合わせて赤いボンネットと言われる帽子が合いそうだ。

 手袋は白のレースの長いものが合うかなぁ。

 いや、黒か?

 どっちにしよう。

 スカーフは中央にサファイヤがある白レースがいいかなぁ。

 いや、赤に青色はおかしいか?

 黒いレースにルビーというのがいいか。

 どっちだろう。

 悩む。

 俺には壊滅的にファッションセンスがない。

 とりあえず店員さんに聞いてみよう。

「なるほど、おっしゃる通り悩みますねぇ。

 でも、デザインからしますとこちらの組み合わせの方がよろしいんじゃないでしょうか?

 実際付けてみていただいた方がよろしいかと思いますがいかがなさいますか?」

「お、お願いします。」

 もう、俺にはこれが精いっぱいだ。

 ベネットはちょっとうんざりした顔をしている。

 ごめん。

 しばらく試着に時間がかかったらしく、次に現れたベネットはとてもきらびやかな貴婦人に見えた。

 け、化粧をしてる。

 そっかー、今まで化粧してるの見たことがなかった。

 いや俺が気付かないだけで何か付けてたのかもしれないけど、ともかくここまでのばっちりメイクは初めてだ。

「ねえ、ヒロシ、おかしくない?」

 帽子で顔を隠すようにうつむいてしまう。

「おかしくないよ。

 とてもきれいだ。」

 俺は小学生みたいな感想しか言えない。

 もっと気の利いたこと言えないのが恥ずかしい。

 でも、他に言葉が見つからない。

 

 支払いを済ませている間に、ベネットは元の服に戻してしまいメイクも落してしまった。

 もったいない。

 いや、まあお洒落着だから普段からあれで生活しにくいのは分かるし、お化粧直しも大変だ。

 分かるけど、もったいない。

「何?普段の私じゃご不満?」

 ベネットは、少しむくれてそっぽを向く。

 そんなわけないじゃないか。

「普段も可愛いよ。

 いろんな姿のベネットを見れて俺は幸せ者です。」

 そう言って、ベネットを後ろから抱きしめた。

「もう、調子いいんだから。」

 顔は見えないけど、声はうれしそうだ。

 もっと服を作ってあげたいなぁ。

 でも、ほんとうにドレスって高い。

 トータルで、1万ダールは結構な出費だ。

 もっと稼がないとなぁ。

「大切にするね。」

 ベネットが振り向いて、笑顔で言ってきた。

 この笑顔の為なら安いってもんだ。

 

「そうだ、もう一つ渡すものがあったんだ。」

 俺は、髪飾りを取り出した。

 例の兜代わりに使えるというマジックアイテムだ。

「これ、ヘッドバンドヘルムよね?

 そんなに心配?」

 そういいながら、ベネットはヘッドバンドヘルムを身に着けてくれた。

「うーん、ちょっと視界がゆがむ。」

 そんなにか。

 身に着けてなかったからわからなかった。

「これは、どれくらい防いでくれるのかしら。

 大して効果がないなら使いたくないかなぁ。」

 うーん。

 歪みを補正してくれる眼鏡を作れたらいいんだけども。

「今度トーラスさんが戻ってきたらテストしてみようか?」

 ブラインドサイトゴーグルの視界もゆがむんだろうか?

 それとも全く見えなくなったりして。

 やっぱり買ったら、即使えるってもんでもないなぁ。

「……《止まれ》。《現せ》、《止まれ》。

 ……うん、やっぱりコマンドワードで切り替えられるみたい。」

 ベネットは試してみたかったらしく、何度かコマンドワードを唱えていた。

 まあ、言葉一つで効果を止めたり発揮させたりできるなら、普段は効果を切っておくのもありだな。

「そういえばジョン君たちはまた潜るの?」

 まあ、気になるよな。

 一応、明後日にまた遺跡に行くとは言われている。

 その時は、グラスコーが引率をしてくれるとか。

 なので、俺とベネットは少し自由に動ける。

「グラスコーさんが、セレンさんを連れて引率してくれるって。

 明後日には出発だから、それまでにあれを渡そうと思ってる。」

 あれとは当然専用インベントリだ。

 グループ共通で1タブ、2tを割り当ててそれぞれにイヤーカフやネックレスみたいな装飾品に付与するつもりだ。

 こうやって、複数人で1つの専用インベントリを共有できるのは便利だ。

 ついでに、ダンジョンの地図も渡しておこうか。

 第3層までに限定するとして、情報があった方がよりうまくいくだろう。

 ずるをしているような気もするが、これくらい大目に見て欲しい。

「いざという時、そこに退避するって言うのもできるしね。

 悪くないと思う。」

 ベネットも同意してくれた。

 問題は、これ、セレンには内緒にするかだよなぁ。

 まあ直接言わずにジョンたちが使ってるところを見てセレンが判断したうえで教会に知らせるかどうかを任せよう。

 いつまでも隠しておけない気がするし。

「そういえば、ハロルドさんには渡したの?」

 忘れるところだった。

「今度渡してきます。」

 また軽食切れで、販売機会を逃すところだった。

「そういえば、ハロルドさん、店拡張しないのかな?

 人は雇ったみたいだけど。」

 新しいテナントを探しているという話は聞かない。

 なんであれば今の店は残しつつ、新しい場所に2号店を開いてもいい気はするけど。

「管理が効かなくなるのが怖いんじゃないかなぁ。

 人に任せると滅茶苦茶になることだってあるだろうし。」

 ベネットがいう事は、確かにあり得るか。

「いろいろとお世話になってるから、力になれたらいいね。」

 そうだねとベネットも頷いた。

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