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8-8 そりゃ色々と事件も起こるよな。

ウィンナーはウィーンがないと駄目だと思いますが、ソーセージは良いのかな?

 戻ってきたら、店の周りが騒がしい。

 何かあったんだろうか?

「あ、ヒロシ。

 おかえり。

 なんかお客さんが急に倒れちゃって。」

 おいおい、まじか。

 食中毒騒ぎの次は、昏倒かよ。

 少し迷うが、倒れた人の状態を見るか。

 どうやら毒状態だな。

 割とやばい。

「セレンさん、《毒治療》使えますか?」

 はいと返事をして、早速セレンが毒を消していく。

 しかし、この人誰だ。

 いや、名前は出てる。

 スカベンジャーなんだろうなというのは分かるんだけど、仲間はどこだろう。

「おい!!こっちだ!!」

 どうやら仲間らしき男女がやってくる。

 いや、俺を睨んでるけど、俺が犯人じゃないぞ。

「ちげえよ。ヒロシさん所の店員が、お前んとこのを助けてくれたんだぞ。

 毒喰らうなんて、何やってんだ?」

 周りで見ていた人がなだめてくれて助かった。

「あ、そ、そうなんですか、すいません。」

 しかし、なんだ。

 毒って……

 何か飲んでたりしたんじゃなかろうか?

 ちょっとあたりを見回す。

 飲みかけらしき、ジュースの瓶がある。

 ラベルは見たことのない奴だ。

 鑑定を掛ければ、そのジュースに毒が仕込まれていたことが分かる。

 誰だ、こんなことする奴は。

「このラベル、どこの店のだか分かる人いますか?」

 ひそひそ話が続いた後、倒れた男の仲間が口を開いた。

「多分、ジェームスってやつが出してたやつじゃないかな。

 でも、あいつの所の奴が毒入りって。」

 どうしたどうしたといった感じで衛兵が人込みをかき分けてやってきた。

「毒殺未遂ですよ。

 はい、これ証拠品です。」

 口々にジェームスの野郎とか、とりあえずつるし上げるかといった声が聞こえてくる。

「やめろやめろ!!こっちで何とかするから!!

 お前ら余計なことするなよ!!」

 そういうと、衛兵さんが俺の腕をつかんで引っ張っていく。

「いや、俺が犯人じゃ。」

 とりあえず勘弁してくれ。

「違う、お前が見つけてくれたんだろ?

 悪いんだが、一緒に付いてきてくれ。」

 悪いなと言われるけど、今日は散々だな。

 こういう時は逆らわない方がいい。

 

 ジェームスの店は、それなりに繁盛しているように見える。

 なんでわざわざ客に毒なんか。

「いや、私は知らないですよ?

 きっと、そのジュースを作った業者が犯人だ!!」

 俺は眉を思いっきりひそめてしまった。

 いや、そんな業者もいるんだろうか?

 メリットが分からない。

「なるほどな。

 じゃあ、品物を見せてもらってもいいか?」

 衛兵さんはちょっと疑っているみたいだ。

 いや、まあやるべきことは分かる。

 どれが毒入りで毒入りじゃないかを調べろって事だろう。

「調べてくれるか?」

 そんなに凄まれたら、逆らえないでしょう。

 くそ、ただ働きじゃないか。

 とりあえず、冷蔵庫に納められているジュースは全部毒無しだ。

「毒は入ってないですね。」

 ただ何か引っかかる。冷蔵庫そのものだ。

 こんなに庫内狭かったかな。

 改めて、冷蔵庫を調べた。

 やっぱりそうだ。

 板でふさがれて、庫内が二重になっている。

 一旦ジュースを全部取り出し、端を叩いて板を外してみた。

 中には、同じラベルのジュースがあった。

「こっちは毒ありですね。」

 とりあえず、触らないでおこう。

「ほう、わざわざ毒ありと毒無しで分けるわけか。

 これで業者のせいにするのは無理がないか?

 なあ、ジェームス。」

 衛兵さんがどすの利いた声でジェームスに圧力をかける。

「いや、どっちが毒入りかなんてわからないじゃないですか。」

 いや、まあ、俺見ただけだもんな。

 とはいえ、《毒探知》って呪文もあるんだから見分けつかないわけないんだよな。

「つまり、ヒロシが嘘をついてるって言うんだな?」

 そういうと、衛兵さんが俺が毒無しって言ったジュースを差し出してくる。

 いや、一応鑑定して毒無しって言うのは知ってるけど。

 無茶苦茶だ。

 俺はため息をついて、ジュースを飲み干す。

「どうだ。

 お前も喉が渇いただろう?」

 そういいながら、衛兵さんは毒入りジュースをジェームスに渡した。

「いや、俺はどっちが毒入りかとか、そんなこと知らないし。」

 焦って変な言い訳してるなぁ。

「俺は、喉が渇いただろうから、飲めと言っただけだが?」

 いや、まじで飲ますわけじゃないよな?

「か、勘弁してください。」

 ようやく、観念したのかジェームスは頭を下げた。

 

 諸々の事情聴取を受けて、結局閉店時間まで拘束されてしまった。

 もう最悪だ。

「ごめん、二人とも。」

 手伝ってくれてた子は、すでに立ち去った後らしく、店じまいをしながら待っていてくれたようだ。

「結局何が目的だったの?」

 ベネットはそれが気になったらしい。

「なんでも、ジュースで儲ける奴らが憎かったらしい。

 なのに、わざわざ冷蔵庫を買ってまでやる意味が俺にはわからない。」

 本当に意味不明だ。

 他人が儲けているのが憎いからって、お金をかけてまでやる犯罪には思えない。

 何の利益もないし、杜撰すぎる。

「ヒロシさんも理解できないような人もいるんですね。」

 いや、セレンさん。

 俺は、別にメンタリストじゃないんですよ。

 いや、言っても通じないか。

「俺は単にわかった振りをしてるだけですよ。

 人の気持ちが完全にわかったら、それはそれで怖くないですか?」

 セレンは確かにと頷く。

 なんか、ベネットが急に抱き着いてきた。

 一体なんだろう?

「どうかしたの?

 急に抱き着いてきて?」

 とりあえず、振り向いて正面を向き合う。

「ううん、なんだろう。

 分かりたくないとか、分かりたいとかいろいろ考えてたら、ちょっと不安になったの。

 あいつのことだったら知りたくもないし、分かりたくもない。

 でも、ヒロシのことは知りたいような、知りたくないよな。

 そしたら、すごく私ってわがままだなって。」

 まあ、人間なんて、誰でもそうだよな。

「わがままじゃないよ。」

 俺は、ポンポンとベネットの背中を叩いてやる。

「いいな。

 いつか、私にもそんな人が出来たらいいのに。」

 セレンは切なそうにつぶやく。

「それより、ご飯どうします?

 これから、お料理ってちょっと辛いと思うんですけど?」

 セレンは吹っ切るように話題を変えた。

「まあ、適当なお店に入ろうか?

 おいしいところがあればいいけど。」

 まあ、割と店はひしめいているので、あたりを見つけられる確率は高い。

 おいしそうなところを探そう。

 

 毒で倒れた奴がメンバーを引き連れて、礼に来た。

 いや、その。

 飯の途中で来られても困る。

 そもそも、俺は酒がそんなに飲めない。

 ビールを注がれてもうれしくないんだよなぁ。

 いや、飲むけどさ。

「大丈夫?

 無理して飲まなくてもいいのに。」

 そういいながら、ベネットが炭酸水を注いでくれる。

「まあ、頭を下げられたら飲まざるを得ないですよね。

 自分が飲めるとついつい、相手も飲めるものだと思っちゃうし。」

 まあ、そういうこともあるよな。

「そういえば治療の代金って。」

 貰ったんだろうか?

「いただいてます。

 というか払わなかったら、もう一度毒を飲んでもらいますから。」

 怖いことを笑顔で言う。

 まあ、何でも無償でやると、それをあてにされてしまう。

 そこの線引きは大切だよな。

「ここのパンはちょっと柔らかすぎかなぁ。」

 ベネットがぽつりとつぶやく。

 俺も改めて、パンを口に含んだ。

 確かに、ちょっと生焼けっぽい。

「しょうがないですよ。

 本職じゃないんでしょうし。

 お酒がおいしければ、許します。」

 セレンはぐびぐびとビールを飲み干す。

「うーん、料理もおいしい方がいいなぁ。

 確かにここのビール美味しいけど。」

 そうかな?

 俺は苦くて、ちょっときつかった。

 まあ、人それぞれだよな。

「ソーセージはおいしいですよ。

 まだ、これではずれを引いたことはないですけど。」

 どこに行っても、ソーセージを焼いたものや煮たものではずれを引いたことがない。

 最近だと、必ずソーセージがあれば頼むことにしている。

「確かに、地域差はあるけどはずれって聞いたことないかも。」

 ベネットもどうやら俺に同意のようだ。

「うーん、これを不味くするなんてできるんですか?」

 心当たりはある。

 あるんだよなぁ、不味いソーセージ。

 わざわざ買う気は起きないから、無視してるけど。

「鶏肉を使ったやつとかは、不味いのもありますよ。」

 二人が俺を見てくる。

「「それはソーセージじゃない。」」

 声を揃えて言う事か。

 

 結局、酔いつぶれるまで二人とも飲み続けた。

 他の客からは、両手に花で羨ましいと言ってたが、一人は手を出してないからな?

 それに、さすがに二人に寄りかかられると密着しないと運べない。

 なんで酔いつぶれるまで飲んじゃうかな。

 ちょっと警戒心が足りないと思う。

 こんな状態で誰かに襲われたら厳しいぞ。

 それに、俺だって男だ。

 いろんな感触でいけない気持ちが刺激される。

 マーナは気軽についてきてくれるが、お前がもう少しおっきくなってくれたらなぁ。

「きつい……よ、っと……」

 コンテナハウスを出すのはそれほど苦労はしない。

 問題は、どうやって扉を開けるかだ。

 扉にどっちかを押し付けないと空けられない。

 寄り密着していいのはベネットだよな。

 胸に顔をうずめるような格好になってしまうが、仕方がない。

 《開閉》なんていう鍵のかかっていない扉を触れずに開閉する呪文もあるから、今度覚えておこう。

 息が上がる。

 どうにか、ソファにベネットとセレンを座らせることができた。

 すぐにこてんっと横になってしまうが、座りなおさせる元気はない。

 馬やロバは馬具屋さんに預けているので、ここからお世話をする必要はないけど、

 しかし疲れた。

 シャワーは明日でいいよな。

「しかし、この子らは無防備すぎだよ、まったく。」

 いっそ襲ってやろうか?

 いかんいかん、とりあえず、ちゃんとベットで横にさせよう。

 

 目を覚ますと生成りのサマーセーターにジーンズ姿のベネットが俺の上にまたがっている。

 夢か?

「おはようヒロシ。」

 そのまま、キスをされた。

 ちょっと待って、今やばいから。

 この、とりあえず離れなさい。

 どうにか体を起こし向かい合う形になる。

「いきなり何してんの?」

 まさかまだ酔っぱらてるんじゃないよな?

 どうやらシャワーは済ませたらしく、いい匂がする。

 あーもう。

 何うれしそうにしてんの?

「だって起きるの遅かったから。」

 だからって、上に載ってくるんじゃありません。

 危ないでしょう。

「早く降りて。」

 シャワーの音がしてるってことは、セレンが浴びているんだろうな。

 とりあえず、出てくる前に何とかしないと。

「本当に降りてほしいの?」

 そういうベネットの鼻をつまむ。

「降りないと怒るよ?」

 流石にこれは怒っていいと思う。

 挑発が過ぎる。

 二人だけならともかく、今そんなことをされたら俺が困る。

 ベネットは平気なのかな?

 そんなことないと思うんだけども。

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