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7-19 冒険者パーティーをプロデュース。

 相変わらず、グラスコーはギルド関連については反応が鈍い。

 おおむね、俺が言っている提案に同意しているようだが、全部俺の方で進めろみたいなことを言ってくる。

 そんなわけにはいかないだろう。

 お前が商会の代表なんだから。

 戻って来次第、首根っこ掴んで連れていくしかないな。

 ベネットからは、母親と喧嘩したとか、弟と妹たちが俺に会わせろとうるさいとかそういうことが、交換日記に書かれていた。

 喧嘩の内容は髪を染める染めないでもめたとか些細な内容だ。

 まあ、もったいないなくらいには思うので、お母さんの気持ちは分からなくもない。

 でも、おおむね仲が良くて安心した。

 弟さんや妹さんからは警戒されてる様子もあるけど、そこは俺の問題だからなぁ。

 改めて、挨拶に行かないと。

 警備のアルバイトをしてくれているカレル戦士団の面子はおおむね勤務態度良好で、問題なかった。

 引継ぎも滞りもなく、これで強盗に襲われるかもという不安は払しょくできたと思う。

 多分?

 しかし、困ったのがジョンの件だ。

 正直、グループのメンバーに加えていいと思える人物が見つからない。

 いや、志願者がいるんだが、加えていいもんなのかなぁ。

「ベーゼックさん、本気でスカベンジャーやるつもりなんですか?」

 呼び出された喫茶店で俺はお茶を飲みながらため息を漏らしてしまった。

 最近、昼間に酒ではなく紅茶やコーヒー、ジュースなんかと一緒にケーキや甘いものを出す店が増えつつある。

 俺としてはうれしいけれど、何か影響を与えてないかと不安になる。

「いや、これが君が噛んでるから特別なんだよ。

 正直、修道院での暮らしは飽き飽きしてたところだし、丁度いい機会かとも考えていてね。

 子供の御守りくらい任せてくれよ。」

 どっちかというと、御守されるのはベーゼックの方だと思うんだよなぁ。

 ”鑑定”してみれば、レベルが1上がって前よりは強くなったけど、ジョンの方が高いんだし。

 まあ、でも治療役はなかなか貴重だ。

 あんな危険な場所で活動するなら必須の役割なのに、術者が少なすぎる。

 普通なら手放しで歓迎するところなんだけどなぁ。

 教会関係者という事も気になるし、ベーゼックが女たらしという事も気になる。

 女性関連で関係が悪化したりって言うのも、スカベンジャーあるあるらしいので不安要因の一つとも聞いていた。

 まあ、あと純粋にジョンとの相性だよな。

 孤児と貴族の三男じゃそりが合わないんじゃなかろうか。

 身分差というのは、どうしても影響するしな。

「とりあえず、孤児だからってバカにしないようにしてくださいね?

 はっきり言って、ベーゼックさんよりジョンの方が強いですよ?」

 これで切れるようなら話にならない。

 どういう反応を示すだろう。

「そうなの?

 いや、まあ仲間ならその方が安心か。

 乱暴だったりしないよね?」

 うん、これなら平気かなぁ。

 いや、意外な反応だ。

 子供だし、孤児だし、馬鹿にするなとか言われてもおかしくなかったけど、プライドより興味の方が優先されたって事かな。

「そこは大丈夫だと思いますよ。

 口は悪いけど、性根は良い奴ですから。

 面倒見も良いし。」

 とりあえず、頼んでみてもいいかもな。

「ただ、あくまでも決めるのはジョンなので、一度会ってみましょう。」

 場所は俺の倉庫でいいかもな。

 しかし、住んでいる修道院って言うのは、ベーゼックの修道院とは違うんだろうか?

「よろしく頼むよ。

 できれば修道院以外で会いたいかな。

 孤児ってことは、あそこの修道院だろうし。」

 どうやらベーゼックは場所の見当がついているようだ。

「どこの修道院なんですか?

 実は、住んでいる場所は知らないんですよ。」

 ベーゼックの顔が若干ひきつる。

「知らないのかい?

 孤児たちには監獄って言われてるんだよ。

 マリドネル修道院というんだけどね。」

 そもそも街に複数の修道院があること自体を知らなかった。

 微妙な反応にベーゼックも気づいたようだ。

「教会関係者じゃないと分かりづらいだろうけど、普通1つの教区には2つの修道院があるんだ。

 男性の修道院と女性の修道院、基本的に交流はない。

 もちろん教会への奉仕があるから、そこで顔見知りになるけどマリドネル修道院は……」

 そんなにひどいところなのだろうか?

 嫌な感じがする。

「どんな場所なんですか、いったい。」

 ちょっと眉をひそめてしまう。

「いや、基本的には普通の修道院なんだ。

 戒律に厳しくて、清貧を旨としていて子供たちにも同じような態度をとっている。

 もちろん、厳しいばかりじゃ人はついてこないよ。

 若いシスターと院長派閥で対立しているってのがもっぱらの噂だけど。

 正直、院長派閥は厳しすぎてついていけないね。

 そのくせ、子供たちの世話は若いシスター任せなところもあるし。」

 規律は求めるけど、責任は取らないという事なのかな。

 まあ、ベーゼックの視点だから偏った見方をしているかもしれないけども。

「多分、会いに行くつもりだろうけど、気を付けたほうがいい。

 商人は特に目の敵にしているし、喜捨を持ってくるのは当たり前って態度を取られると思う。

 声をかけるなら、若い子にしておくといいよ。」

 なんか、典型的な悪役教会みたいで信じられなかった。

 そんなところがあるんだろうか?

 世の中は広いから、そういうところもあるかもしれない。

 一応は警告を受けたんだから、素直に従っておこう。

「分かりました。せいぜい気を付けます。」

 なんかできれば関わり合いになりたくないなぁと感じてしまう。

 ジョンと出会わなければ、多分そんな話は知る事すらなかったんだろうな。

 

 さて、ベーゼックに教えられたマリドネル修道院に来たわけだが。

 なんか見た目からして監獄という言葉がしっくりくる作りだ。

 聞いた印象のせいで堅牢なつくりの建物が刑務所か何かに見えるだけかもしれない。

 子供たちが建物の周りにいるけど、さすがに監視とかされてるわけではない。

 接触しようと思えばできそうだなぁ。

 どうしようか。

 そう思っていたら、子供のうちジョンに付き従っていた子が俺を見つけてしまう。

 いや、ちょっと今接触するとシスターとか呼ばれそう。

 それはちょっと困るな。

 身構えるが、その子は首を横に振る。

 ここにジョンはいないという意思表示なのか、近寄らない方がいいよという警告なのか。

 どっちだろう。

 変な呪文で探知されるわけでもないだろうとは思うけど、不安になって”鑑定”してしまった。

 特に門や壁に呪文がかかっている様子もない。

 人に近づかれている様子もないし、どうしたもんかな。

 しばらくたたずんでいると、ジョンが道を歩いてくる。

 なんか背負って、大変そうだな。

 俺を見るとちょっと驚いた顔をされる。

 手を上げた。

 ジョンは手を横に振り、その後来た道を指さした。

 人がいる様子はない。

 そっちに行けという事だろうか?

 ともかく指示に従おう。

 みすぼらしい家が立ち並び、ちょっとした広場がある。

 そこにも数人子供がいる。

 胡散臭げに俺を見ていた。

 どうしたもんかな。

「おい、ヒロシ。なんでここに来たんだよ。、

 院長に喰われちまうぞ。」

 気が付けばジョンに後ろを取られてしまっていた。

 声を掛けられる寸前まで全く気が付けないとか、やっぱり才能あるな。

「一応警告はされてたけどな。

 いつ来るか分からないし、思い切って来てみた。」

 怖いもの知らずかと辟易した顔をされた。

「まあ、次からはこっちに直接来いよ。

 たまに見回りのシスターが来るかもだけど、その人は味方だから。」

 味方、かぁ。

 やっぱり噂は真実なんだろうか?_

 少なくともジョンは快くは思ってないんだろうな。

「で、なんだよ。

 一応こっちも紹介してみたい奴がいるけど、そっちも誰か見つけたのか?」

 役割が被ってないといいけど。

 流石にそうポンポンと治療役が見つかるとも思えないから平気かな。

「ベーゼックって言う修道士が興味を示してくれたよ。

 女好きで酒好きだけど、悪い奴じゃないと思う。

 《治癒》もしっかり使えるし歴史も好きで割と知識も豊富だと思うけど、会ってみるか?」

 酒好きの女好きって時点で微妙だけど、ジョンはどう思うのかな。

「そりゃいいや。

 修道士なのに、女好きって面白い坊さんじゃん。

 とりあえず、俺の方はノインって言うんだけど剣の腕前はそこそこな奴で性格は大人しめだな。

 別に弱いってわけでもないから傭兵には向かなくてもスカベンジャーとしては十分だと思う。

 俺と違って孤児じゃないけど、家が貧乏らしいから誘ってみたんだ。

 今度倉庫で会わせるよ。」

 前衛と治癒役が揃えば、活動はできるよな。

 出来れば魔術師が一人欲しいところではあるけれど。

 流石に駆け出しの魔術師の知り合いは、ジョシュくらいしか知らない。

 少なくとも、あの子は除外だ。

「とりあえず、明後日の午後でいいか?

 午前中は予定があるから。

 それと、修道院が監獄って噂、本当なのか?」

 ジョンは見ればわかるだろうという態度をとっている。

「別にシスター全員が敵ってわけじゃないけど、院長は完全に敵だな。

 子供のことを不完全な人間だとでも思ってるんじゃないか?

 まあ、何があったかは知らないけど、俺は嫌いだ。

 貴族の子が来るとあからさまにちやほやして、俺たちを使用人みたいに扱わせる。」

 貴族の子って言うのは何だろう。

「子供は孤児だけじゃないのか?」

 ジョンは手を横に振った。

「いろいろ問題起こして、領地にいられなくなった子がシスターとして来たりするんだよ。

 年としては俺より上だけど、あいつらの方がよっぽど子供だし、いい迷惑だよ。

 文字が読めないからって、変な張り紙してくるし。」

 私のもの!手を出すな!!と帝国語で書かれている。

「自分のものだって主張してるみたいだけど?」

 ジョンはうんざりとした表情を浮かべる。

「そういう意味かよ。

 俺は奴隷じゃねえっての。」

 そういうつもりでは無いのかもしれないけど。

 どっちにしろいい迷惑だな。

「でも、文字は覚えておいた方がいいと思うぞ。

 遺跡の中で音を立てずに意思疎通するのにも使えるし。」

 そういうとジョンは少し悩むそぶりを見せる。

「ノインが文字書けるらしいから、習っておくよ。

 そっちのベーゼックって言う坊さんも知識が豊富って言うなら、教えてくれるよな?」

 なかなか向学意欲があってよろしい。

 まあ、識字率の低い世界だから文字書けないのが普通ではあるらしいけど。

 成功するためには、習っておいて損はないよな。

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