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7-17 後回しにしてたことを済ませよう。

魔獣を解体して素材にするというのは定番ですね。

「大変そうだね。

 いろいろごたごたがあったのに、忙しそうだ。」

 慌てて訪ねてしまって、先生にみやげもなしに面会してしまっている。

 ごたごたがあったというのを知っているという事は、ベネットが騎士の息子に襲われた話は騒ぎになってたんだろうなぁ。

「だしに使ってしまってすいません。

 あの、先生、グラスコーに手紙を見ろと送ってもらえますか?」

 呪文の連絡は一方的にメッセージを送りつけるものだ。

 一方通行なので、不便だが、少なくとも届いた事は分かるので、着信代わりに使わせてもらう。

 手紙には至急の文字と警備契約の承認と臨時にアルバイトを雇う許可を求める内容でまとめていた。

 グラスコーの専用インベントリに手紙を置く。

「構わないよ。

 まあ、グラスコー君から返事が来るまでお話ししないかい?

 ラウレーネ用のクッションの話もあるし。」

 そういえば、そういう話もあったなぁ。

 ほったらかしにしてる案件が多すぎる。

 とりあえず、私事については掻い摘んで話してみた。

「へぇ、おめでとう。

 よかったじゃないか。

 ラブコールを送り続けてた甲斐があったね。」

 嫌味ではないのだろうけど、美形の先生に笑顔で言われてると劣等感が凄まじい。

「ありがとうございます。

 それでラウレーネのクッションについてなんですが、中身はスノービーズを大量に詰めればいいとは考えています。

 問題は包む素材を何にするかだと思うんですが。」

 先生は俺のクッションをいくつか持っている。

 中身も把握されている。

 だから、あとはそれを包むものだ。

「そうだねぇ。

 ウーズの皮に詰め込んで、動物の毛皮で包もうか?

 猪とかでも大きいのを強化すればそんなに簡単には破れないと思うし。」

 そういえば、巨大猪の皮はいくらか在庫があると言えばある。

 しかし、なんであいつらは俺の股間を狙ってきたんだろうか?

 姿を見るたびに身をすくませてしまう。

 まあ普通の森ではめったに見かけないので、蛮地近くの森限定なんだろうけども。

「すぐに用意できると思います。

 縫製をお願いしたら、強化をお願いできますでしょうか?」

 それが終われば、完成はすぐだろう。

「分かった。、

 ラウレーネの催促が激しくてね。

 しかし、君たちのことを話せば、しばらくは大人しくしてくれるかなぁ。」

 楽しそうに先生が笑うと不意に電子音がする。

 どうやらグラスコーが手紙をようやく送ってきたようだ。

 中身を確認すると、暁の盾を指名し話を進めるように指示があった。

 やっぱりそこは信頼があるところだよな。

 アルバイトの件も予算を書いてよこしてる。

 警備体制は、これで問題ないな。

 実は、イレーネは春の段階で警備が必要だと感じていたようだ。

 表立って行動はしたくないという事で、自分では動きたくなかったがグラスコーやライナさん、それにベンさんには相談していたそうだ。

 だけどみんないまいちピンと来てなかったそうだ。

 仕方がないので、変装をしていくつかの傭兵団にコンタクトを取り、何とか見積もりを作成して1月ほど前には俺に手紙を託したという事だった。

 日付を見れば、おぼろげながら手紙を渡されたような記憶が浮かぶ。

 その時、何をしていたのかはさっぱり思い出せないが。

 ただ、手紙を送ったらすぐ返答が来たという事は、グラスコーには手紙はちゃんと届いていたんだと思う。

 お、俺だけが悪いわけじゃない。

 グラスコーだって、忘れてたんだし。

 つくづく仕事向いてないなぁ。

 そんな話を先生にすると、わかるわかると頷いてくれた。

 いや、先生がそんなそそっかしいミスをするだろうか?

「いや、私だって培養をしていたウーズがからっからに渇いていた時は焦ったよ。

 あれ?いつから水を与えてなかったんだって、記憶をたどってもうまく思い出せないんだ。

 でもきっちり記録はあるんだ。

 びっくりだよね。」

 記録を取るのは大切だなぁ。

 先生ですら忘れることがあるのか。

 あ、また俺は忘れそうになっていた。

「先生、そういえば見てもらいたいものがあったんですよ。」

 この場にいきなり出すわけにもいかない。

 どうしようか。

「ん?

 大きいものかい?

 それなら、ちょっと待ってね。」

 先生はぱちんと指を鳴らす。

 部屋が音を立てて組み替えられてみるみる広がっていった。

 どうなってるんだ?

 この部屋、そんな機能あったんだな。

 でも、さすがにこんなに広くなくていい気もする。

「酸とかあるかな?

 それならガラス板を出すけど。」

 ガラス板って……

 いや、まあ、そんな機能もあるんだろうなぁ。

「いえ、締め付けてはきたけど酸は持ってないはずです。」

 そういいながら、俺はダークマントを取り出す。

「それとこっちも、たぶん大丈夫です。」

 次に所晦ましの獣。

「それと、最後なんですが、くちばしに石化能力があるみたいなんですが。」

 そういうと先生は心当たりがあったようだ。

「あぁ、コカトリスかな?

 あれは無生物には効果が無いから、そのまま置いてもらって平気だよ。」

 確かに言われてみればそうだ。

「ふむ、なかなかバラエティに富んでるね。

 これは、マジックアイテムの素材や錬金術で使う素材にできそうだよ。」

 まあ、そうだよな。

 先生が見れば、そういう感想になるか。

「えっと。これ、食べたりできますか?」

 俺の発言に少々驚かれてしまった様子だ。

「あー、どうなんだろう。

 コカトリスは鶏みたいに見えるし、ダークマントはタコみたいに見えるけど。

 いや、さすがに食べようと思ったことはないかなぁ。」

 そうですよねぇ。

 なんか思いっきり変なことを聞いてしまったようだ。

「ふむ。

 ちなみにこれ、どうするんだい?

 よければ買い取るけど。」

 そうか、素材だから売れはするのか。

「いえ、先生に贈呈します。」

 値段が付くなら、普段お世話になっているし、譲るのはやぶさかじゃない。

「あ、いや、これ結構いい値段するよ?

 全部貰うのはちょっと。」

 先生は少し悩む。

「じゃあ、そうだな。

 一つ、これで作ったマジックアイテムをこちらから贈呈しよう。

 他にも欲しいものがあれば、買い取ってもらうというのはどうかな?」

 それはとても魅力的な提案だ。

「よろしくお願いします。」

 こちらとしては拒否する理由なんかない。

 二つ返事で提案を受け入れた。

 ついでに忘れないうちに猪の毛皮を渡しておく。

「あぁ、これも忘れないうちに取り掛からないとねぇ。」

 マジックアイテムの素材に目が奪われていて、クッションの件は忘れてしまっていたようだ。

 ちょっとクッションの件は予定表に入れておこう。

 俺もきっと忘れる。

 

 とりあえず、許可が出た警備契約の件だ。

 まずは早急に人が必要なアルバイトの件から片付けよう。

 以前、俺に売り込みに来たカレル戦士団が定宿にしているという宿に足を運んだ。

「ヒロシさん。

 お久しぶりです。」

 宿の人に戦士団の人を呼んで欲しいと頼んだら、団長のカレルが慌ててやってきた。

「お久しぶりです。

 お仕事の方は順調ですか?」

 暇な人員が居なさそうなら、別のところに仕事を回さないといけない。

「いえ、なかなかうまくいきません。

 仕事が全く無いわけじゃないですが、暇にしている団員も結構いますよ。」

 そうか。

 なら、渡りに船かな。

「アルバイトになりますけど、警備の仕事をお願いできませんかね?

 正式な警備契約が入るまで、1日1200ダールなんですが。」

 人数については任せよう。

「時間は24時間ですか?」

 そうか。

 24時間だとちょっと安いかもな。

「難しそうですか?」

 仮に2名体制だとして、交代要員を含めて24時間なら6人は拘束しないといけなくなる。

 一人金貨2枚くらいの割り当てになってしまう。

 傭兵団の取り分も考えると、受け取れる金額はもっと少ないよな。

 食事くらいは提供すべきかな。

「いえ、大丈夫です。

 グラスコーさんの所は治安もいいですし、2名体制で何とかなると思いますから。

 今、人員を選出しますんで、待っていていただけますか?」

 なんか、事務仕事は全部団長の仕事みたいだなぁ。

 大変そうだ。

 呼ばれてきた団員は、暇を持て余しているとはいえそれなりの腕の人間を選んでくれたようだ。

「じゃあ、これをもってライナさんという人を訪ねてください。

 あちらにも知らせてありますから、よろしくお願いします。」

 はいっとはきはきした受け答えをしてくれる。

 やっぱりラインズが特別枠だったんだろうなぁ。

 これで、問題を起こすようにはとても見えない。

「助かりました。

 訓練じゃ食っていけませんから。」

 臨時の仕事とはいえ、助かったのかな。

 そうだ、少し聞いてみるか。

「ちなみに、傭兵団を抜けてスカベンジャーになったりするのが居たりとかするんですか?」

 カレルは言葉に詰まった。

「いますね……

 あくまでも所属はうちで、休日に腕試しみたいな形をとって遺跡に行くのもいますよ。

 いつの間にか、そっちが主軸になってしまってやめられるとか。

 正直、困ってます。」

 あー、これは誰かを引き抜くわけにはいかないなぁ。

「実は、スカベンジャーの仲間を探している子がいるんですよ。

 もし、団員以外で前衛を張れそうな知り合いが居たら教えてください。

 もちろん、無理のない範囲でお願いします。」

 そういって、当面の契約料を支払った。

 

 なんだか、居留地に行くのがちょっと躊躇われる。

 人気の傭兵を一人引退確定させたわけだし、もう一人引き抜こうとしているわけだから、いい気はしないだろう。

 気後れはする。

「おい、お嬢の彼氏来たぞ?」

「いや、お嬢今里帰り中だろ?

 なんだいヒロシ、お嬢はいないんだけどな。」

 わざと聞こえるようにひそひそ話をされたあと、用件を聞かれた。

 用件というか、完全にからかわれてるよな。

「いや、仕事の話です。

 ちなみに、里帰りって……」

 まさか一人で行かせたりしてないよな。

「安心しろよ。団長が引率してるから、よっぽどのことがない限り安全だ。

 団長でダメなら、誰がついて行っても駄目だと思うぞ?」

 それは確かに。

 でも、すごい面倒見がいいなぁ。

 思わず関係を勘ぐってしまう。

「まあ、いいや。

 うちの職員も謝りたいとか言っていたから、エントランス行ってくれよ。

 相当大目玉喰らって、へこんでるから優しくしてやってくれよな?」

 あぁ、あの申し訳なさそうにしてた若い子か。

 ちょっとわだかまりがあるけど、丸く収まったんだからいつまでもへそを曲げるのもよくないか。

「分かりました。

 なるべく穏便に済ませますよ。」

 なんか、そう言うとおっかねえと言われたけど、意味がよく分からなかった。

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