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7-8 一山当てれば宴会って言うのもいいのか悪いのか。

 その後も入れ替わり立ち代わり、いろんなスカベンジャーと話をすることができた。

 バーナビーほどではないけれど、それなりに場数を踏んだ人も結構いて、具体的なアドバイスももらえた。

 今回バーナビーが戦果を挙げたのが、ゲートの破壊に成功したからだというのも別の人からもらった情報だ。

 どうやらスカベンジャーにとっては、遺跡などにモンスターを呼び寄せるゲートがあるのは常識なのだそうだ。

 ゲートがあることでモンスターが流れ込み、それを倒すことで報酬を得る。

 そういう構造なわけだから、ゲートを壊されると困るんじゃないかと思わなくもないが、実はそうではないらしい。

 というのも、ゲートを破壊すると通常では得られない量の秘石とともに、結構な確率で高水準のマジックアイテムが手に入る。

 その量も、大きなダンジョンであればあるだけ、増えていくわけだから誰しもがゲートを見つければ破壊を目指す。

 当然ながらゲートを守ろうとする守護者も配置されているので戦闘は避けえない。

 だから一流のスカベンジャーはゲートの場所を把握し最短ルートを確保したうえで、守護者への対抗策を練ったうえで攻撃を仕掛けるそうだ。

 ここまでべらべらしゃべって平気かなと思わなくもないけれど、その実ゲートを探すコツやどうやって最短ルートを探すのかといった核心部分には皆触れていなかった。

 そういう意味で、何のかんの言って皆強かだ。

 酔っぱらって前後不覚になってるのは仲間が止めるし、話題が核心に迫れば話を逸らす。

 なんとも食えない連中だ。

 まあ、飯の種なのだから当然だろう。

 そんなことよりどれくらい稼げるものなのかの方が俺には興味があった。

 大体の資産状況が分かれば、どれだけのものなら売れるか把握することも可能だからだ。

 もちろん、ジョンが今後やっていくならどのくらい稼げるのかも気になるところではある。

 大体1週間に1回、三日ほどの予定で遺跡に潜るのが大抵のグループがルーチンとしている様子だ。

 なるべく他のグループとかち合わないようにするのがマナーみたいな感じらしいけど、これだけ人数がいると、とてもじゃないが調整できるものじゃない。

 という分けで他のグループとも競争になるわけだが、基本的に他のグループとかち合った場合は例え戦闘中であっても立ち去るのが暗黙のルールとなっている。

 だから早い者勝ちなわけだが、それでもうまくいかなくても金貨10枚分くらいは何とか稼げるものだという。

 職人が週で銀貨10枚だという事を考えれば、最低でも金貨10枚というのは破格に見える。

 但し、そこから必要経費が差し引かれるので怪我をしてしまい、《治癒》のポーションを2つ使ってしまえば稼ぎが消し飛ぶ。

 正直微妙だ。

 運よく無傷で済ませても、食料は持ち込まないといけないし、他の寝泊まりする道具も必要だ。

 それらを負担してもらえるスポンサーが居ればいいけど、いなければとても続けていくのは難しい。

 だから、そこら辺の面倒を見てもらえる斡旋業が増えつつあるというのも致し方ないのかもしれない。

 ちなみに、そういうベテランについて行って荷物持ちをするというのは、とても稼ぎがいいとは言えない。

 食事は保証してもらえるが、最初に契約した金額以上の報酬はもらえない。

 相場としては銀貨20枚もらえればいい方らしく、上手く稼げたとしてもボーナスを出す気前のいいグループは少ないそうだ。

 やはりスポンサーありきだなぁ。

 とはいえ、おいそれとスポンサーを見つけるのも難しい。

 グラスコーなんかは、バーナビーのグループをスポンサードしていたらしいが、それで大分赤字を出してたらしいしなぁ。

 やはり成功するには運の要素はでかそうだ。

 もし、ジョンにスカベンジャーをやらせるとしたら、せめて俺がスポンサーになる覚悟は必要だろう。

 期限も設けるべきだ。

 3年。

 それを過ぎても結果が出ないなら仕事を変えさせるべきだ。

 しかし、3日か。

 大して俺は探索して回らなかったけど、3日もあれば最下層まで行けそうなものだけどなぁ。

 くまなく探し回るのとは、やはり違うものなんだろうか?

 とりあえず、底まで行ったグループはいなさそうだ。

 階層が深くなれば敵も強くなるという認識もあって、底を目指そうという動機が薄いというのもあるのかもしれない。

 逆に言うと俺はそこからスタートせざるを得なかったのが特殊だったんだろうな。

 未だに、あそこの出入り口が何であったのかが謎だ。

 

 結局居酒屋で夜を過ごしてしまった。

 というか昼頃まで酔いつぶれて寝てしまっていた。

 テーブルに突っ伏して寝ていたので肩が痛い。

 しかも、セレンとベネットに圧し掛かられてたから、腰も痛い。

 これからもう一度店を出す気にはならない。

「ヒロシ、大丈夫?」

 ぎしぎしと体がきしむので動きがぎこちないようだ。

 ベネットが心配そうに腰をさすってくれる。

「だ、大丈夫。帰って、お風呂行きましょうか?」

 流石に3人とも酒臭い。

「すいません、私もヒロシさんに寄りかかっちゃってて……」

 セレンも申し訳なさそうに、肩を貸してくれる。

 こうして心配そうに支えられていると気を許してしまいそうだ。

 何とか馬車までたどり着き、御者台に上る。

「兄ちゃん、昨日はお愉しみだったみたいだな。」

 初めて来たときのようにおっさんが立っていた。

「違います。勘違いしないでください。」

 念のため、否定しておく。

 酔いつぶれたとはいえ、意識はちゃんとしていた。

 変なことはしていない。

「そうか。

 まあ、別にいいんだ。

 また来るときは、よろしくな。」

 手を差し伸べられる。

「いつになるかはわかりませんけどね。

 これでも結構忙しいんですよ。」

 とりあえず、その手を握る。

「なら、他の業者にジュースを流してくれよ。

 子供たちが、割とあれが気に入ったみたいでな。」

 冷蔵庫とセットじゃないと、あまり飲みやすくはないと思うけどなぁ。

「考えておきます。

 まあ、水も少ないみたいだし、そこら辺も気にしておきますよ。

 それじゃ。」

 俺は手を離し、別れを告げた。

 

 いつもなら居留地でお風呂を借りるけど、今回はまだベネットとの契約期間が経過していない。

 まあ、戻っても問題はないけれど、セレンとベネットがおすすめしてくれるお風呂屋さんに行くことになった。

 当然混浴なんかじゃないので、一人寂しくお風呂に入ることになるわけだけども。

 狼はエントランスでお留守番だ。

 ゆっくりお湯に入る。

 この浮遊感がたまらない。

 ぎしぎしいってた腰が楽になる。

 アルコールが抜けていく気がするのは気のせいだとは思うけど。

 やっぱり深酒の後はお風呂がいいよねぇ。

 お風呂から出たらマッサージも受けよう。

 しかし遺跡周りは本当に水がなかった。

 それだけに人が寄り付かなかったんだろうけど、本当に不便だ。

 年月が経てば、そのうちそういう不便も解消されていくものなんだろうか?

 ついぞ、スカベンジャーたちからはそういう話は聞かなかった。

 ゴミもどうしてるんだろうか?

 焼却処分するにしても、そういう場所というのがある様子もなかった。

 砦の人たちはどうしてるんだろうな?

 気になることは結構ある。

 近いうちに、また行くべきかなぁ。

 忙しいといった手前すぐに顔を出すのはちょっと躊躇われるけども。

 実際に忙しいことは事実で、明日はアルノー村に麦の刈り取りを手伝いに行く予定だ。

 カールを連れて行くので今日中に迎えに行かないとだし。

 ついでに、農村で孤児の働き口があるのかも知りたい。

 スカベンジャーをあきらめろというのであれば、他の仕事についても知っておかないと話にもならない。

 そう考えると、職人さんたちにも話を聞かなくちゃだよなぁ。

 安請け合いするんじゃなかった。

 

 お風呂を上がり、マッサージを受け終わるとラウンジでベネットとセレンが待っていてくれた。

 ゆったりとした空間に質のいいソファーに、それにあったテーブルが置かれている。

 ここでワインやビールを飲むのが定番らしい。

 二人とも流石にアルコールを飲むのが躊躇われたのか、紅茶を注文していた。

 ソファに腰かけるとメニューが渡された。

 結構高級感があるな。

 銀貨1枚で入浴ができてマッサージも銅貨5枚だから十分安い……

 事もないな。

 そうだ、平均的な収入を考えれば十分高級だ。

 どうしても日本円に換算して考えがちだけど、平均的な収入が4万円くらいで高給取りでも8万円だ。

 大体4倍くらいで考えなくちゃいけない。

 6000円なら十分高い。

 色々とボーナスやらマージンによる収入で感覚がマヒしてたな。

 ベネットとセレンが頼んでいる紅茶も銅貨5枚だけど、二人でシェアしている。

 セレンの週給は銀貨15枚だ。

 セレンにとっては結構な出費だな。

 まあ、治療費に結構な秘石を貰っていて、それを俺が換金したから自分へのご褒美としてはありなのかもしれないけど。

 そう考えて改めてメニューを眺める。

 まあ、割高か。

「彼女たちと同じものを……

 それとケーキを二人にお願いします。」

 二人とも驚いた顔をする。

 ウェイターがチップとメニューを受け取り立ち去る。

「ヒロシ、ちょっとそれは……」

 ベネット懐の心配をされてるんだろうか?

 セレンも不安そうに指を折って、手持ちで足りるか計算しているみたいだ。

 もちろん、負担させるつもりはない。

「奢りですよ。

 二人には無理をさせてしまいましたしね。

 ここは、全部俺が払います。」

 途端に微妙な顔をされる。

「誰にでもそういうことをしちゃだめだからね。

 特別な時だけにしないと。」

 ベネットに釘を刺された。

「分かってますよ。今日は特別。

 また、あそこに行くときはよろしくお願いしますね。」

 どうやらそれで納得してもらえたようだ。

 まあ、あれだけの忙しさを考えれば妥当な報酬だよな。

 ケーキが届けられると二人は嬉しそうに手を付けてくれた。

「そういえば、ヒロシさんってロマンス小説読むんですか?」

 そういえば居酒屋でそんな話もしたな。

「一応、後学のためにいろいろ読んでるんですよ。」

 本屋街を見つけてから、暇があれば本を買って読んでいる。

 その中には、もちろんロマンス小説も含まれていた。

 まあ、女性向けなのであまり男が読むものじゃないらしいけど。

 なかなか面白い。

 二人の反応を見るに、やっぱりおかしいのかもしれないけども。

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