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7-3 なんだかお祭りの出店をやってる気分。

年明け早々に更新です。

本年もよろしくお願いします。

 日を改めて、商品を満載にした馬車で俺が遭難したダンジョンへと足を運んだ。

 ちなみに、グラスコーにこの話をしたら、二つ返事で許可がもらえた。

 ジョンの話なんかは、是非スカベンジャーにしろみたいな勢いだったから、話半分で聞いておくことにする。

 遺跡はモーダルからは馬車で半日といったところだから、アルノー村と距離はさほど変わらない。

 方角が違うので、アルノー村に行くには1日くらい街道を馬車で走らせないと着けないといった位置なのですっかり縁がなくなっていた場所だ。

 しかし、とはいえ二ヶ月で様変わりしていてちょっと驚く。

 アライアス伯が配下の騎士に整備を進めさせたという事だったが、まさか森が切り開かれて見張り台付きの砦が立つとは思ってもみなかった。

 俺が見つけた宝箱の中身は殆どを褒賞としてくれた上に、ここまで整備するとはどれだけダンジョンは儲かるのだろうか?

 ちょっとビビる。

 砦の外側には様々な人がたむろして、テントや簡易的な小屋などが立ち並んでいる。

 なんというか、ゴールドラッシュの時の鉱山がこんな感じだったんじゃないかと思わせるような雰囲気があった。

「すごいですね。モーダルより人がいるかも。」

 同行していた、セレンが驚いていた。

 どうしてもついてきたいというので仕方なく同行を許したわけだけど、あまりの人だかりに気おされている感じが否めない。

「遺跡の周りはいつもこんなものだったりするわ。

 潜る人間以上に、そこで必要になるものを売る人の方が多いから。」

 一応、護衛という名目でベネットにも同行してもらっている。

 とはいえ、別にダンジョンアタックをするわけでもないから戦闘力は必要ない。

 主にセレン除けの意味合いが強い。

 しかし、これだと商売するのはきつそうだなぁ。

 今回はスカベンジャーへの調査が主な目的だから、小売りをするつもりだったけど場所は開いてるんだろうか?

「入る隙間なさそうですね。

 誰かが場所を割り当ててたりするんですかね?」

 俺はベネットの方を見て尋ねてみた。

 彼女は傭兵として遺跡漁りに参加したことが何度かあるそうだから、この中では一番経験が豊富だ。

 とはいえ、専門というわけでも知らないことも多いだろう。

 彼女も戸惑い気味だ。

「兄さんがたは商売しに来たのかい?

 それなら、門の方に行くといいよ。

 ほらあっちだ。」

 気のよさそうなおじさんが声をかけてくれた。

 どうやら、場所の割り当てはあるようだな。

「ありがとうございます。

 おじさんも商売ですか?」

 そういうとおじさんは首を横に振った。

「俺は潜る方さ。

 いや、正確に言えば潜る奴らのサポート役かな。

 昔は、俺も前線で戦ってたんだが、寄る年波には勝てなくてな。

 だから、若い奴にコツやアドバイスをして稼がせてもらってる。」

 人のよさそうな笑顔を見せるが、俺はこの人に警戒心を抱いてしまった。

 いわゆる同人ゴロと同じ匂いを感じたからだ。

 海のものとも山のものともつかない商売にはよくいる上前を撥ねて寄生するような人がどこの業界にもいる。

 もちろん中には本気でプロデュースして、いくつもの事業を成功させる人もいるにはいるが、そういう人と根っからの悪人の見分けなんかつかない。

「そうなんですか、大変そうですね。

 もし何かあったらよろしくお願いします。」

 俺は礼を言い、早々に馬車を走らせた。

「胡散臭い。」

 セレンがぼそりとつぶやく。

 いや、頼むからもうちょっと離れてから言ってくれ。

 聞かれてたら怖い。

 

 門で手続きを済ませ、割り当てられた場所を借りて馬車から商品を下ろして並べ始める。

 みな一様に胡散臭げな表情を浮かべていた。

 同業者からは商売敵だから、当然快くは思われないだろう。

 客になる方も、相手が騙してくるんじゃないだろうかと、警戒心が強いのも分かる。

 なんともギスギスした雰囲気だなぁ。

「嫌な感じ。

 やっぱりまともな人がやる仕事じゃないですよ。」

 ぶつぶつと文句を垂れながらセレンは店の前に腰かけている。

 目線は汚い恰好をしているスカベンジャーに注がれていた。

 まあ、そんなに嫌そうな顔をしてたら客は寄り付かないよな。

「セレンさんは、スカベンジャーに何かされたんですか?」

 その可能性もあるからな。

 嫌な思いをしたなら、そういう態度も仕方がない。

「そういう分けじゃないですけど。

 その……」

 まあ、そうだよな。

 そもそも、そんなに接点を持っていないだろう。

 だから余計に偏見があってもおかしくはないし、それが態度に出てしまうのも当然だ。

 とはいえ、それはそれ、これはこれ。

「まあ、愛想良くしろとは言いませんよ。

 でも、お仕事はちゃんとこなしてくださいね。」

 俺は、セレンにエプロンを渡す。

 渋々といった様子で、セレンはそのエプロンに袖を通し、店の前に立った。

「ヒロシ、私も手伝った方がいい?」

 ベネットが俺の服の裾を引っ張ってくる。

 護衛なのだから、こちらの面倒を見てもらう必要はないのだけれどエプロン着たいのかな?

 それともセレンに構ってるのが嫌だったのかな。

 あ、そうだ。

 その前にやらなければならないことがあった。

「ベネットさん、そのずっと渡しそびれてたんですが、これを……」

 俺は、ドライダルの足跡をしるした地図を手渡す。

 彼女は、それを受け取るとたたまれた地図を広げた。

「これ、例の?」

 俺は頷く。

「場所だけだと、何とも言えないね。」

 近くにいるのか、それともはるか遠くなのかも判別がつかない。

 ベネットはすこし落胆しているようだ。

「せめて時系列が分かればよかったんですが。」

 所在地が分かっても、残念ながらいつまでそこが所在地だったのかは分からない。

「ねえ、ヒロシ。思うのだけど、”鑑定”で年齢は見れないの?」

 ベネットは何かを思いついたのか俺を見てくる。

 感の鈍い俺は最初何のことかよくわからなかった。

 確かに”鑑定”で年齢は見れる。

 そして、所有者のステータスを物品越しに”鑑定”できる。

 そこで何かがようやく引っかかった。

「つまり、所有していた時期の年齢で時系列を作ることができる。」

 ベネットは小さく頷いた。

「ごめん。思いつかなかった。」

 ほとほと俺は頭が悪い。

 ちゃんと能力を使いこなせてないな。

「ううん、私も今思いついただけだから。

 でも、ありがとう。これだってとても大事な情報だから。

 もし、他にも気づいたことがあったら教えてね。」

 優しく微笑んでくれるが、これ復讐のための手伝いなんだよな。

 なんか複雑な気分だ。

「それより、お手伝いした方がいい?」

 ぽつぽつと客が商品を品定めし始めたところだし、特に忙しいわけでもない。

 とはいえ、なんだかベネットをのけ者にするみたいだから、お願いしようかなという気持ちに傾く。

「お願いします。」

 決して、彼女のエプロン姿を見たかったわけではない。

 俺は、エプロンを取り出してベネットに渡した。

「可愛いから着てみたかったの。無理言ってごめんね。」

 嬉しそうに袖を通してくれて、なんだか頬が緩んでしまう。

 エプロン自体はそう華美なものじゃない。

 あくまでも、作業をする際に汚れないようにするためだ。

 とはいえ、女性に着させる以上、あまりやぼったいのはよくないと考えてはいたけど。

 思ったよりもかわいい印象がつくな。

 セレンもベネットも美人だ。

 モデルがいいと、大したことないデザインでも可愛く見えるものなのかなぁ。

 なんか、その。

 欲望が駄々洩れになってる気がする。

 そして、そんなときに限って余計なことを思い出す。

 ベネットへの”鑑定”だ。

 正直やましい気持ちの時にやるべきことじゃない気はするけど、放っておくとまた忘れる。

 どうせ俺は駄目な人間だ。

 俺はベネットの背中を見て、”鑑定”を行った。

 見える時は本当にあっさりしたものだ。

 数字の羅列が主体だし、年齢やら身長のプロフィールみたいなものも分かる。

 特別なものは、竜の祝福というものだった。

 どうやら耐久力と魅力にボーナスがつくらしく、両方とも2点ほど上昇していた。

 意外だなと思ったのは、魅力が上がっているところだ。

 元々美人だし、容貌と魅力に関係性がないのは分かっている。

 じゃあ、何が変わったのかと言われると、正直分からない。

 ゲーム的に言えば、神様からの祝福とかもこの数値に含まれるので、それが上がったんだとでも思えばいいのかなぁ。

 あと微妙に気になったのは、防御力が若干上昇している。

 もしかして、皮膚が固くなったんだろうか?

 触るわけにもいかなくて、ちょっと微妙な気分になってしまった。

「ねえ、ヒロシ。」

 俺はベネットの声にびくっと背筋を伸ばしてしまう。

「どうしたの?」

 不思議そうにのぞき込まれる。

「い、いや、何でもないですよ。」

 困ったように視線を彷徨わせた。

「似合ってるって聞こうと思っただけなのに。

 そんなにびくびくしないでよ。」

 いや、それは似合ってますとも。

「可愛いと思います。」

 そういうとベネットははにかむように笑った。

「ありがとう。

 でも、さっきの反応からすると、見たんだよね?

 あとで教えてくれる?」

 ベネットも自分の体の変化が気にはなっていたようだ。

 そこはあとでちゃんと伝えよう。

 セレンがムスッとした顔をしてるし、俺もちゃんと店に立とう。

 

 結局今日はろくに客がつかなかった。

 数人の男が冷やかしでセレンやベネットをからかうくらいで携帯用の固焼きビスケットがいくつか売れたくらいだ。

 ただ、調査という意味では割と収穫があった。

 スカベンジャーは予想通り、数人のグループで行動している。

 最低でも3人、多くても6人といった感じだ。

 先頭に立って戦う人間、いわゆる戦士。

 罠や索敵に長けた斥候。

 治療を担うまじない師や僧侶。

 これが基本といったところなのだろう。

 逆に、そのメンバーが抜けているグループは少ない。

 誰かしら治療を担うメンバーが居たし、斥候役がいないと大抵ひどい目にあう。

 逆に魔術師がいるグループは意外と少ない。

 比率としては3グループに一人といった割合だ。

 もちろん、モーダルにいる信仰系の術者や秘術系の術者の比率に比べればはるかに多い。

 レベルに関して言えば、3から5くらいの人物が大半だ。

 会話を聞いていると、腕が立ってくると大抵どこからか勧誘があるらしく、次のステップに踏み出すのが普通らしい。

 そんなもんなんだな。

 傭兵が腕を上げるために挑戦しているという話もちらほら聞こえるので、スカベンジャー専業という人は少なそうだ。

 もちろん例外はいる。

 ずっと遺跡漁り専門だと名乗っていた人物もいて、自慢げに戦利品の話をしている場面を何回か目にした。

 ただ、気になったのは、そういうのには必ず、最初にあった叔父さんみたいな人物の影がちらついていることだ。

 上手いことやってるのか、それとも何かの詐欺のとっかかりなのか、気になるところではある。

 年齢層は、みな若い。

 30代の人物はほとんど見なかった。

 28が限界で、それを越えて続けてもうまくいかないという話もちらほら聞こえてきた。

 なんか身につまされる気分だ。

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