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7-2 進路相談されてしまった。

進路相談されたらどんな仕事があるか調べないと駄目ですよね。

 ジョンの反応は上々で、冷たいジュースをあっという間に飲み干した。

「はぁ、おいしい。」

 それはどうもどうも。

「これ売り出すのか?冷えてたらみんな買うと思う。

 あ、そうか、それで冷蔵庫なのか。」

 やっぱりこの子は頭いいな。

「他にも夏場になると肉は腐るだろう?

 それを防いだりもできる。

 となれば、料理を扱う店も欲しいと思うんだよな。」

 なるほどとジョンは頷く。

「ちなみに、ジュースは銅貨1枚、こいつは銅貨2枚で売り出そうと思ってる。」

 そういって、冷蔵庫の上の方、つまり凍り付く方にしまっていたアイスキャンディーを取り出した。

 まあ、結構お高めの値段設定なのは、原材料の関係もある。

 砂糖は輸入品だから結構するし、果物もオレンジは輸入品だ。

 これ自体はバカ売れしなければ、ちょっと儲けは見込めないかな。

「氷?色付きだけど、それおいしいのか?」

 もちろん、それを確かめてほしい。

「じゃあ、食べてみてくれるか?」

 ちなみに、ミリーやテリーにはジュースは受け入れてもらえたが、アイスは頭が痛くなると拒否られた。

 俺も知覚過敏気味だから、歯に沁みるんだよなぁ。

「分かった。

 ヒロシは面白いもの考えるんだな。」

 そういって、ジョンはガリっとアイスを口にする。

「冷た、んー……でも、おいしい……

 そんなに固くないんだなぁ。」

 そうかそうか。

 結構、難しかったんだ。

 固くしないでまとめるの。

 評価してもらえてうれしい。

「ヒロシ、私にもちょうだいよぉ。」

 ぐでんっと後ろから圧し掛かられる。

 毛におおわれた柔らかいものを押し当てられて、結構蒸し暑い。

「レイシャさん、お目覚めですか?」

 冷蔵庫からアイスキャンディーを取り出して、渡す。

 鼻の下が伸びてるとしたら、今の方が伸びてる気がする。

 幸い、セレンは事務所に戻ってた後だから目撃されてないよな。

「目覚めたというか、暑すぎて寝てられなくなった。

 夏は嫌だねぇ。

 どこか涼しいところに行きたい。」

 まだ夏というには涼しい方だとは思うけれど、感じ方は人それぞれだ。

 特にレイシャは人狼だから、当然ながら全身が毛におおわれている。

 暑いと思うのは仕方がないかもしれない。

 犬や狼と違って汗腺はあるらしく、そのせいでぐっしょりと濡れてしまっていた。

 つけている香水のせいなのか、妙に艶めかしい匂いがする。

 ジョンはそんなレイシャが気になるのかちらちらと見ては目をそらしていた。

 うん、気持ちはわかる。

「冷蔵庫の中にでも入りますか?」

 俺がそういうと、レイシャは悩むそぶりを見せた。

 冗談だったんだけどなぁ。

「いっそ、ウーズをクッションの中に入れるとかどう?

 売れると思う。」

 レイシャは割と真面目に考えていたらしく、新たな商品提案をしてきた。

 まあ、悪くはないかなぁ。

 その前に扇風機か何かを作りたい。

 問題は動力源だよなぁ。

「考えておきます。」

 そういうと、頼むねぇと言って事務所の方へ行ってしまった。

「なんだよ、あの姉ちゃん。滅茶苦茶いい匂したんだけど。」

 確かに。

 あれだけ汗だくなら、汗臭いと思うのが普通だ。

 やっぱり使ってる香水の効果なのかな。

 妙にドキドキする。

「まあ、夜のお仕事してるからな。

 それよりジュース持ってく?」

 ジョンは、少し悩むそぶりを見せる。

「いや、いいや。

 どうせ持って帰ってもぬるくなっちゃうだろうし。

 今度、ウーズを持ってきた時に売ってくれよ。」

 なるほど、確かに。

 保冷用にウーズをそこに入れたバッグでも作るか。

「ところでさ。

 ヒロシって、スカベンジャーってどう思う?」

 唐突に、職業相談か。

 ジョンが何を考えてスカベンジャーの名前を出したんだろうか?

「どう思うかって、ジョンがスカベンジャーになるのか?」

 少し心配になる。

 金が必要だから、ウーズ狩りを頻繁にしているのは知っているけど、遺跡潜りが安全だとは到底思えない。

「最近、遺跡が見つかったらしいから、俺も潜ってみようかなって。

 でも、結構金取られるから、うまくいかないかもしれないって悩んでたんだ。

 誰かの荷物持ちとかも考えたけど、捨て駒にされるかもしれないし。」

 結構真剣に考えてるみたいだ。

「武器とか防具とかはどうするんだ?

 最低限、それは揃えないと話にならないぞ?」

 正直、それを揃えるのにひと財産が必要だ。

 準備してるんだろうか?

「中古なら何とかなると思う。

 それくらいは貯めたし。」

 なるほど、思い付きで言ってるんじゃなく以前から考えていたのか。

「ちょっと待ってくれ、俺も真剣に考える。

 返答は次でいいか?」

 ジョンは頷いた。

「じゃあ、俺が返答するまでスカベンジャーは始めないってことでいいよな?」

 それにはちょっと不服そうだった。

 それでもジョンは頷いた。

「ちゃんと考えてくれよな。

 子供だからって、出来ないって決めつけないでくれよ。」

 その言葉に俺も頷く。

「分かってる。

 ジョンが真剣なのは、間違いなさそうだしな。」

 大きな決断だ。

 軽々しく扱っていい話じゃない。

 

「私は反対です!!子供を死地に追いやるなんて見損ないました!!」

 俺だけでは判断できないので、事務所のみんなに話を聞こうとしたら、セレンに思いっきり反対されてしまった。

 別に、スカベンジャーになりたいって言ってるんだけど、どう思うとしか聞いてなかったんだけども。

 事務所にはライナさんを筆頭に3人の事務員と休暇中のベネット、彼女が散歩に連れて行ってくれた狼の子がいる。

 びっくりしたのか、狼が鳴いてベネットの膝上で丸まっている。

 いいな、俺もそのポジションに収まりたいわ。

「セレンさん、ヒロシは何もスカベンジャーにしようと言ってるわけじゃないですよ。」

 ベネットが慌てたようにフォローしてくれた。

「考えなくたって、スカベンジャーになろうとするなんて止めるべきです!!」

 そこまでキレられるとは思わなかったな。

 いつもは、俺を全肯定してくるので意外だった。

 彼女の生い立ちに何か関係してるんだろうか?

 まあ、なんにせよ興味深い。

「私の子が、そんなこと言ったら止めるけれどねぇ。でも、その子は孤児なんでしょう?」

 ライナさんはため息交じりにそんなことを言う。

「孤児だから死んでもいいって言うんですか!!」

 そういう分けじゃないと思うんだけども。

「熱くなり過ぎよ。落ち着きなって。」

 思わず立ち上がってしまったセレンを抑えるようにレイシャが椅子に座らせる。

「暑いです!!圧し掛からないで!!」

 セレンはじたばたレイシャを振り払おうとする。

「ひゃっこい、セレンッて冷え性なの?気持ちいぃ。」

 気持ちよさそうにレイシャはセレンの顔にほおずりする。

 とりあえず、放置しよう。

「死んでもいいとは私も思っちゃいないけれど。正直、孤児の子の将来なんて限られてるのも事実なのよね。」

 ライナさんいわく、港湾労働者になるか船員になるくらいしか道はないらしい。

 どちらも厳しい職業だ。

 港で働く分にはまだ給料が安く肉体的に厳しいだけで済むが、船員は外国で放置されたり病気にかから海に投げ捨てられるのが日常茶飯事で起こる事なんだとか。

 それ、もうスカベンジャーの方がましじゃないかな。

「まあ、器量がよければ体を売るって方法もあるっちゃあるけどねぇ。」

 レイシャが取りうる方法をもう一つ提示してきた。

 いや、器量ったってジョンは男だ。

 体を売ろうにも買う奴はいないだろう。

「実際、セレンはどういう将来が望ましいと思ってるの?」

 じたばたしているセレンにイレーネが訪ねた。

 それはと、セレンは口ごもってしまう。

「腕に覚えがあるなら傭兵をやるって言うてもあるけれど、それは死地に追いやるのは同じ気はします。」

 ベネットは自分の職業についてはよくわかっているのか、それはスカベンジャーと変わらないと言い切る。

 確かに死の危険はどちらも高いよな。

「修道院で、下働きをしながら勉強だってできます。そうすれば、官吏になることだって……」

 セレンは思いついたように口を開く。

 そういう道もあるのかと思ったけど、イレーネが口を挟んだ。

「それにどれだけの才覚が必要か分かってますか?

 おそらくやる気も要求されるでしょう。

 少なくとも、私の周りで孤児出身の同僚はいませんでした。」

 セレンは悔しそうに唇をかみしめる。

「環境が不利なのはもちろんあるとは思いますが、それ以上に平民出身者へ開かれる門戸を選民が狭めているという批判は間違っていません。

 間違いなく官吏は貴族が優遇されているのは事実です。

 それを跳ねのけろというのは、少し無茶がある気がします。

 その障壁を跳ねのけたとしても平民出身者が昇進するのはさらに難しい。

 給与の格差は明らかです。

 それでも、あなたはその道を勧めますか?」

 イレーネは自身が男爵家出身であることを踏まえ、それでも客観的な事実を突きつけてきた。

「とはいえ、遺跡漁りが魅力的かどうかはわかりません。

 私の周辺にそれで身を立てているという人は見かけませんし、実際に必要な資質や技術というものがどんなものかも知りません。

 もし、その子に遺跡漁りを進めるのであれば、そのことは踏まえたほうがいいと思います。

 それともう一つ。」

 じっとイレーネが俺の方を見てきた。

「あとはあなたが、どこまでその子に肩入れするかです。」

 確かにその通りだ。

 俺が肩入れをすればしただけ、ジョンにとっては有利になる。

 それだけの価値が彼にあるかどうかだ。

 確かに頭は良いし、同じ孤児たちにも気を配れる優しい子だとも思う。

 じゃあ、それだけで彼が遺跡で遭難した時、金を払ってまで助けようと思うだろうか。

 正直、責任が持てない。

「ヒロシ、ともかく彼の才覚を見てあげるべきだと思う。」

 ベネットはじっと俺を見てきた。

 つまり、”鑑定”してジョンを評価しろという意味だろう。

 実は未だにドラゴンの血を浴びたベネットも”鑑定”していない。

 どうしても、数字だけで人を判断しているようで心苦しいからだ。

 でも、それが人の助けになるのであれば、やるべきなのかもしれない。

 何よりジョンが目指すスカベンジャーは俺のゲーム知識で表現される数値と合致する部分が大きい。

 ちゃんと見て評価すべきだな。

「分かりました。

 当然、それを評価するにあたって他のスカベンジャーって言うものを知らないといけないですね。」

 となれば、一度俺が見つけた遺跡に行ってみるべきだろう。

 もちろん、商売を兼ねてだ。

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