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6-22 情報交換は大切だ。

にわかには信じがたい情報って言うのが時々飛び交ったりしますよね。

大抵嘘だったりして惨事が起こったりもしますが、逆に真実であって助かる場合もあります。

もちろん、真実で惨劇が起こる事もあり得るわけですが。

結局、真偽がつかない状況は見守るしかないわけですけども。

「実は、遺跡を見つけた話はしましたよね?」

 聞いた、とレイナは返答する。

「それに関係する話?アライアス伯に話を通せとか。」

 いや、それは代官に知らせれば済む話だから、レイナに迷惑をかける必要はない。

「実は、本を拾って、どうしようか悩んでたんですよ。

 先生に渡すのはためらわれたので。」

 レイナは俺の言葉に顔をしかめる。

「まあ、いいや。とりあえずその本を見せてよ。

 その上で、ちゃんと読むかを判断させて。」

 俺はレイナの言葉に従い、本を取り出して彼女に渡した。

「ううん。古そうな本だね。でも、古代帝国よりかは後の時代かなぁ。」

 装丁だけで判断できるもんなんだなぁ。

外観だけでも、そこまで読み解けるのか。

「中身見るけど、構わないよね?出したんだから。」

 俺は頷いた。

 しばらくレイナは本を流し読む。

段々げんなりとした表情になってきた。

「あー、うん。、この学説は聞いた事あるよ。

 実際、その遺跡はそういう風に作られてるんだろうね。

 でも、悪趣味だなぁ。

 アルトリウス様に教えなくて正解だ。」

 あの人、どこか壊れてるからなぁと、しみじみレイナはつぶやいた。

決して悪い人ではないと思うんだけどね。

「俺には全く何が何やら。どこまでが本当で、どこからが妄想なのかも判別がつかなかったんですよ。」

 レイナは読み進めながら、なるほどねぇと生返事を返してきた。

ちょっと待った方がいいかな。

しばらく黙っておく。

「うーん、実は王国にはこれと似たようなことをしてる場所があると言えばあるんだよね。

 ほら、この奴隷を突っ込ませて戦ってるところを見世物にするってやつ。」

 俺は思わず顔をしかめてしまった。

「この理論とは関係ないんだけど、スカベンジャーを雇い入れて、遺跡に潜らせる街があるんだ。

 主な目的は、遺跡から手に入るマジックアイテムの入手が主な目的だけど、ある意味奴隷みたいなものだよね。

 買取価格はスポンサーになる商人の言い値だし、有名になったスカベンジャーは《魔法の目》で、覗かれながら遺跡探索させられるし。」

 確かにダンジョンを成長させようという意図はないだろうけど、やってることは本に書かれていた内容と類似はしている。

他人が苦労するところを見て面白がるというのは普遍的な欲求なのかもな。

「奴隷って話でしたけど、その雇用形態って言うのはそんなにひどいんですか?」

 みたいなものと言ってはいたけど、奴隷とは言い切ってない。

そこからすれば、それなりの契約の可能性もある。

「商人の倫理観次第かなぁ。それを言っちゃうとどんな仕事でもそうだけど、雇い主がまともならまともな契約になるよ。

 実際、それで生計を立てている人は結構多いし。

 傭兵をやるのと、どっちが健全かと聞かれると微妙なところはあるかなぁ。」

 傭兵も確かにヤクザな商売だ。

それと似たり寄ったりというところなのかなぁ。

「やってる人を蔑むわけじゃないし貧乏から抜け出す手段でもあるから、残酷だからやめさせろとか言うつもりはないけどね。

 とはいえ、恵まれた環境にいる私が言ってしまえば嫌味にしかならないわけだけども。」

 その感覚は非常にわかる。

やはり、来訪者の末裔だけに俺と感覚は似てるのかもなぁ。

たまたまなのかもしれないけど。

 しかし、スカベンジャーというのが生業として成り立ってる場所があるんだなぁ。

少し興味深い。

「ちなみに、場所はどこにあるんですか?」

 参考までに聞いておこう。

「王国の北東部にある街だよ。モーダルと一緒で特定の領主に支配されていないから、面白い場所だとは思うよ。

 機会があれば行ってみてもいいんじゃないかな?

 とはいえ、人さらいも多いらしいから注意は必要だけどね。

 知らないうちにスカベンジャーとして契約させられてたとかいう話も聞くし。」

 どこのフランス外人部隊だ。

飲み物には注意した方がよさそうだな。

「ところでヒロシ君さぁ。私を売ったんだから、少しはわがまま聞いてくれてもいいよね?」

 言わんとしていることはわかる。

巻き込んだ時点で何かしらの利得を求められるのは自然なことだ。

「俺ができることであれば、責任を持ちますけどただで何かをよこせとかは勘弁してくださいよ?」

 一応釘を刺しておこう。

流石に無償で何かをするつもりはない。

「分かってるよ。コンテナハウスの拡張なんだけどさ。

 半金で請け負ってくれない?

 ちゃんと支払いはするからさ。」

 その程度のことであれば、ちょっと資金的に厳しいが何とかならなくもない。

自分用のコンテナハウスがちょっと遠のくけど仕方ないよな。

「分かりました。

 値引き率も、以前と同じでいいですか?」

 それでも俺に利益が無いわけでもない。

こっちから割引を言い出さなくてもいいかもしれないが、どうせ値引き交渉されるだろうしな。

「話が早くて助かる!!とりあえず、以前説明した間取りでお願い。

 いくらするか見積もりが出来たら用意するよ。」

 あの間取り図というより、イラストみたいなやつか。

「いや、さすがにあれじゃ見積もり出せません。

 ちょっと要望を箇条書きにしてください。

 こっちで図面ひきますから。」

 ちょっと面倒な仕事増えたなぁ。


 帰りは購入したスクーターを使う。

門の近くで自転車に乗り換えるけど、どちらも非常に便利だ。

 往復に1日必要ないのはとても助かるし、辻馬車を待たずに自転車で移動できた方が俺には便利だ。

多少奇異の目で見られるが、自転車はそのうち制作を頼むから今のうちに宣伝するつもりで乗り回しておこう。

 恥ずかしいのは我慢我慢。

 倉庫によって、荷物を整理しよう。

野菜の類は目録を出すだけでいいからさほど手間じゃない。

 だけど、グラスコーからジャガイモやら麦なんかが送られてくる。

これらは、今モーダルでは値段が高騰しつつある物品だ。

倉庫に置いておかないとインベントリからあふれてしまう。

 しかし、倉庫自体も圧迫されてきた。

そろそろ売却しないと苦しい。

 一応市場の人が我先にとジャガイモや麦を取りに来たりもしているけど、それなら倉庫の入り口付近に置かなくちゃいけない。

ベンさんも忙しく働いてくれているけど、俺も手伝わないととても間に合わないだろう。

「悪いなヒロシ、普段なら一人でも十分なんだが。」

 汗を拭きながら、ベンさんが謝ってくる。

「いや、忙しいときは仕方ないですよ。女の人にお願いするわけにもいきませんしね。」

 軽いものならともかく、重い荷物はさすがに任せる気にならない。

ベネットみたく規格外の筋力があれば話は別だろうけども。

 ちょっと彼女に甘えすぎだな。

文句も言わず率先してやってくれるからついつい頼ってしまってる面があると思う。

反省しておこう。

 彼女は今、モーダル周辺の哨戒任務に就いている。

後で何かを甘いものでも置いておこう。

 何かあると食べ物で釣ってる気もするが、何かおしゃれな贈り物でも思いつけばいいんだけども。

如何せん、素人童貞の俺にはそんな知識もセンスもない。

 どうにかしなきゃな。

「ヒロシー!!ちょっといい?」

 レイシャが俺に声をかけてくる。

何かお使いでも行ってたのか、倉庫の入り口からだ。

 突然なんだろうか?

荷物整理もあるし、簡単な話ならいいけども。

「大丈夫、あとは俺だけでやれるよ。」

 ベンさんがそう言ってくれたので俺はすいませんと頭を下げた後、事務所に入っていったレイシャを追う。

「なんですかレイシャさん。急ぎの用ですか?」

 タオルで汗を拭きながら尋ねた。

「ごめんごめん、仕事中みたいだったけど急いで伝えたほうがいいかなって。」

 何事かと、他の事務をしている面子も集まってきた。

「暁の盾がドラゴンを倒したんだって。」

 にわかには信じられない。

哨戒任務中のベネットからは、ドラゴンを見かけたという情報も入っていないからだ。

 何気ない交換日記は今も続いていて、割と彼女の状況がつかめている。

街の人間よりかは詳しいはずだ。

 でも、動員されているのはベネットだけじゃない。

他の隊が交戦した可能性もある。

 そもそも団長が直々に出陣しているから噂だと断じきれないし、倒していても不思議じゃないんだよな。

先生も協力しているわけだし、確認はとってみてもいいかもしれない。

「分かりました。こっちでもいろいろ調べておきます。

 ちなみに誰から聞いたんですか?」

 誰からもたらされたかによって情報の角度は違うだろう。

「衛兵隊長。世話話してたら、ぽろっとね。

 なんで隠してるのかは、分からないけど噂が広まったらまた値動きが変わるかなって思ったからさ。」

 黒板に張り出した値段の推移が気になっていたのだろう。

レイシャからすれば、生活に困るという面もあったのかもしれない。

 でも、そういう発想をしてくれるのは非常に助かる。

「そうですね。助かりました。」

 そうレイシャに礼を述べてると、セレンはどことなく不満そうだ。

「サボって男と話してただけなのに、褒められるなんてずるい。」

 気持ちはわかるけどね。

「ごめんごめん、そうむくれないでよ。」

 レイシャはセレンに謝りつつ、自分の事務机に向かう。

「また忙しくなりそうですね。」

 イレーネはお疲れのご様子だ。

確かに、ここのところ倉庫が騒がしい。

当然それだけ事務の仕事も増える。

「まあ、これでパンが安くなってくれるといいわね。」

 ライナさんはため息交じりに言う。

確かにここのところパンの値上がりが続いていた。

家計を預かる身としては、切実な問題だったろうな。

 直接姿を現さなくても、あのドラゴンは本当に厄介で恐ろしい敵だ。

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