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6-14 お前なぁ!!

元凶が自分の責任じゃないとか言ってたらキレたくなりますよね。

 気が付けば、また白い部屋にいた。

俺は膝を抱えて、うずくまっている。

見る気もしない。

うんざりだ。

「言っておくけど、あのドラゴンは私じゃないからね?」

 いきなり弁解か、この女神は。

「あるいは、ロキ様の謀りごとかもしれないけど、少なくとも私は知らないし!!」

 言ってて情けなくならないんだろうか?

私、陰謀をばらしそうだから外されてますって告白しているようなもんだぞ。

思わずジトっとした目で見てしまう。

「と、ともかくレベルアップおめでとう。

 短期間でここまで上がるとは思わなかったよ。」

 俺はのろのろと片膝をつき、頭を下げる。

「失礼しました。ご配慮の賜物かと。

 深く感謝いたします。」

 俺は、形式ばかりの感謝の言葉を並べた。

「うわー、全然心籠ってない。心の中を覗かなくてもわかるわ。」

 正直、別にモーラ様のせいじゃない。

俺は今、やる気がかなり減衰しているだけだ。

 久しぶりだなこんな気分。

こちらに来る前はずっとこんな感じだった。

「それより私が来たってことはわかるでしょ?何か質問あるでしょ?」

 さっき謀りごとではないと言っていたので、何かの催促だろうか?

「何をお求めでしょうか?」

 場合によったら、もう何もかも投げ出したい。

必死になってくれているであろうベネットのことを考えると、そんなんじゃだめだとは思うけれど。

 つくづく嫌気がさした。

何もかもが疎ましく思えた。

「ちょっと待ってよ。

 いや、そりゃね、欲しいものはあるけど、そういうことじゃないのよ。

 ドラゴンのこととか知りたくないの?」

 知りたいか知りたくないかと言われれば知りたいに決まってる。

だけど突然なぜそんなことを聞いてくる。

 まさか。

「やだ、ごめんって。ちょっとした手違いというか、なんというか。

 その……」

 私じゃないってこと言ってたくせに、怒りがこみあげてくる。

嘘つき。

「そんなに睨まないでよ。

 まさか、考えもなしにあんなことすると思ってなかったんだもん。」

 俺はとっさに顔を伏せた。

相手は絶対的強者だ。

 こんな軽い口調だが、それでも俺から何もかもを奪い去ることができる。

軽率だった。

 悔しいが、何があったのかを拝聴すべきだ。

「申し訳ありません。

 一時の感情に流され、大変失礼をしました。」

 モーラ様はふぅとため息を漏らす。

どこまで人間臭いんだろうかこの女神は。

「いや、私のせいじゃないのは確かなのよ?

 たまたまね、呼び寄せた異世界人が、君のいる国を守っているドラゴン一頭殺しちゃってね。」

 まるで犬猫扱いだな。

なんだその軽い調子は。

 しかし、この国を守っているドラゴン?

この場合、あのドラゴンと敵対していたドラゴンが倒された結果、自由に動き回れるようになったという事だろうか?

 しかし、国を守るドラゴン?

 一応ゲーム知識としては、善良なドラゴンというのが存在しているのは知っている。

通常は色彩竜と言われる竜は、悪意を持ってプレイヤーに立ちはだかる対象だが、金属竜と呼ばれる竜たちは善性の存在でありプレイヤーを助ける存在と位置付けられる。

 もちろんゲームの都合だ。

序盤で強大な敵を出してしまうとプレイヤーが全滅しかねない。

 だけど、演出上顔出ししておきたいラスボスというのもいる。

そういうわけで、プレイヤーを助けてくれる強い味方みたいな使い方がされるのが一般的だ。

 もちろん、プレイヤーが悪役プレイをしたければ立場は逆になる。

善性を持つドラゴンに悪事をくじかれるという遊び方ももちろんあって、その時になんだかんだ悪いドラゴンが協力してくれるという遊び方もある。

 ただ、それはあくまでもゲームのお話だ。

 実際”鑑定”では属性というのは出てこない。

誰が善、誰が悪という定めはないのだから単純にあてはめていいものではないと思う。

 しかし、国を守る竜というのはどういう事だろう。

王族か何かと契約でも交わしていたんだろうか?

「お聞きしたいのですが、王家が竜たちと契約を結んでいて、その契約した竜のうち、一人が殺されたという事でしょうか?」

 何体いるのかは知らない。

 そして、その契約がどんなものかもわからない。

 だけど、今言ったことは何となく推測できる。

「よくわかるね。あー、君のやっていたゲームからの推測かな?

 なんだか手間が省けて助かるよ。」

 なんだか嬉しそうだけど、こっちとしてはまだ分からないことだらけだ。

「ちなみに、何を対価として王家は差し出して、何体の竜と契約しているんでしょうか?」

 そう聞くと、4本指を立てる。

「この国を4分割して東西南北に1頭ずつ、合計4頭いる。

 正確に言うと、それらの下にさらに3匹から4匹のドラゴンがいるけれど、今回殺されたのは筆頭の4頭のうちの1頭。

 だから、防衛ラインが崩れて大わらわさ。」

 他人事みたいに言う。

あんたが呼び出した人間が殺したんだろうが。

 しかし、ドラゴンを倒すってどんだけの力を与えたんだろう。

「ちなみに、対価というか、契約内容は相互不干渉だよ。

 もともと、君のいる国はドラゴンたちのテリトリーであって、人間は申し訳程度しかいなかった。

 だけど、どんどん増えるにしたがって対立が深まって、最後は衝突。

 そして、全面戦争に陥った。

 そういう状況というのも面白いけれど、さすがに信仰してくれる人が減りすぎるのも私としても困る。

 だから、出来ればその相互不干渉は守って欲しいところではあるよ。

 とはいえ、色彩竜の連中は人を認めてないし、金属竜の中でも意見が分かれているのだけどね。

 勝手に戦争してろ、我々に迷惑をかけるなって、本当に不干渉を決め込んでるのもいる。」

 大戦争って……

 あれに人間が勝てるんだろうか?

 少し悩むがゲームにおいては、レベルさえ届けば倒せない敵ではない。

ちゃんとデータがあるんだから倒せる。

 とはいえ、そんなゲームの常識を持ち出していいような相手にはとても思えなかった。

「なんだか君は、ゲームの知識があるのに、それを自分にあてはめようとしないね。

 実際君は結構強いんだよ?

 まあ、今は無理でもちゃんと力を付ければあんな小物は一捻りににできる。」

 小物って……

 もしかしたら若い竜なのかもしれないが、俺が倒せる未来が思い浮かばない。

あれが小物だったら、俺は虫けらでしかないだろう。

「実際、一噛みで殺された人間がいたけど、今の君なら噛まれても何とか脱出できたよ。

 それにあの馬鹿な女なんかさっさと見捨てればよかったのに。

 一人なら、《加速》で逃げおおせるのは簡単だったはずだよ?」

 正直、ラインズたちを駄目な人間だと思っていたが、改めてモーラに言われると腹が立つ。

思わず睨んでしまいそうになって目をつぶった。

「たまたま、そう動いてしまっただけです。慌てていてまともな判断ができなかっただけで、考えた行動じゃないので。」

 途中で見捨てようとか考えてたしな。

「君のそういうところが好きだよ。

 まあ、そうだね、たまたま、たまたまそうしてしまったってことにしよう。」

 勝ち誇ったように言われても、実際そうなんだから俺から付け加えることはない。

 それより、守護してくれているドラゴンを殺すってどういう事だろう。

 それにどうやってやったんだ?

「とりあえず、私の同胞は何をやったんですか?

 それにどんな力を使えば、ドラゴンを倒せるんです?」

 当然の疑問だろう。

本当に何やらかしたんだ。

「いろいろ経緯があるんだけど聞いてくれるかい?」

 聞きますとも。もう今更だし、どんなへまをやらかしたのかを知っておいた方がいい。

「お聞かせ願えれば幸いです。」

 滅茶苦茶口調が乱れている。

今更敬語をちゃんとしようとしても遅いかもしれない。

「えーっと、まあ君の件で色々と考えさせられてね。

 ちょっと強い存在とコンタクトさせようと思ったんだ。

 で、竜の生息域に放り込んでみたわけだよ。

 そしたら、いきなりステータスオープンステータスオープン叫び始めたから、色彩竜に見つかって殺されかけた。」

 俺は、激しい頭痛に襲われる。

同時に羞恥心で満たされる。

恥ずかしい。

「仕方がないから、サービスで能力確認の方法を教えてあげたんだ。

 君もだいぶ戸惑ってた見たいだしね。

 それくらいなら許してあげようと思って。

 そしたらみんな敵だって思いこんじゃってたのか、能力確認した途端に手当たり次第に力を使って攻撃し始めちゃったんだよ。」

 気持ちはわからなくもない。

あんな化け物がうろちょろしているところに放り出されたら誰だってそうなるだろう。

「ちなみに、どんな力を授けたんでしょうか?」

 俺の質問に答えづらいのか、モーラ、いやモーラ様は目をそらした。

「えっとね。

 まず再生能力をあげたんだ。

 すぐ死んじゃ困るし。

 いい加減、死に過ぎるからね。」

 どれだけの人間が、召喚されてすぐに死んだんだろう?

まあ、いい。

確かに、それは有用な能力だし、そのおかげで色彩竜の攻撃でも生き延びられたんだろうから。

「んで、当然それなりの力があった方がいいから、武器をなんでも召喚できる能力を上げた。

 もちろん、君の世界の武器も含めてね。

 それくらいのパワフルさがないと、さすがにドラゴン相手に渡り合えないだろうし。」

こういうのって男の子好きだよねって、すがすがしいまでに単純な能力だ。

確かに、そりゃね。異世界で生き残るためにはあって困ることはない。

「最後は、それらの武器がちゃんと使えるように、すべての武器に対する才能を授けてあげた。」

流石にそれはやりすぎだと思う。

歯止めが効かなくなるのも当然じゃないか。

「ちなみに、戦車とか戦闘機は武器扱いですか?」

俺のレンタルリストにもお勧めに並べてくるんだから、当然含まれると思うんだけどな。

「当然、呼び出せるよ。何だったら、こっちの世界の聖剣とか魔槍なんかも呼び出して使えるようにしておいた。

 さすがに所有者が居たら、模倣品になっちゃうみたいだけど。」

 さ、左様ですか。

「しかし、それでなんで逃げ出そうとか思わなかったんでしょうか?飛行機も乗れたんですよね?」

 モーラ様の顔が真顔になる。

 まさか、操縦する才能は渡してなかったんじゃ。

「操縦する能力は与えてなかったんだ。

 みんなできるもんだとばっかり思っていてね。」

 どこの世界なら、誰でも初見で戦闘機を乗り回せるようになるんだ。

ちょっと考えればわかるだろう。

「つまり、呼び出された人は半狂乱になりながら、現代兵器をぶっ放しながら暴れまわったというわけですか?

 多分、防具も身に着けてなかったですよね?」

 それも失念していたのか、えへっと笑いながら誤魔化してくる。

かなり悲惨だ。

 そして、ドラゴンからすればいい迷惑だろう。

小説なら面白いでしょで済むが、やってる本人からすれば悲劇以外の何物でもない。

よく、それで私のせいじゃないなんて言えたもんだ。

「それで、件の彼はどうなったんです?」

 当然気になるよな。

現代兵器を使って、半狂乱になりながら彷徨ってるとしたら、とんでもないことになってるはずだ。

「餓死した。」

 俺は言葉を失う。

「えっとね。再生し続けた結果、栄養不足になって死んじゃった。」

 何となく餓死という言葉でわかっていたけど、聞きたくなかった。

悲惨すぎる。

俺は自然と涙が出てきてしまう。

「何も泣くことないじゃない。

 なんか、私がすごい悪いことしたみたいになるからやめてよ。」

 悪いことしてるよ。

 もうちょっとこう、手心というか。

「途中でレベルアップしたから寝てる時に話をしようとしたら聞く耳もってくれないし、武器向けてくるし、私は悪くない。」

 当然夢の中だろうから、武器を出したところで意味はなかったんだろうな。

それで冷静になれていれば、まだチャンスはあったかもしれない。

冷静になれるかと言われたら、とてもそうは思えないけども。

「お腹が空いてるんだから、食べ物を求めてもよかったはずなんだよ。

 隠れて食べ物を探そうとするのでもよかった。

 こっちも手違いはあったけど、もう少し頭が回らないものなの?

 君は比較的冷静だから、面白いことになると思ったんだけどなぁ。」

 冷静なんじゃなくて、ビビってただけだよ。

多分聞いた状況に置かれたら俺も似たような末路をたどったと思う。

「ところでさ、さっき言ってた能力、どれかいる?」

 にっこり笑って聞くな。

「いりません。結構です。勘弁してください。」

 断固拒否する!!

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