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6-12 ダンジョンマスターの手記を発見した。

設定語り回です。

もちろん、あくまでもダンジョンを作った人間の手記なのですべてが分かるわけではないどころか

間違いを含んだ情報だったりします。

 うんざりする気分を押し殺して、身を隠せる部屋を探す。

焦ると罠に引っかかりそうだ。

 鉄球の罠とか、殺意が高すぎる。

 幸い、中央を踏み抜かなければ平気そうなので、それほどの脅威じゃないけど下手に戦闘中に踏み込んだらシャレにならないだろう。

踏み抜くと、壁から鉄球がどんっと横なぎにしてきて壁に叩きつけられてぺしゃんことか。

絶対生き延びられる気がしない。

 罠をよけて先に進む。

 そろそろ呪文が切れそうだ。

部屋があるのが見えた、あそこに入れれば問題ないだろう。

 《透視》の呪文を唱えて中の様子をうかがった。

中には鶏のような奴らがたむろしている。

定番のコカトリスという魔獣だ。

 見た目はやや大きい鶏だが、あのくちばしでつつかれると石化してしまう。

先ほどの顔剥き狼よりはよほど難敵だ。

 とはいえ、呪文が切れかかっている。

幸い数はそんなに多くない。

手早く片付ければ助かるかもしれない。

 扉を確認する。

幸い、鍵は掛かっていなかった。

 まず落ち着いて《加速》をかける、そしてそっと扉を開き《蜘蛛の網》をコカトリスたちにかけた。

幸い全部引っ掛けることに成功した。

 この時点で姿が出てしまうのが《透明化》の弱点だ。

急いで部屋の中に入り、槍で一匹を仕留めた。

 俺の姿を見て、網から飛び出してくるのも当然いる。

だが絡めとられてるだけに、動きが読みやすい。

 槍の石突で飛び掛かってきたコカトリスを網の中に叩き戻す。

 次に、横に槍を薙いで、もう一匹のコカトリスを仕留めた。

硬化していく網で、残りは殆ど動けない。

 冷静に、動くコカトリスが居なくなるまで槍で突き刺していった。

無生物には石化が効かないので、こういう時は本当に便利だ。

 必死に槍を突いているが、問題はない。

 これで、槍の柄が石化して砕けるとかだったら本当にシャレにならなかっただろう。

結構な声を上げていたので、何かに聞きつけられるかもしれない。

 俺は急いでシャッターで扉を封鎖した。

 しかし、コカトリスの嘴はいったいどんな仕組みで相手を石にしてしまうのだろうか。

死体になっていても、その効果は残るんだろうか?

気になることは多いけど、試してみる気にはならない。

 とりあえず、死体は槍でつついてインベントリにしまっておこう。

偶然触って、石になりましたじゃシャレにならない。

 しばらくすると呪文で生み出された粘着質の網は硬化しきって、砕け散って消える。

あとには何も残らない。

 部屋に罠があるかもしれないので、念入りに”鑑定”していく。

今回はむき出しで宝箱が置かれていた。

 他には本棚がある。

 

 本棚か。


 風化していない様子を見ると、ここはまだ誰か利用しているという事なんだろうか?

 他に気になったのは、キャビネットに連動した噴出孔だ。

開けようとすると何かが飛び出す仕組みに見える。

 だが、仕掛けは単純で引き金を引くひもを切ってしまえば発動しないという作りだ。

そっとひもを切っておく。

 おそらく、仕掛けはそれだけだとは思うが、そっとキャビネットを開いた。

 中身は杖のようだ。

ワンドではない。

 複数の呪文が込められたスタッフと呼ばれる杖だ。

 値段はワンドの比じゃない。

 しかし、参ったな。

 もしこれでめちゃくちゃ強い魔術師の拠点とかだとするなら、俺はその人物に喧嘩を売ったことになりかねない。

頼むからそんなことにはならないで欲しいけども。

 幸い、シャッターを叩くような音もしないから、何かに気づかれたという事もないだろう。

一旦落ち着いて、休む算段をしておこう。

>今日は呪文切れしたので休むね。

 ベネットに一言入れた。

>休める場所が見つかったのね?お疲れさま。

>どのくらい登れたの?

 とりあえず、ベネットの質問に7階層と伝えた。

>そんなに?

 と驚きの返答が来たけど、単に戦闘を避けて階段を探し回った結果に過ぎない。

ほとんど探索なんかできてないから、あまり意味はないんだよな。

>逃げ回ってただけだから。

>戦闘はなるべく避けてたし。

 そう送ると、安心したとベネットから返ってきた。

 さて、本を読むか。

 もしかしたら、これに呪いがあるかもしれないので、一応”鑑定”をかけておく。

 全ての本が呪文による形質保護がかけられていた。

 つまり、原形をとどめているのは呪文のおかげというわけだ。

作り出された年代を考えれば、とっくの昔に風化していてもおかしくないくらい古い本だ。

 ただ、他に呪文のようなものは付与されていない。

 まあ呪文じゃない別の何かがあるかもしれないが、”鑑定”したうえではただの本に見える。

 とりあえず、これもインベントリにしまって、中身を読もう。

読んだら死ぬとかいう代物がないとも言い切れないあたりが怖いけども。


 とりあえず、長い。

全部読むのは到底無理だ。

分かってたことではあるけれど、冊数も多い。

 とりあえず、掻い摘んでいえばダンジョンに対する考察が書かれている。

この世界でのダンジョンとは何かという内容だ。

 少なくともこの空間は別の次元で構成されているらしい。

 それがどういう理屈なのかが分からないので何とも言えないが、他のダンジョンを参考にして、この遺跡は設計したと主張している。

 その上でダンジョンとは、いたるところから生物が流入して生態系を形成しているものだというのがこの本の主張のようだ。

 一応、この遺跡の全体図があったので確認してみたが物理的な出入り口は元あった場所と座標がずれるという事はなかったと書かれていた。

 つまり、少なくとも上に行けば、崖の上には着くようだ。

 よかった、上に上がったら全く知らない土地につくとかシャレにならない。

 だが、それらの物理的な出入り口とは別に物理的につながっていないゲートが複数存在する。

そこを全部ふさぐとダンジョンは生命の流入を止められ枯渇するという。

その時点で別次元にあったダンジョンは元の次元に戻ってしまうそうだ。

 じゃあ、なんで生命の流入が必要なのだろう?

 つまり、わざわざダンジョンを形成する理由だ。

もしくは、形成されてしまった理由。

 この本の著者いわく、ダンジョンとはマジックアイテムを工業的に生産するために必要な装置なのだと主張していた。

建物の一番下にある部屋に、設計されたアーティファクトを設置すれば、あとは魔術師の手を借りずともマジックアイテムが作れる。

 少なくとも、著者はそう考えていた。

 だが、どうやら著者はアーティファクトの製造が上手くいかなかったらしい。

魔術回路というのを見せられても、正直ちんぷんかんぷんだ。

 とりあえず、失敗続きだったというのは伝わってくる。

 ただまあなんというか。

生き物が死ぬときのエネルギーというのを利用するという発想はなかなかにえぐい。

ゲートの維持も、そういった生命の死から生み出されているので、あとは延々と死が累積していく。

 なんともおどろおどろしい。

 ともかく、それで死が積み重なれば徐々にダンジョンは拡張されていき、新たなゲートが形成される。

実際に今いる遺跡も深さが設計当初よりも深くなっていたらしく、制御不能になる可能性を危惧していた。

 だけど、どうやら拡張には限界があったらしい。

ある程度の大きさになると、途端に成長をやめてしまったそうだ。

装置の作成が上手くいかなかったのも、これが原因だと著者は述べている。

 本の中身は単なる狂人のたわごとなのかもしれない。

 少なくとも、判断がつかない。

 だけど、少なくともあと1階層登れば地上に繋がる階段があるという記載は真実であってほしい。

 しかし改めて考えると若干不気味さを感じてしまったが、生命を利用するのは別に珍しい話じゃない。

農業だって畜産だって、生命を利用しているのは同じだ。

何やら、怪しげなエネルギーという言葉だけが先走ってしまって倫理的に許されないと感じてしまっているだけなのかもしれない。

 とはいえ奴隷を使って流入してきたモンスターと闘わせて、それをショーとして見せるって発想にはちょっとついていけなかった。

結構お金のかかった建物らしいから、資金を回収したかったのはわかるけど。

悪趣味すぎる。

 まるで、デスゲームみたいじゃないか。

 いや、デスゲームか。

 結局、著者がどうなったかとか、なぜこの建物が解体されずに残っているのかは分からない。

 しかもわざわざ、崖の下に出入り口を設けた理由も分からない。

なにがしかの意図があったにせよ、俺が読み解ける範囲では理由は書かれていなかった。

 あと”鑑定”の結果として、所有者情報を調べれば、所在地は無かったので少なくとも今は死んでいるのは確かだろう。

 一瞬安堵しかけたけど、人間以外の別の何かになってる可能性もある。

例えば、リッチであるとか吸血鬼になっただとか。

 そういう場合、同じ存在と言えるのかという事を考えついて、ちょっと背筋が凍る。

特に記憶が書き換えられることもないので、真相は闇の中だ。

 あと、気になる情報と言えば、第一階層の地上へとつながる階段の前に広間があるんだが。

守護者を用意してあると書かれていた。

 魔術で呼び出され、殺しても何度でも蘇ると書かれていたから、たぶん今もいるのかもしれない。

少なくとも、著者の理論が正しければだけども。

 こそ泥除けとして、そして、地下から出てくる化け物除けとして、魔術で強化された牡牛が居るそうだ。

 なんでも甲冑を身にまとい、こそこそ隠れたものを見つけ出す目を持ち、一度目を付けた敵は地の果てまで追いかけるんだとか。

ゲートを越えてきた生命は階層を跨ぐことができないけど、この守護者は別で、他の階層に逃げても追いかけてくるらしい。

何だったら、外にまで追いかけてくるんだとか。

 いい迷惑だ。

 しかし、そうなったら追いかけている間の守護はどうするんだって感じなんだが、そこは考えていたのかな?

それとも、他に仕掛けがあるんだろうか?

 そこについては記載がない。

 ただ、倒されるとひと月は守護者を呼び戻せないので、別の門番を用意しないといけないと嘆いていた。

金で雇うのがつらいと書いてあったから、別の門番というのは今はいないと考えていいと思うんだ。

 お願いします。

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