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1-14 女の子に慰められるおっさんは情けないよな。

 まあ結果から言うと、チートはチートだけど代償付きだった。

結局あの後、俺は寝込んでしまう。

気がつけばベッドの上で、今さっき目が覚めたところだ。

体が重い。

「ヒロシ、大丈夫?」

 目が覚めたことに気づいたのかミリーが顔をのぞき込んでいる。

「ミリー、俺はどうしたんだ?」

 何となくだが、無茶な呪文の使い方のせいで寝込んだんじゃないだろうか?

気分が悪くなってぶっ倒れたところまでは覚えてる。

増えた水の量を考えれば、30リットルくらいは超純水にしたはずだ。

それの代償はどのくらいなもんだろうか?

「お昼くらいに倒れて、今は夜だよ?ヨハンナは無茶な呪文の使い方をしたからだって言ってたけど……」

 ミリーは不安そうだが、俺からしてみれば安心できる内容だ。

何日も起きられないレベルではないらしい。

でも、ちょっと気分悪い。

「はい、水。」

 そっとミリーが水の入ったコップを渡してくれる。

「ありがとう。」

 俺は礼を言って飲み干した。

あー、川の水かな?

でも、変な味もしないし平気だろう。

「ねえ、ヒロシ。」

 ミリーがいつになく真剣な顔をしている。

どうしたんだろうか?

「キャラバン、出て行くって本当?」

 あれ?

 俺ちゃんと話してなかったっけ?

いや、聞いてくるってことは言ってなかったんだろうな。

「えっと、そうだな。俺がいたら迷惑だろう?」

 一応ミリーにも説明しておかないとな。

 でも、誰が知らなくて誰は知ってるんだろう?

後でちゃんと確認しよう。

「迷惑なんかじゃないよ!ヒロシ凄いって!」

 顔を真っ赤にしてミリーは言ってきた。

いや、俺は別に凄くない。

そういいたかったが、凄いのか凄くないのかなんて周りが見えてなきゃ分からない。

借り物だから、俺が凄いんじゃないって気持ちもあるから、ちょっと冷静な自己評価は難しいな。

「水をあんなに出せるし、火を付けるのもあっという間だし、やんちゃな山羊だってお手の物じゃない!」

 複雑な気分だ。

ミリーは褒めてくれている。

だから悪気なんかこれっぽっちもない。

だけどミリー、違うんだ。

それは、俺の本当の力なんかじゃない。

それに……

「まあ、呪文はそういうものだよな。

 でも、俺じゃなくだって水は用意できるし、火だって付けられる。少しは苦労するだろうけど……」

 別に俺じゃ無くったっていい。

「それにミリーの方が、山羊たちだってなついてる。俺なんかよりよっぽど才能があるよ。」

 これは僻みだろうな。

別にミリーが努力しなかったわけがないんだ。

そして、別に誰にも真似できないほどの物でもない。

 でも、きっとミリーには自負があるはずだ。

キャラバンの中では誰にも負けないって自信はあるはずだ。

俺にはそれがない。

数多くの失敗をしてきたからこそ、手に入れた自信。

それがあるのと無いのとじゃ、全然違う。

 俺は……

なんだか急に恥ずかしくなる。

やめよう。

「まあ、ミリーにできないこととしては、こんな何もないところでもパンを買えるって所だけどな。」

 ちょっと自慢げに言ってみた。

「まあ、でも逆に言えば、それがダメなんだ。」

 ちょっとは言いくるめないとな。

俺の能力は、それはそれとして危険だっていっておこう。

「何でダメなのか分かるかミリー?」

 ミリーは眉根を寄せた。

どんな答えが出るか、俺は少し待ってみる。

「もしかして、争いの元になるのが怖いの?」

 鋭い。

こいつ、思った以上に鋭いな。

言い訳にする理由を一発で当てやがった……

「そう、それが怖い。」

 あまり俺も頭はよくないから肯定するしかない。

「そんなの平気だよ!ロイドもハンスも滅茶苦茶強いんだから!」

 ミリーが自慢げに言う。

少し意外だった。

ロイドにしろハンスにしろ争いを好むタイプには見えない。

それでも、ミリーがこれだけ自慢したって言うことは凄いんだろう。

多分。

 でも、そういう問題じゃない。

「まあ、ハンスもロイドも強いのは頼もしいけど、何百人もの大軍に襲われても平気か?」

 いや、その十分の一でも無理だろう。

あー、でもファンタジーな世界だから、そういう無双ができる人がいるかもなぁ。

ハンスがそうだって言われてもおかしくはないか?

「それは、無理だと思う。」

 よかった、ハンスは化け物じゃなかった。

 いや、オークだから化け物っちゃ化け物なのか?

 こう言うときめんどくさいなぁ、ファンタジー!!

「俺なんか、多分兵隊一人にあっさりと捕まっちまうよ。誰かを守ることなんかできるはずもない。」

 ミリーが今にも泣きそうだ。

なんか、酷いことを言ってる気分になる。

多分、この子にも色々事情はあるんだろうな。

「まあ、敵に襲われるのは、俺がいてもいなくても可能性はあるわけだけどさ。

 だからって俺が脳天気に特殊能力を使いまくってたら余計目立つだろう?」

 それに敵は外側だけじゃない。

これは、決してみんなに言えないことだ。

今のみんななら、絶対にない。

そんなことが言えるほど俺は、人の心が分かる人間じゃない。

 疑っている。

いつか、どこかで裏切られるかもとか利用されるんじゃないかとか……

 馬鹿馬鹿しい。

それは俺がクズだからそう思ってるだけだ。

分かってる。

 みんな良い奴だ。

 俺が勝手に被害妄想を垂れ流してるだけだ。

俺が、俺自身がみんなを裏切る可能性があるし、今もみんなを利用している。

だから、逆の可能性があると言い訳している。

 ただ、それだけのことだ。

 だから、絶対そんなことは口にできない。

 絶対だ。

「まあ、俺がどっかのお貴族様にでもなれば、みんなを呼んでやるよ。

 そうすれば、みんなを守る兵隊だって雇えるし好きなだけ美味しい食べ物を食べさせてやることだってできる。

 そっちの方がミリーだって良いだろう?」

 俺は笑ってミリーの頭をなでてやる。

 あー、考えてみれば、頭をなでるの駄目って文化もあるんだったなぁ。

 拒否されてないから、問題ないかな?

「期待してない。どうせヒロシ程度じゃ、あっという間に食い物にされて終わるだけだよ。」

 むすっとして返されてしまった。

まあ、頭をなでるのは拒否されてないから、問題ないと思っておこう。

 問題ないよな?

 うーん……

 今後は控えよう。

「ヒロシは弱っちいんだから、いじめられたらすぐ帰ってきなよ。

 別に能力なんか無くったって良いよ。

 仲間なんだから……」

 ツンデレかよ。

これで幼女じゃなかったら落ちてたな……

まあ実際の所、妙齢の女性であっても、ヘタレな俺からは何もできないわけだが。

そんな甲斐性があったら、本職の方にお願いなんぞしとらんしな。

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