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6-10 なんで右往左往しちゃうかな。

一人っきりにダンジョン行ですが、慎重にやっていこうと思います。

初手不注意なんですけども。

 しかし、今回改めて死の恐怖を感じた。

前までは、俺一人が死ぬだけなのでそこは仕方がないにしろ、冷静になってみると死んだ時に預けている”収納”の荷物はどうなるのだろうと気になってしまう。

 考えると答えが返されるのが不気味だが、今はむしろありがたい。

いじられた記憶によれば、誰かに”収納”の能力が移譲されるらしい。

 今ならベネットだろうか。

ほっと一安心した。

彼女に譲れるなら、不安はない。

 俺なんかよりも、うまく使いこなしてくれるだろう。

 しかし、ステータスを見て改めて思ったが本当に瀕死の重傷だったらしい。

HPが残り一桁まで落ち込んでたんだから相当だ。

 レベルアップのおかげで2桁まで回復しているものの、ぎりぎりだったんだな。

追撃でブレスでも吐かれてたら一巻の終わりだったろう。

 そういう意味で言えば、俺はリンダに助けられたことになる。

彼女が何を考えて俺を突き飛ばしたのかは分からない。

 咄嗟のことだったし、何も考えていなかったのかもしれない。

 流石にあんな死に方をされて考えるなというのは無理があるが、死んだ人間のことばかり考えても仕方がない。

 一応念のためにもう一本、《治癒》のポーションを飲んでおく。痛みがだいぶ引く。

 どのくらいまで回復させれば動けるようになるか、把握するには丁度いいかもしれない。

 しかし、移動するべきかとどまるべきか悩む。

 何かいる様子もないから、救助が来るまでここにいるべきだろうか?

 ただ、どうにも落ち着かない。せわしなく周囲を見渡してしまう。

 ふと、目の端に何かが目に留まる。

自然の岩壁に似つかわしくない、祠のようなものがある。

 ”鑑定”をしてみても、周りの岩とは成分が違う。

 そういえば、ドラゴンを”鑑定”するのを忘れていた。

おそらくレッドドラゴンだと思うけど、こちらの世界で俺のゲーム知識が合致するとは限らない。

 しかもドラゴンとは言ったものの、必ずしもそうとは限らない。

 ゲームの中にもファイヤードレイクと似たような奴がいる。

 どちらにしろ、あの叫び声を聞く限り仲良くはできない相手だというのは間違いないだろう。

 背筋が震える。

 谷の上から、あのドラゴンに見つめられているような錯覚を覚えた。

 せめて、どこか屋根のある場所に避難したい。

 中に何があるか分からないので、祠の横に立ち、こっそりと中を覗き込む。

そこには、階段があった。

 下へと続くくらい穴の奥は、暗視ゴーグルでも見通し切ることはできないくらい深い。

 とてもじゃないけど、避難に向ているとは思えない。

 だけど、いつの間にか俺は、身を乗り出していた。

 ごりっという音とともにつかんでいた石材が動く、そのまま吸い込まれるように俺は階段に身を乗り出すようにつんのめってしまう。

 やばい!!

慌てて、俺は足を前に出して踏ん張ろうとする。

 だが石灰石でできている階段は長い年月の風雪のせいで滑らかになってしまっていたのか踏ん張ることができない。

緩やかな下り坂だから真っ逆さまに落ちるわけではないが、ずるずるっと中に滑って行ってしまう。

俺は必死に祠の石材につかまろうとする。

 だが、さらに石材はずれ、ついには外れてしまい、俺は祠の中に飲み込まれて行ってしまった。

まるでシューターの罠にはまってしまったようなものだ。

 止まるまで、身を任せるしかない。

 石材が外れてしまったから、祠は崩れ去り出入り口が埋まるように土砂が流れ込んでくるのが分かる。

 やばい、止まった後に土砂が流れ込んでくるかもしれない。

行き止まりだとしたら、生き埋めだ。

 どうしようと焦るが、運がいいことに流れ込む勢いが徐々に収まってくる。

岩か何かが崩れて流れ込む土砂をせき止めてしまったのかもしれない。

 だが、逆にこれで完全に閉じ込められたことを意味していた。

 ようやく底にたどり着く。

 無様にしりもちをついた状態で壁に衝突してしまった。

 俺は何をやってるんだろう。

遭難したら、あちこち動けば救助者の迷惑になる。

じっとしておくことが大事だ。

 そんな当たり前のことができないとは、本当に情けない。

 幸い、足から壁にぶつかったので、怪我をすることはなかった。

 とりあえず、状況を確認する。

左右に道が続いている。

丁度階段を降りれば、通路に繋がっているという構造だったっぽい。

 一応、シューターみたいになっていたのは偶然なんだよな?

初めから誘い込むための罠じゃないことを祈りたい。

モーラ様のいたずらじゃないことは、もっと祈りたい。

 助けて、ウルズ様。


>ごめん。なんか祠がって、そこにある階段から落ちた。

 いつもの交換日記形式でベネットに一言送っておく。

>祠ってなに?

 すぐに返信が来た。

焦っているであろうベネットの顔が思い浮かぶ。

そりゃ、そうだよな。

 崖の下に祠があって、そこに階段があって落っこちた。

なんでって気分にもなるだろう。

>分からない。崖の下に祠があって、覗き込んでたら落ちた。

 ふと、何かが動いた気配がする。

次の瞬間何かが俺に覆いかぶさってきた。

慌ててもがくが、布みたいなものがまとわりついてくる。

 ゲームを思い出し、クローカーやダークマントというモンスターのことが頭をよぎる。

 とりあえず振り払い、槍を取り出して突き刺す。

タコみたいなやつが苦しそうにもがき、槍にまとわりついていた。

槍を振り上げてそれを地面に叩きつける。

 そして、一旦槍をしまい込み、周囲を確認する。

少なくとも同じ個体が3体いた。

 ”鑑定”することで、予想通りダークマントというモンスターだと分かる。

不意打ち専門みたいなモンスターなので、一度凌いでしまえば大分対処しやすい。

 槍を突き刺しては絡みつくダークマントを叩きつけて殺し、引きはがす手間を省くために槍をしまう。

相手は間合いを図りづらいらしく、問題なく倒しきれた。

 息が上がる。

いくら対処しやすいとはいえ、命を懸けたやり取りだ。

 のんびりはできない。

身をかわしたり、槍で振り払ったりもしたので、階段からは大分離れてしまった。

 戻るべきだろうか?

何か来るかもしれないと思うと慌てて駆けだしたくなる。

 今はまだ、罠らしきものがなくていいが、さっきの戦闘中に罠まで発動していたら、危なかっただろう。

慌てちゃいけないのはわかるけど、どうしてもそわそわして落ち着かない。

 いくら空中にキーボードが出せるとはいえ、そちらに集中すると危険だ。

 とりあえず、身を隠せる場所を探そう。

 ゆっくり慎重に。

 俺は《盾》を唱え、通路を”鑑定”しながら進んでいく。

罠なんかが”鑑定”に引っかかってくれればありがたいけど、不安なので槍でつつきながら進む。

 後ろから何かが来られても困るので、《透視・盗聴》で後ろも視認しておく。

情報量が多い。

 途中、回転する刃が飛び出す罠やら槍が床から飛び出す罠なんかがあったけど”鑑定”のおかげで何とか無事に通過できた。

地面を這いずったり、壁に張り付いている状態なので、何かに襲われたら何もできないかもしれない。

 本当に気が気じゃない。

 ようやく通路の右側に扉のようなものが見えた、さらにその先は曲がり角のようだ。

部屋の中に聞き耳を立てる。

 残念ながら、呪文ではなくて自分の耳でだ。

回数的にそんなに《透視・盗聴》は準備していない。

 特段音はしなかった。

扉を”鑑定”しても特に罠のようなものはなかった。

 ただ施錠はされている様子だ。

 どうするか。

 施錠されているのなら中には何もいないかもしれない。

少し考えたが思い切って俺は扉を蹴破った。

 部屋の中には触手の生えた、犬?いや、狼?何とも言えない。

とりあえず、その姿かたちは見覚えがあった。

 ”所晦ましの獣”というモンスターだ。

ためらわず俺は槍を突き出した。

 こいつは厄介で、実際にいる場所と目に映る場所が違う。

何とか初撃を胴体に突っ込むことができた。

 だがすぐさま、身をひるがえし槍から逃れる。

動物に問答無用で攻撃するのはどうかという人もいるかもしれない。

 だが、俺の記憶が確かならこいつらは狡猾な狩猟者だ。

倒しておかないと厄介な相手だと考えられる。

 逃げてくれるなら、それに越したことはないがにやりと笑う顔はどう見ても敵意むき出しだ。

 ”鑑定”の対象にして、姿を見失わないようにしておく。

 幸い壁をすり抜けたりすることはできないので、何とか倒しきりたいところだ。

飛び掛かってきては意外な角度から攻撃を仕掛け、身をひるがえす。

 まるで猫みたいな攻撃を繰り出してくる。

前足だけじゃなく、後ろ脚や触手も注意しないといけない。

 何度か、槍でとらえたと思っても、見ている場所とずれているので見当違いな場所を攻撃してしまう。

部屋の中で、何度も立ち位置を変えて攻防を繰り返す。

 とりあえず余計なものが入ってこないように、扉を蹴飛ばし、閉めておく。

 幸い部屋の中にはほかに動くものはいない。

 とはいえ、扉の鍵は俺が蹴破ったせいで壊れている。

早く勝負を決めないとまずい。

 《盾》の呪文は比較的効果時間の長い呪文だけど、だんだん瞬いてきている。

 そろそろ効果も切れそうだ。とても焦る。

 焦りすぎて、何度か攻撃を貰ってしまった。

致命傷じゃないけど、傷口が熱い。

 所晦ましの獣が躍りかかってくる。

俺はとっさに水壁を呼び出した。

 例え、見える姿と違う場所にいたとしても、範囲を覆ってしまえば捉えることは可能だ。

俺は動きの鈍った所晦ましの獣の頭に槍を突き立てた。

 今度はしっかり命中した。

ぐったりと水の中で所晦ましの獣は息絶えた。

 ゆっくりしている暇はない。

 まず、水ごと所晦ましの獣をインベントリにしまい込む。

 そして、コンテナハウス用に買っていたシャッターを扉の前に置いた。

壁一面を覆う大きさで壁に立てかけるような感じになってしまうが、とりあえずこれでひとまずの安全は確保できるだろう。

 結構な重量だ。

これを跳ねのけて飛び込んでくるようなのだったら、どうしようもない。

 俺は息をついて、床にへたり込んだ。

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