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5-19 変な噂が流れてるのに、変なことを口走るとか。

噂では滅茶苦茶イケメンにされてるとかよくあると思うんですよ。

自分もイケメンに生まれたかったなぁ。

その恨みも込めて主人公はイケメンにはなりません。

「そうそう、アルノー村で、お前が来ないか聞かれたぞ?お前、なんかやったのか?」

 いや、身に覚えはない。

レイナの家は、やっと屋根が付き、そこそこ体裁が整ってきた。

欲が出てきたのか、拡張したいとか言われて、図面というかイメージ図を渡されたけど今のところは無視している。

今の状態でも、生活には困らないはずだ。

なんか、おしゃれ感が漂うデザイン画にちょっとイラっとしたところもある。

「まあいいや、とりあえずベーゼック探しに次の店行くか?

 おい、おやじ!!勘定!!」

 時間的には、まだ宵の口だ。

もう一軒くらい平気か。


 予測はしていたけど、やっぱり女性のいる店だった。

ベーゼックと言えば女性、道理と言えば道理だけども。

近寄りたくなかった。

 なんでこんなに罪悪感を感じないといけないんだろう。

「なんだいヒロシ、浮かない顔をしてるね?」

 ベーゼックはにやにや笑ってからかってくる。

「いや、この前醜態をさらしましたしね。

 二の舞は避けたいかなって思っただけですよ。」

 女の子たちにも笑われてる気がして落ち着かない。

そこまで注目もされてないだろうし、気にする必要はないんだろうけども。

「彼女に浮気がばれるんじゃないかと怯えてるのかと思ったよ。」

 この野郎。

「まだ彼女はいませんけどね。返事貰ってないんで。」

 意外だったらしく、ベーゼックが声を上げる。

「なんだい、ヒロシ告白したんだ?よくもまあ。」

 ベーゼックの言葉にグラスコーもにやにやしてる。

なんか女の子もひそひそ話をしている。

俺の意中の相手がベネットだというのは多分相当広まってるんだろうな。

漏れ聞こえる限りだとフラれたんじゃないかみたいに思われてそうだ。

俺はへの字に口を曲げる。

「そんなことよりよ。ベーゼックお前、書庫の虫なんだって?」

 その話題は出されたくなかったらしく、ベーゼックも口をへの字に曲げる。

「やめてくれよグラスコーさん、そんなかび臭い趣味があるなんて知られたら女の子に振られちゃうよ。」

 いいから話を聞かせろって感じでグラスコーがベーゼックに根掘り葉掘りいろいろ聞き出そうとしている。

ちょっと割り込みづらい。

「黒髪の王子様が、こんな見た目だったなんて意外。」

 不意に女の子に声を掛けられる。

どうやらさっきの告白したという話からベネットの名前が出て、噂話で流れるイケメンの王子様の話と俺の名前が結びついたらしい。

 いや、無視しておいてください。

「人違いじゃないですか?単に名前が同じだけだと思います。」

「そうなのかなぁ?でも、あなた優しそうだから、私好きよ?」

 そういいながら、お酒を勧められる。

そうね、お酒を勧めるのがお仕事だからね。

しょうがないんだけども、あからさまなおべっかは勘弁してほしい。

別に、悪い気はしないんだよ。、悪い気は……

「ところでベーゼックさん、地図って教会の書庫にあったりしませんか?」

 あんまり絡まれるとやばいので、無理やり割り込んだ。

「地図?あー、うん。知り合いの男爵に地図好きな人がいるけれど。」

 まさか、アーネスト男爵とか言わないよな?

男爵というと、イレーネの御父上が真っ先に思い浮かぶ。

「私のところの親戚でね。バウモント伯派閥の男爵で、ラウゴールっていう家名を名乗っているよ。

 まあ、男爵というより商人だけどね。

 モーダルからは大分離れてるから、すぐに行くのは無理だろうけど紹介状くらいなら書くよ?」

 よかった、違う人だった。

しかし、遠いのか。

「春になりゃ、商売の季節だ。お前にはちょっと国内での取引を経験してもらいたいからな。

 その時にでも訪ねてみりゃいいだろ?」

 そういってもらえると助かる。

グラスコーも受け入れてくれるなら、ちょっと考えよう。

 あぁ、そうだ、もう一つ聞くのを忘れていた。

「ところで、ベーゼックさん、セレンっていう女性ご存じですか?」

 名前を聞いてもベーゼックは誰だっけという顔をする。

「修道院からうちの事務員に応募してきた方なんですけど。」

 そこでようやく思い当たったのかベーゼックは口を開く。

「あぁ、それは教会のスパイだね。ちなみに僕からは漏らしてないよ?逆に司祭から根掘り葉掘り聞かれたからね。」

 うん、まあスパイじゃないとは思ってなかったよ。

「まあ、私は中枢にいないからね。実家が金を出してくれないから、おかげで権謀術策からは距離を取れてる。」

 それはそれでちょっと切ない立場だなぁ。

「ちなみに、ご存じないんですか?」

 口ぶりからすると知らないみたいだ。

「うん、まあ偽名を名乗ってる可能性もあるから、会ってみれば見知った子かもしれないけれど。

 少なくともぴんと来ないかなぁ。」

 5人しかいない信仰系術者同士が顔見知りじゃないって言うのはちょっと意外だ。

まあ、偽名の可能性は高いか。

「まあ、たぶんヒロシが何をしでかすか見張りたいだけだと思うから、思い切って抱いてみたらいいんじゃない?

 その子も覚悟してるでしょ。」

 思わず俺は酒を吹き出した。

正確に言うと、アルコールを下にためてたので水ではあるんだけども。

「突然何言ってるんですか?」

 告白した子がいるって話をしてるのに、思い切って抱いちゃえってお前。

「いや、別に大人同士だし、合意の上でならいいと思うけどね。

 二人とも秘密にしておけば平気平気。」

 平気で浮気する奴の思考だ。

どこの神様だから知らないが、こんな奴に力を貸しちゃいけないと思います。

「それにね。男女には一つや二つ秘密があった方が長持ちするよ?」

 信じられん。

いや、まあ浮気は横に置いといて互いに何でも晒しあえるというのは幻想だろう。

どんな関係にだって秘密はある。

ベネットが知らない俺の秘密もあれば、俺が知らないベネットの秘密もあるはずだ。

これからだって、増えていくはずだ。

だから少なくとも、今わざわざ火種を抱えたくはない。

「聖人君主ぶりたくはないですけど、俺はそこまで器用じゃないですよ。

 謝って許しを得たがる人間だ。

 秘密を隠しておけずに結局相手を傷つける。

 だからそういうことはやりません。」

 ベーゼックはふーんみたいな顔をしてるけど、周りの女の子たちが盛り上がる。

思い返すと、色男なら様になる様な事を言った気がする。

恥ずかしすぎて、穴があったら入りたい。

どの面下げてそんなこと言ってるんだ。

 なんか、本当最近おかしい気がする。

前はこんな恥ずかしいセリフ、とても言えたもんじゃなかったのに、思わず口をついて出てしまった。

「ねえ、グラスコーさんはどうなの?意中の人とかいるの?」

 不意に女の子の一人がグラスコーに話を振った。

「いねえよ。そこの色男と違って俺は女に縛られるのは勘弁願いたいんでね。

 まあ、一夜限りならいくらでも応えていいけどな。」

 ぐへへといやらしい笑い方をする。

この世界の男たちはフリーダムだなぁ。

 いや、ハンスやロイドはどうなんだろう?

 俺の恋愛観がおかしいんだろうか?

 ただ少なくとも、弱みになるのは間違いない。

グラスコーみたくあしらえるならともかく、俺にはアキレス腱にしかならん。


 酔ったベーゼックとグラスコーを送った後、俺は部屋に戻った。

カールに先に寝てていいと言ってたので、部屋の明かりは消えてる。

とりあえず、体を洗っておこう。

 あー、しかし、本当に何を考えてあんなことを言ったんだろう。

別に嘘ではなくて本心ではあるけれど、格好つけたかったかと言えば当然あっただろう。

やっぱりかわいい子には格好いい所見せたいもんな。

せめて見た目だけでもかっこよくなってたらなぁ。

 完全にアルコールを分離できるわけでもないので、少し酔っぱらってる。

さっさと寝よう。

 明日は暁の盾を訪ねるとして、とりあえず終わったことは消しておくか。

 ToDoリストだっけ?

それを使えば、発展した話も整理しやすいのかな。

使ったこともないのでわからない。

 もうちょっと真面目に社会人しておくべきだったなぁ。

 そういえば、グラスコーがなぜ商人志望の人間を増やさないのか聞きそびれた。

 こうして、整理していくとあとからあとから湧いてくるなぁ。

アーノルド商会の件は、進めると伝えたから相手側に手紙を書くとして。

ウーズを使って冷蔵庫については興味津々だったから、これは本格的にプレゼン資料を作らなくちゃいけないかもしれない。

衛兵にウーズの駆除依頼も相談しなくちゃだし、官報もまだ手に入れてない。

 ちょっとこの忙しさ、いつまで続くんだろうか?

街でもやることが多すぎる。

 そうだ、アルノー村の件もグラスコーから聞いたんだっけ?

なんでも村の建物がレイナの家みたいに雪で天井が抜けたところが何件かあるらしい。

 ジョシュがレイナの家を訪ねた際に、場所も建物も変わっていたのに驚いて、屋根を作ってる職人に尋ねたらしい。

コンテナ部分はすでに立っていて、今は屋根を作っているところだと返事をされて、ジョシュがレイナを問い詰めたら俺が売ったことが伝わったらしい。

 いや、家を売るつもりはなかったんだ。

そもそも、レイナの時も言ったけど、定住するために作ったわけじゃない。

しかもお値段も結構する。

 これはどうしたもんかなぁ。

今度グラスコーに頼んでアルノー村に行くか。

ちょっと話してみないと解決できそうにない。

 問題は、いつ行くかだよなぁ。

それまでに解決策が思い浮かべばいいけども。

頭も鈍い俺には苦行に近い。

 こういう時は、缶コーヒーだよな。

よく砂糖入りの水と揶揄されるが、好きなものは好きなんだ。

一気に飲み干す。

少しすっきりした。

 まあ、買ってもらうのは無理そうならレンタルかなぁと漠然と思ったけど、そもそも家が壊れた人たちは今どうしてるんだろう?

少し気になったけど、これも直接行って聞けばいいか。

寝よう。

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