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5-17 ”鑑定”を鑑定された。

お金になるなら自分の特殊能力だって売ります。

 ハロルドの包みピザはみんなには好評だった。

昼休みには、ちゃっかりグラスコーも来てたので、もちろん代金はグラスコー持ちだ。

 こいつ今まで何してたんだろう?

 俺は炭酸水、他のみんなはワインにオレンジジュースや炭酸で割ったものを飲んでる。

流石にがっつり昼間からワインストレートというのはグラスコーだけだ。

「飲むのはいいですけど、飲酒運転はやめてくださいね?」

 一応、車に乗るときは飲酒するなとは言ってあるので、注意した。

「分かってる。ありゃ、事故ったら人が死ぬ代物だからな。

 だから、午後は歩きだ。」

 そこは、わきまえてるんだな。

恐ろしさを身をもって知ったってところだろうか?

初日は盛大にスピンしたもんな。

 それでも、飛ばす癖は残ってる。

「トマトって、うまいね。ヒロシ、トマトを使った料理って他にないの?」

 レイシャさんはトマトが気に入ったみたいだ。

「口元が汚れるのが、少し面倒ですね。

 でも、おいしいです。」

 イレーネさん、おいしいと思うなら、ちょっとは笑顔になって欲しい。

 セレンは……

トマト駄目みたいだ。

ワイン煮込みの方だけを食べて、じーっとトマト入りの包みピザを見ている。

ライナさんは慣れたものなのか、特に反応はない。

「このワイン、案外おいしいわね。」

 実は、蛮族の交易品の一品だ。

ライナさんには、そちらの方が気になったみたいだな。

「オレンジとの相性もいいな。何杯でもいけそうだ。いや、仕事があるからほどほどにしないとな。」

 ベンさんはオレンジ割が気に入った様子で一気に飲み干してしまっていた。

「そういえば、これハロルドの店のやつでしょ?最近有名だよね?」

 へぇ、有名なのか。

レイシャさんが名前を知ってるとは思わなかった。

評判がいいなら幸いだ。

「露店してた時にいつもお世話になってたから、今も、よく買いに行ってるんですよ。」

 セレンが目を輝かせて俺の方を見てくる。

「じゃあ、今度そのお店に連れて行ってくれませんか?」

 なかなかぶっこんでくるじゃねか。

どうあしらおうか。

「そうですね。新人歓迎会も兼ねて今度予約しておきます。」

 他の人間を挟んでおこう。


 昼食を終え、辻馬車に乗りオークション主催者である豪商アーノルドの商会に顔を出す。

グラスコーの倉庫とは違い、結構いい建物だ。

いくつかの商店を王都周辺に出店している。

モーダルには、荷受けと配送のために建てられた倉庫なわけだけども扱う物品が多いのか人が結構多い。

 守衛をしているだろう人に声をかけて、手紙を渡すと中身を検分されて一人が確認に建物に入っていった。

倉庫番という形で守衛も兼任しているベンさんのことを考えると贅沢な話だなと思わなくもない。

 でも、これだけの規模だと考えればそれくらいは普通なのかな。

 しばらくすると身なりのいい男が出てきて、中に案内してくれた。

 正直、中は雑然としている。

とはいえ、これだけの規模があればちょっと管理しきれないものが出てくるのは仕方ないけど、ちょっと腐臭がする樽とかは勘弁願いたかった。

「お待ちしておりました、ヒロシさん。まずは、我々どものオークションを利用していただきありがとうございます。」

 年は行ってそうだけど、十分きれいな女性が頭を下げてくる。

「いえ、少し難しい品物でしたので売却できてこちらも安堵しています。」

 実際あれは使い勝手が悪い。

強化は十分高いとはいえ、ナイフだと隠し持てるくらいでリーチの差が厳しい。

ゲームだとそこらへん、あんまり感じないけど、さすがに実際使うとなると度胸いるよな。

「失礼、わたくしモーダル市店の店長をしております、アメリと申します。以後お見知りおきを。」

 丁寧な物腰で助かった。

前にオークションには喧嘩を売る様な事をしたので、根に持たれてたら厄介だと思っていたから。

これなら平気そうだ。

「こちらこそ、よろしくお願いします。」

 そういう儀礼的なやり取りが終わり、証書を受け取る。

ただこれだけのことに、結構な体力を使うな。

気疲れする。

 売値は6万ダール、手数料は引かれてるので割と高めに売れたんだな。

一応2万づつ、3枚の証書に分けてもらった。

早速、ベネットとトーラスのタブに送っておく。

「ところで、ヒロシさん。大変な鑑定眼をお持ちとお聞きしてますが、少しお願いを聞いていただいてもよろしいでしょうか?」

 あー、はい。

なんかたくまれてるのかな?

もしかして、ギルドが手を回したかな?

「それなりの腕を持っていると自負しています。鑑定のご依頼ですか?」

 まあ、こちらも商売だ。

おおよその売値、オークションの参考価格になる金額の1/10が鑑定料の相場だ。

基本的に高めに設定すれば鑑定料は跳ね上がるが、おかしな鑑定をすれば信用に関わる。

失敗すれば、基本的に2度目はないという形だ。

 ちなみに、俺の懐に入ってくるのはさらにその1/10だ。

残りは、グラスコー商会の取り分になる。

 といっても、これは妥当な取り分だ。

何かあれば、グラスコーに迷惑がかかる。

その上で、いろいろな補償を有形無形の形で受けられるから、この配分は妥当だろうなと思っている。

それに、俺にとっては何らリスクがない。

”鑑定”様様だな。

 しかし、この間のレベルアップで全部読み取ると情報がもりもり増えてしまう。

だから、来歴情報は見ないようにしている。

そういう情報が欲しいということであれば調べるけども、出来れば勘弁してほしい。

「申し訳ありませんが、少し試すようなことをしてもよろしいですか?少し、面倒ですので時間を改めさせていただいても……」

 テストか。

それくらいならいいかな。

「構いませんよ。」

 仕事につながりそうだし、多少はね。

「あー、ちなみにヒロシ様の噂を流した責任者は首にいたしました。こちらの不明でご迷惑をおかけしました。」

 そこで、その話を持ってくるのか。

やっぱこの人も狸みたいだなぁ。


 別室に通される。

会議室みたいな部屋だけど、片付けられてテーブルが一つ置かれていた。

人が二人たっている。

テーブルにはワンドが3本置かれていた。

 右から《治癒》、《魔弾》、《盾》の順だ。

回数も、10回以下のワンドだからよく俺が入札するような商品だ。

他に金属板が置かれてる。

これも右から順に青銅、金、オリハルコンと表示される。、

 オリハルコンって珍しい金属だよな?

魔法金属で成分表的には銅と変わりがない。

にもかかわらず、滅茶苦茶硬くミスリルを凌ぐらしい。

 まあ、でもそう聞いただけで本当かどうかは分からない。

 ちなみに比重的には、銅と大体同じだ。

「これらのワンドの呪文と回数、それとこの金属がなんであるかをお教えください。」

 どうしたものかな。

多分、すぐ言い当てたらおかしな力を持ってると判断されるだろうし。

かといって外すわけにもいかない。

俺は、ワンドをじっくり見まわすふりをしつつ、どうやって鑑定したかという言い訳を考える。

「触っても構いませんか?」

 流石に触るなとか言われたら、無理だって断ろう。

「構いません、どうぞ御触りください。」

 分かり易いんだよな金属は、そもそも比重が違う。

銅と金じゃ金の方が重い。

オリハルコンと銅の比重は微妙だけど硬さの違いで分かる。

流石に中に鉛を仕込むとかそういうことはしてない様子だし、これは素直に答えよう。

「右から青銅、金、オリハルコンですね?」

 アメリはにんまりと笑う。

「それと、ワンドの方は《治癒》3回、《魔弾》8回、《盾》1回です。」

 言い訳どうしようかな。

「そうですか、では早速、ワンドは確かめてみましょう。」

 まあ、そうなるわな。

もったいないけど、本当かどうかは使ってみるまで分からない。

控えていた人がそれぞれにワンドを持ち呪文を発動していく。

言った通りの回数でワンドは砕け散って消えた。

「素晴らしいです!!全問正解。いったいどんな風に鑑定を?」

 ここからが本番だよな。

「金属は比重です。金と銅なら金の方が重い。青銅だから色合いで判断がしづらかったので、持たせてもらうまでは分からなかったですが、触ってみればよくわかりました。

 オリハルコンは銅のような色合いですが、銅とは違い大分硬い印象を受けたのでオリハルコンと判断しました。」

 まあ、ここまでは説得力あるよな。

他の人でも判断が付く内容だ。

「では、ワンドの回数についてはどうです?属性や系統、そこから呪文を推察するのは可能と思いますが、回数はなかなか難しいとお聞きしています。」

 まあ、呪文をピンポイントで当てるのは、それはそれでなかなか難しい。

たまたま分かり易い呪文だったからいいけど、これが系統や属性が被る呪文が多い分野だったら疑われたかもな。

「回数は、もう勘ですよ。一応、色でおおよその違いは判りますが、さすがに難しかったです。《盾》が真っ黒でしたから、それを1回と定めて若干《魔弾》に青の要素が含まれていて8回。

 より、黒の要素が強いので《治癒》は3回と判断しました。」

 ちょっと言い訳が適当過ぎるが、本当にこんなものだ。

たまたま当たったとしか言えない。

 アメリも疑わしそうだ。

「そうですね、色見本を用意しましょうか?」

 とりあえず、レタッチソフトを使って色情報を取得すれば厳密に違いを見ることができるかもしれない。

「それは……」

 予想外な提案だったらしく、アメリはちょっとためらっている。

「1万ダールで用意しますが?」

 ちょっと吹っ掛けてみた。

「ご返答は、後日ということでよろしいでしょうか?」

 アメリは、どうにか納得してくれた様子だ。

よし、何とかなったみたいだな。

 不意に電子音が鳴る。

どうやらベネットから手紙が届いたみたいだ。

内容は救援物資のおかげで仲間が助かったことと、それへの感謝の言葉だ。

 まあ、気にはなってたからこういう手紙はありがたいな。

 しかし、こうやって人と話してる時に鳴ると困る。

緊急の場合もあるかもしれないし、どちら優先とも言い難いのがつらい。

「とりあえず、色見本についてはご検討していただければいいと思います。こちらとしてもいい取引を期待しています。」

 ちょっと溜めてじらしたような形になって申し訳ない。

「ありがとうございます。それと、もう一つお願いしたい件があります。」

 アメリの言うもう一つの提案は結構めんどくさい内容だった。

アーノルド商会のモーダル支店にあるすべてのマジックアイテムを鑑定して欲しいという内容だ。

何日かかるんだよ。

 流石に断ろうと思ったけど、色見本を貰えばワンドは対象から外すし、スクロールも外すという感じで粘られた。

鑑定料も通常の2倍出すということだから、おいしいと言えばおいしい商売だ。

 とはいえ、それで拘束されるのはたまったもんじゃない。

この件は持ち帰り検討させていただきますということで、アーノルド商会から何とか逃げ出せた。


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