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5-16 ”収納”はとても便利だよね。

 家に帰ってきて夕飯を食べ終わり、一息ついたところで今日の出来事を振り返る。

割とすぐ忘れるたちなので、メモしないと何が進んで何が進んで無いかを忘れることがたびたびだ。

 とはいえ、メモをするのを忘れることもあれば、メモを取ったことを忘れるのも日常茶飯事なので困りものだ。

本当、何とか生きながらえてる状態だな。

 これでも全力なんだよ。

 先生には呪文を教えてもらった後、地図についても訪ねてみた。

最初はすっかり失念していたけど、これだけ物知りな先生だから地図を持っていてもおかしくないかなと思ったけど、残念ながら持ってないということだった。

正確に言うと、世界地図は持っていた。

現在ある国家の名前や関係性、勢力圏を色分けして国境でどういった紛争があるかまで記載があった。

よくもまあ、そんな遠くのことを知り得るものだとは思うけども、先生曰く10年くらいはずれがあるそうだ。

その中の国のいくつかは消えてるんじゃないと笑いながら言っていた。

 まあ、10年もあればそんな変化もあるか。

しかし、本当に大まかには俺が知っている地球と大陸の形は同じに見えた。

どこまで類似性があるのかは分からないけど、ちょっと残念な気分になってしまう。

もっとこう面白おかしな世界だったらよかったのになと思う部分があって、なかなかに自分でも業が深いと感じってしまう。

 問題は、王国内の詳細な地図だ。

先生はフィールドワークは苦手なんだよと言っていたけど、まあ軍事機密でもあるからおいそれと所持はできないんだろうな。

 後は、ハロルドの店の評判だ。

それなりに人が入っているらしく滑り出しとしては順調らしい。

大家さん経由でテナントを借りたので、うまくいってくれたのはありがたい。

カールと仲良くなった大家さんの機嫌がよくなれば、お小言も減るだろうし。

 出している料理は、海鮮系が割と人気になっていた。

まず通常の食材よりも安く仕入れができること、バラエティーが豊かであること。

何よりハロルドの調理が上手いから、どんなものでも美味しい。

さすがに苦手なものは誰にでもあるだろうから、食べられないと思うものもあるかもしれない。

それでも、試してみるかとなるくらいには大半のものがおいしい。

 ということは、客の何人かから直接聞けた。

ちょっと、お前何者だよみたいな空気になったけど、そこは我慢した。

やっぱり人と話すのは苦手だ。

 その中で、やっぱりなと思う部分があった。

まず、タコが食べらレれないという意見が多かった。

それと人を襲うモンスターを食べるというのに拒絶感があるらしいというのも感じ取れた。

こうやってリサーチするとモンスターの利用というのはなかなかハードルが高い。

見たくもないって人も多かったな。

 冷蔵庫を作るとなると、本当に見えないようにしないといけない。

陶器に納めて銅の蓋をするという構造がいいかな。

それなら完全に見えない。

それを木の箱に入れて冷やすという構造だ。

そうすれば、上は物が凍るけど、下は適度に冷やされるという構造になる気がする。

 昔、氷を上にのっけて物を冷やすという冷蔵庫というのを見たことがある。

そういうのでいいんじゃないだろうか?

ウーズの冷却機能が低下したらユニットを交換するという形にすれば割と行ける気がする。

 問題は誰に作ってもらうかだ。

そもそも、素材が多岐にわたるので鍛冶屋のアレストラばあさんを頼りにしちゃいけない気がする。

金属部分で使うのは銅板だけだ。頼むとしたら、モーダル内の職人だろう。

 問題は、モーダル内の職人が鍛冶と大工、木工、それと焼き物でそれぞれギルドがあることだ。

焼き物は、前まで陶器と磁器でギルドが分かれてたし、レンガなんかは大工の領分となっている。

家具は木工で建物は大工、だけど備え付け家具は大工の仕事だ。

そこら辺の垣根があるので、連携して物を作るとなると結構大変だ。

 領主だったらお抱えの職人に丸投げでもいいんだろうけど、ここではそういうわけにはいかない。

ちょっとプレゼン資料作らないとかなぁ。

 めんどくさい。

 ちょっと考えるのがつらくなったので、届いた手紙を整理していく。

 キャラバンからは採掘したサンプルが送られてきてる。

ちゃんと掘った順番に数字が書かれているので、おおよその深さも推察できてありがたかった。

ミリーからは、狼を飼い始めたという内容の手紙が来ている。

順調に家畜の数も増えているらしくて、他の動物を飼う余裕が出てきたということらしい。

 なんかこういう手紙、ほっこりとするよな。

 オーツ麦がだいぶ減ってたので、勝手に補充しておく。

とっても便利。

なんか宅急便がなくても荷物が送れるのはいいなぁ。

 トーラスとベネットからは、救援物資要請が来ていた。

色々と大変らしく、止血用のタオルや食料、ポーションを送って欲しいという内容で手紙が書かれていた。

中に入っているのが代金だとも書かれているから、受け取って早速そちらのタブに要請のあった物資を送る。

昨日、覗いた時には無かった手紙だから多分だけど今日届いたものだろう。

間に合ってくれてればいいけど。

そう考えると、手紙とか届いたらお知らせして欲しいな。

 電子音が鳴り響く。

本当にお手軽な理由で君はレベルアップするね、”収納”君。

君、早いところ無限に荷物が出し入れできるようにならないかな?

 まあ、残念ながらそこまでサービスはよくない。

でも、32tは十分多いだろう。

何より特別枠が倍になってくれたのはありがたい。

本当にこれはチートだよな。

 レベルアップの内容は、想像したとおり、物品の取り出しや収納時みたいな変化があった時に内容をお知らせしてくれる機能だ。

ついでに履歴を調べれば、誰がいつ、何を収納したのかまでわかるという。

 いや、本当に至れり尽くせりだわ。

ついでにインベントリの検索機能までついてるから、抽出して余計なものが無いか調べるのにも役に立ちそうだ。

依存させる気満々だな。

 さらに手紙はパソコンのメーラーに転送されて到着した日時をモニターで確認可能。

色々と機能拡張されて、把握しづらい。

 そういうと記憶をいじられそうだから追及はやめよう。

 待てよ?

じゃあ、インベントリに届いてる手紙をしまえばモニターで確認できるのか。

今は全然狙われている気はしないからいいけど、今後は手紙に毒が塗られてるなんてケースもあるかもしれない。

そういう時は適当な棒とかで押さえてインベントリに収納すれば、中身を確認できるかもな。

何だったら時限爆弾も”収納”に入れれば爆発させなくて済みそうだ。

そんな物騒な状況に置かれたくはないけども。

 とりあえずいいや、残りの手紙は全部モニターで確認しよう。

手紙を送るというのは結構手間で、郵便制度がないから誰それさんのところに送ってという面倒な部分が多い。

辻馬車の御者なんかは街の隅々を知っているので、お願いしやすいけどそれなりにお金がかかる。

 逆にそのおかげでダイレクトメールや広告チラシなんかは届かないのでありがたいと言えばありがたい。

 だから、一応意味がある手紙しかないわけだけど、どれから読んだものか。

 画家の先生からお手紙が来ている。

ゴブリンを連れて行ってもいいかという内容でお手紙を書いていたので返事をくれたのは一人だけだ。

そりゃ、そうだよね。

日時はいつでもいいとは書いてあるけど、まあ非常識な時間はさけておこう。

 明日は何から手を付けたもんか。

オークションの主催者のところか、暁の盾の居留地か。

ベネットはちょっと忙しそうだし、居留地にはいないのは間違いなさそうだ。

 じゃあ、資金の回収に行くか。

一応、オークション主催者からものが売れた旨と代金の受け取りを要請する手紙も来ているし。

ただ午後からという指定も入ってるので明日はゆっくりしようかな。

寝よう。


 少し遅い時間に顔を出したら、レイシャさんに重役出勤かよと詰られてしまった。

一応、勤務体系については話してはあるけど、まあそう受け取られても仕方ないよな。

 でも、まじめに出勤してるんだ。

欠伸をかみしめてるけど、まじめに働いてる様子だし、よかった。

「ヒロシさん。今日はどこかにお出かけになるんですか?」

 セレネが体を寄せてくるので、俺は距離を取る。

「はい、一応いろいろあるもんで。午後からは出ます。」

 なんか、じりじりと距離を測られてる。

ネコに追い詰められたネズミみたいな気分だ。

体格的に見れば小柄だし、力だってこっちの方がある。

とはいえ、乱暴にしたくはない。

「仕事をしなさい。」

 イレーネに一喝されると、セレンは笑顔のまま、はーいと席に戻って行った。

慣れない職場で3人にはストレスもあるし、ちょっと昼食を用意するか。

 と言っても、昨日ハロルドのところで購入してきた包みピザくらいなんだけども。

レイシャさんは野草茶が苦手そうだったし、飲み物はどうしようかな?

普通にワインとか昼食に飲む人もいるし、それでいいかなぁ。

 そんなことを考えつつ倉庫に入る。

結構乱雑に荷物が置かれていた。

「おぉ、ヒロシ、荷物整理手伝ってくれるか?腰が痛くてかなわん。」

 箱ごとに品目が分かれている様子だけどちょっとこれは骨が折れそうだ。

でもインベントリがあれば、それをいったん経由して整理可能だけども。

「分かりました。とりあえず中身検品します?」

 ベンさんは俺の申し出にちょっと悩んだ様子を見せる。

「さすがにそれだと俺の仕事がなくなっちまうよ。暇だしゆっくりやるさ。」

 確かに俺が来たことで大分倉庫もすっきりした。

もちろん、中身を吟味したりだとか、どれが売れそうなのかとか、現物を見てないと分からないこともある。

一応”売買”で大体の価格はわかるが、それは俺が”売買”で売った時の値段だ。

場合によれば、俺が売るよりも何倍もの値段で売れるものも存在する。

特に服関係は顕著だ。

 こちらでは、布を作るのに大分手間がかかっている。

現代のように機械で織って、ミシンで縫製するという世界じゃない。

だから、”売買”で売るよりも現地で売った方が高い。

 工芸品や美術品なんかもそうだ。

”売買”だと無名美術家の作品と同じ値段しかしないが、こちらの世界では名の知れた先生の作品だったりもする。

そうなると値段は雲泥の差だ。

 グラスコーも、俺のインベントリに頼りきりになるとまずいと考えているだろうし、倉庫というものがお役御免になることはないだろう。

もちろん、生鮮品は別だ。

冷蔵庫ができれば、そちらにしまうこともあるだろうけど今はさっさとインベントリにしまう方がいいだろう。

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