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5-11 住宅販売とお引越しのお手伝い。

コンテナハウスそれなりにお値段しますよね。

 しかし、古い家はどうしよう。

既に基礎から外してしまったので住むわけにもいかない。

大工を呼ぶにしても建築にはどれくらいかかるのだろう。

 まあ、お金持ちのお嬢様らしいので、建築費は問題ないだろうけども。

夕飯を提供しながら、これからどうするかを話し合って見ている。

「天井が抜けてますから、解体するしかないですけど、しばらくは村長さんのうちにご厄介になる感じですか?」

 レイナはご飯をつつきながら、もぐもぐ料理を口に入れたまま、うーんとうなってる。

ちなみに今回用意したのはワイバーン肉が割とお手軽に柔らかくなったので、今回は猪肉を試してみた。

醤油じゃなくて、ワイン煮込みだが。

関所を越えたあたりで、ベネットに味付けを見てもらいながら作ったのでトーラスの口にも合うはずだと思ってる。

 ちなみに、ホールディングバッグに突っ込んでいたので味がしっかりとしみ込んでいて、俺としては合格点だ。

みんなからは特に文句は出てないから上手くいったってことでいいんだよな?

 ただレイナがワイン煮込みを見て、ご飯で食べたいというリクエストだったので、ご飯も一緒に炊いた。

ちょっとそれが奇異に映ったのか、ベネットとトーラスには別のものを用意して欲しいと頼まれて、包みピザのトマトを使っていないものを二人には提供している。

中は、ワインで煮た羊のひき肉とチーズだ。

ちょっと肉と肉でバランスが悪いかもしれないと言って、ヨハンナが作っていた野草のお浸しをベネットが作ってくれた。

 そういえば、キャラバンでは一度もチーズを食べたことがなかった。

理由としては、交易品として使えるという理由だ。

日持ちがして非常食として優秀だというのもあるし、熟成させるのに結構時間がかかる。

だから、いざという時のために取ってあるのだとか。

 なんか、料理の感想とか別のことを考えこんでるが、ずーっとどうしようかな、うーんとうなってばかりなので、こちらとしても待つしかない。

「ヒロシ、この猪はいけるよ。おいしい。」

 最初は恐る恐るだったけど、慣れ親しんだ味だったみたいでトーラスはおいしそうに食べている。

包みピザもトマトが入って無ければ、そこまでの抵抗感はないみたいだ。

「ねえ、私の家の話でしょ?真剣に考えて!!」

 いやいや、悩んでるみたいだから待ってたんだけどな。

「いや、何か考え事中だったみたいだったんで待ってたんですけど?」

 それはそうだけどと、レイナは口ごもる。

「村長は別にいつまでもとか言ってくれそうだけど、正直、私は一般家庭は無理なのよね。なんだか、穀潰しみたいじゃない?一応ジョシュにいろいろ教えてるけど、何かしてないと……」

 まあ、わかる。

村長さんのお宅は農家だ。

農繁期でなくても、いろいろな準備や家畜の世話で忙しい。

お呼ばれで一晩とかならともかく、居候してたら肩身が狭いだろう。

「でさ、このお家くれないかな?駄目?」

 まあ、そうなるかなとは思った。

「一応言っておきますけど、定住用には作られてないんですけど。また雪で天井抜けますよ?」

 ただでさえ、上は真っ平だ。

蛮地のように風が強くて、積もる暇もないならともかく雪が積もったらさすがに危険だろう。

「あー、うーん。そこは、ちょっと屋根を付けてもらうとか。」

 出来なくはないけど、耐久性があるものとなると少し微妙だ。

軽金属の板か何かで斜め屋根を付けるくらいだと、ちょっとした重みで歪んでしまうし、木材でとなるとそれなりの手間暇が必要だろう。

 まあ、やってやれないこともないか?

いったん軽金属で屋根を付けて、それを補強する形で木材を入れていく。

 となると、ちゃんとした大工さんに頼まないといけないなぁ。

元々、壁や天井はユニット化されているので、横に拡張するのは楽だったし、残されたフレームを木材で囲んで打ち付けたりとか、その程度の作業はやったけど。

とても本職の人のようにうまく作業できる気がしない。

 とはいえ、この家を人に見せるのは、少しためらうなぁ。

「自分で作れますか?」

 そういえば、レイナは魔術師だ。

呪文の中には木材を歪めたり、石を土に、土を石に変えたりする呪文もある。

それらで何とかならないものだろうか?

「呪文は建築センスを授けてくれるものじゃないんだよ。無理……」

 いや、建築センスって単に屋根を付ける……

だけというのはちょっと素人考えがすぎるか。

「分かりました。じゃあ、譲るのはいいとして、ちゃんとした屋根は大工さんに頼みましょう。」

 ちょっと口の堅い大工さんを探さないとな。

「それと、基礎がないので杭打ちしておかないとまずいですね。それも後日ということで。」

 とりあえず、ベネットやトーラスたちとの契約もある。

明日にはモーダルには戻らないと。

「ありがとう。助かる。」

 心底ほっとしたのか、笑顔をようやく見せた。

こうしてみると可愛いんだけども……

「まあ、とはいえただでは渡せません。10万ダールでどうでしょう?」

 もちろん、職人を探す手間や屋根を追加する部材や基礎を打つ杭を購入することを考えれば妥当な価格設定じゃなかろうか?

「ぐ!……ぬぅ……部材とか私が用意するからもうちょっと安くならない?……」

 流石に金貨1000枚はきついか。

 しかし、むしろ部材を用意してくれるというのは興味がある。

ここは勉強しておくか。

「そうですね。じゃあ、値引きして8万4000ダールで。」

「いや、切りが悪いから8万ならない?証書じゃなくて、金貨とか銀貨で2万くらい用意するし。」

 確かに現金でもらえる分があるのは助かる。

ただ、さすがに8万だと安すぎるなぁ。

「じゃあ、2つ条件を付け加えます。証書の分は今いただくこと。そして、作業を手伝うこと。それなら8万でいいですよ?」

「半金以上前払い?いや、まあ……すぐ住める状態なわけだからいいけどさ……がめつい……」

 そりゃ、商人だし。

むしろ、良心的だと思うけどなぁ。

 レイナは、荷物の中から証書を取り出し、金額を書いて渡してきた。

なんか、小切手に金額と名前を書いて渡す感じがして、それはそれで憧れるよな。

お金持ち感が出る。

しっかりと、ビシャバールのものだと思われる印章とギルドの印章が刻まれ、サインされているから来年にはちゃんと現金が受け取れる。

金額が金額なだけにこれで取引をするとなると、大物じゃないといけないだろうけど、侯爵家の証書ともなれば信用は高いだろう。

「ありがたく受け取らせていただきます。お買い上げありがとうございました。」

 しかし困ったな。

また同じものを作らないといけない。

結構苦労するんだよなぁ。

パネルとか外したり、フレーム同士をつないだりは自分でやった。

それをもう一度かと考えると眩暈がする。


 食事が終わり、家具の配置をして本を本棚にしまうと、本当に手狭になった。

 いや、4人で寝るスペースやら食事をする空間は確保できてるし、不便はないだろうけど、圧迫感がすごい。

書庫の中で暮らしているような感じがする。

 しかし、引っ越しを手伝ったようなもんだからくたくただ。

レイナは新しい住まいに満足したようだからよかったけど、巻き込まれたトーラスとベネットにはいい迷惑だっただろうな。

「ご苦労様でした。何か飲みますか?」

 とりあえず、酒でも何でも出してあげよう。

「あー、ごめんごめん、作業してくれたのにただってわけにはいかないよね。はい。」

 レイナは俺たちに金貨を渡してくる。

こういう気前の良さはありがたいけど、ちょっと心配になるな。

本人は魔術師だし、それなりに腕に覚えはあるんだろうけど、無防備すぎる。

「レイナ様、あまり気軽に金貨をお使いになられるのは危険ですよ。

 変な気を起こす輩もいますから、注意してくださいね。」

 ベネットもそれは気になったのか、言い含めるようにレイナに注意した。

「変な気を起こすって言っても、あなたたちは悪い人じゃないみたいだし、むしろそれなら泣いてる私を攫おうとするんじゃない?」

 まあ、それはそうだが……

「一応、人は見てるよ。そっけなかったのは謝るけどね。ごめん。それとありがとう。」

 そういわれたら引き下がるしかないか。

「いえ、謝られることではないですけど……」

 ベネットも反応に困ってる。

なんだかばつが悪いな。

良い人って思われるのはありがたいけど、正直面はゆい。

話題を変えよう。

「えーっと……飲み物どうしましょう?お嬢様方……」

 とりあえず、無視された話題を蒸し返そう。

「んー、炭酸水飲みたいかなぁ?ある?……」

「ございます。」

「ヒロシ、あんまり似合わないから執事ごっこはやめない?」

 ベネットに突っ込まれると困るな。

「私は、野草茶が欲しいけど、お願いできる?」

「畏まりました。」

 ちょっと恥ずかしいが、執事ごっこを続けよう。

途中でやめたらもっと恥ずかしい。

みんなの視線がトーラスに集まる。

「あ、僕はワインで……ヒロシ、畏まるのはやめてくれよ……男にやるもんじゃない……」

「あーもう、分かりました、やめますやめまーす。さすがにそこまで拒否されるとは思わなかったよ。」

 普通の口調に戻したらみんな笑った。

よし、何とか誤魔化せたな。

 飲み物を用意し、それをみんなが口をつけるとなんとなく人心地が付いた。

 ちなみに、俺はいつも買ってる缶コーヒーを飲んだ。

最早誤魔化す必要もない人たちだからな。

「そういえば、お風呂入ります?」

 ひと汗かいてるのですっきりしたい気もするけど、面倒な気もする。

「私は入らない。というか、ヒロシ知ってる?水を操作すれば、床をぬらさずに体洗えるんだよ?こんな風に。」

 自慢げに水を呼び出し、手の平を包んでレイナはその手を俺に差し出してくる。

振動させて汚れが落ちることは前に教えたけど、それを体にまとわせれば風呂に入らなくていいって言うのを自慢してるんだろうな。

ただその、知ってる。

俺の狭い部屋で身を清めるのによく使ってる手だ。

 しかし、自慢げに見せてるってことは、俺が知らないって思ってるってことだよな。

「あー、すごいですね。これなら手間いらずだ。」

 初めて知ったように誤魔化しておこう。

「ヒロシ、知ってたでしょ?」

 ベネットがいたずらっぽく笑って、俺の誤魔化しを暴く。

やめて、せっかくはぐらかしたのに。

「なんだ、私が初めてじゃないんだ。」

 ちょっとレイナがしょんぼりしている。

「だって、ワイバーンを解体してた時に使っていたもの。何でもないことみたいに使ってたから、見逃してたと思った?」

 そういえば、そうだった。むしろ俺が忘れてる。

「へぇ、ワイバーンなんかを狩ったんだ。やるじゃん。」

 なんか軽い感じで褒めてくれてるが、その口ぶりからするとレイナにとってはワイバーンは大した相手じゃないのかな?

ちょっとステータスが見たくなったが……

やっぱりちょっと抵抗感がある。

見るのが怖いというのもあった。

「まあ、とりあえず、これがあるからお風呂はパス!!後でトイレで洗う。」

 まあ、これをやると服濡れるからな。

「じゃあ、僕もパスで……

 あと1日で街に付くし、明日サウナに入るよ。」

 まあ、お風呂苦手って話だったしな。

「私は、レイナ様に洗ってもらおうかな。」

 ベネットはちょっと興味があったらしく、《水操作》での洗浄を試したいようだ。

服を脱がなきゃいけないから、俺じゃできないもんな。

視線が通らないと水の操作はできないし。

「いいよ、それくらいだったら手間でもないし。じゃあ、トイレ行こうか?」

 そういうと、レイナはベネットを連れてトイレに入ってしまった。

そこそこ広いトイレだから二人で入っても問題ない。

余裕もたせておいて正解だったな。

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