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5-5 ワイバーンを解体してもらう。

今回は架空生物の解体作業です。

まだワイバーンなのでイメージしやすいですがそう言うのが難しい生物とかいますよね。

 流石に軽自動車レベルともなると解体も手間取るらしい。

前に渡していたホールディングバッグから解体道具を取り出して、どこから切るかというのを探っている。

ヨハンナが様子を探り、ハンスが切り、テリーとミリーが手伝うという感じだ。

 流石に無防備になるわけにはいかないので、ロイドは見張りといった感じがいつものことらしい。

今は、俺たちも見張りをしつつ見学させてもらっている。

「こりゃまた大物だな。頭蓋が割れてるから、そこから割いていくか。」

 そういうと長細い刃物を、額の傷から滑り込ませていく。

ある程度まで差し込んだ後、よっという掛け声をかけ、ハンスが刃物を上に動かす。

皮が浮き、突っ張った状態になる。

 だけどまだ、裂けるところまではいかない。

 そこに、テリーとミリーが体重を乗せ、左右から引っ張るとパリッと栗の皮がむけるような音とともに、背中からワイバーンの皮がむけた。

 すげぇ、こんなことできるんだな。

 そのあと、筋に沿って刃を入れていき、徐々に解体が進んでいく。

ここまでデカいとグロテスクさよりも、車の解体にも見えてしまう。

流石に、内臓が見えると生々しさが出てくるけど、まあ目を背けるほどじゃない。

「おや、これは……」

 ヨハンナが俺の方を向く。

何とはなしに想像がついた。

胃の中身があるんだろうな。

「見るよ。」

 言って後悔した。


 いや、本当言葉にするのも躊躇う惨状だった。

動物ってだけでも、やばいけど人だからな。

 ただ、これの自然の摂理だ。

 せめてもの手向けに埋葬してあげることになった。

深く地面を掘り、その中に洗った死体を横たえていく。

ごつごつとした石の混じっている土だから、結局は遺体を傷つけることになってしまうが、他に方法はない。

動物に食べさせるという埋葬方法があるとかネットで見た事もあるけど、ここでは埋めるのが一般的らしい。

花を添え、なるべくそっと埋めていく。

聖戦士であるベネットがウルズに祈りをささげ、胸に手を当てて首を垂れる。

これが祈りのスタイルらしい。

 装備品の大半が胃酸で溶かされズダぼろだ。

 だけど、中にはとけないものも多い。

武器の類や金属製の物品、丸呑みされているので大抵ワイバーンの糞を探るとこういうものが出てくるらしい。

 いや排泄物いじるのは汚いけど、こういう見返りがあるならやらない手はない。

特に鉄が取れる土地じゃないし、それがかつては誰かの持ち物だとしても死んでしまえば使い道はない。

ありがたく使わせてもらうのが流儀だ。

 他にも石の類も溶けない。単なる石なら価値はないが、宝石の類も飲み込んでいた。

誰かの装飾品なのかは分からないが、結構な量だ。

その中には、前にグラスコーに見せてもらった秘石も含まれている。

幸い、俺は秘石取り扱い免許を取得しているから売り買いは可能だ。

 もっとも、蛮地じゃ誰が取り締まるわけでもない。

関所の向こう側に持っていかなければ何も問題ないし、逆に言えばインベントリ経由で持ち込んでしまえば、密売も可能と言えば可能だ。

やる必要はないが。

 武器の中には、いくつか魔法の武器も含まれていた。

大半が+1程度のものだが、+2のフロストナイフは結構するな。

 ただ、みんな喜んでいいのか、迷ってる様子だ。

「えっと、こういう遺品って言うのは埋葬するものかな?」

 もし一人でこれを見つけたなら、俺は迷わず懐に入れる。

 もし知り合いなら、ためらいはあるけど。

見ず知らずの人のものだからなぁ。

「いや、食われた人間のものとも限らんしな。普通は、倒した人間のものだ。」

 ハンスの言葉にみんな頷くってことは、それが常識って事か。

 でも、みんななんか引っかかってるようにも見える。

 まあ、そんなに簡単に割り切れないか。

「分かった。俺が引き取るよ。金に換えたらみんなで分けよう。」

 金に換えてしまえば、そこら辺の引っ掛かりも薄れるだろう。

「ヒロシ、言っておくが倒したのは、ベネットさんとトーラス君、それにヒロシの3人だからな?そこは忘れるな……」

 気付かれたか。

ロイドは、そういう細かいところによく気付くな。

話の流れ的に、みんなで公平に分配ってことでお金を配れるかと思ったけど、それは許してくれないらしい。

「いや、解体してもらったし、洗浄の手伝いもしてもらったし。」

 一応手間賃を渡すのは理にかなっているのでは?

「いや、ヒロシ、それだとお二人の取り分が減るってことだぞ?」

 あ、そうか。ハンスの言うとおりだ。

「それに、肉や骨を分けて貰えたら、そっちの方が助かる。ワイバーンの肉はうまいし、骨は矢の素材になる。」

 確かに、骨を矢に使ってたな。いや、ボルトくらいいくらでも供給するんだけども。

「皮も使えたりするのかな?なんか、ワニの皮みたいだし。」

 確かゲーム的には価格設定されてはいなかった。

”鑑定”してみればわかるか。

「確かに丈夫だし使いやすい素材だな。結構な量があるから、処理をするのも大変だし、それは分けてもらってもいいか?」

 まだなめしてもいないので、価格は出てこない。

下手すりゃゴミって事か。

「お願いするよ。その分はちゃんと受け取って欲しい。」

 他に使えるものはあるだろうか?

「尻尾の先にある毒は、麻酔に使えるんだよ。ヒロシ、これはもらってもいいかい?」

 確かに麻痺毒だから、適切に処理すれば麻酔にも使えるか。

「もちろん、ヨハンナが良ければ貰ってくれ。」

 変な奴に渡すよりよっぽど安心できる。

なんか、トーラスとテリーが話してるな。

「どうしたんだ?二人とも。」

 そう声をかけても、何でもないと二人そろって言ってくる。

何だろう?

ちょいちょいと手招きされた。

「ワイバーン肉は、硬いらしいよ?」

 トーラスが耳元でささやいてくる。

 そ、そうなのか。

 テリーも入れ替わりに耳元で囁く。

「味は肉食のわりに悪くないけど、嚙み切れない。」

 テリーの話が本当だとするなら、飲み込むしかないのか。

 うーん、ちょっと考えないとな。

「何、男同士でこそこそしてんの?」

「いや、何でもない。」

 ミリーは何でもおいしく食べるたちなので、あまりこういう話はあまりしたくない。

 しかし、おいしく食べる方法があるかもしれない。

うまくいくか分からないけど、試してみよう。


 風が強くなったので、休憩がてらコンテナハウスに戻りお茶にする。

野草茶が凍えた体に沁みる。

 素材に関しては、インベントリにしまい、汚れもお湯で洗い流したから、清潔だ。

防寒着は撥水加工してあるから、そのまま全身洗浄しても問題なかった。

くすぐったがられたが。

 で、ちょっとワイバーンの取り分はもめたけど装備品は3人で分け、肉の大半と骨などの素材はハンスたちに、残りを3人で分けるという話で落ち着いた。

「でも、ワイバーンがここまで活用できるとは思わなかったわ。」

 ちょっとグロテスクすぎたのか、ベネットはややげんなりしつつも、そう切り出した。

確かに割とスプラッタホラーだったしな。

そのうえ人を食った化け物を食うって話になるんだから、そういう感想にもなるか。

 でもよくよく考えてみると、魚をよく食う日本人なんかは常日頃それをやってるわけだから今更だよなという気もする。

こっちの人には魚はなじみはないだろうけど、たぶんキャラバンのみんなも俺の考えとそう変わらないだろう。

「まあ、何でも利用しないと、生きていけない環境だからね。まあ、お嬢さんにはきつかったかな。」

 ハンスは気遣ってそういうが、まあ、ベネットも傭兵だし、スプラッタホラーはそこまで耐性が無いわけでもない気もする。

 とはいえ、人によってこれは平気、これは駄目って言うのもあるか。

「一応、傭兵ですから、ある程度慣れてるつもりだったんですけどね。」

 ベネットが少し暑そうに顔を仰いでる。

流石に8人も詰め込まれると熱いかな。俺も上着を脱いでいても若干汗ばんでいる。

「んー、熱いから私、羊たち見てくる。」

「僕もちょっと見回り。」

 テリーとミリーたちは、上着を着て出て行ってしまった。

ちゃっかりお菓子をポッケにしまって出ていったのは何とも。

 しかし、換気はちゃんとできてるはずだから、窒息したわけじゃないんだろうけど、これはもう早々にもう一つのコンテナハウス出すべきだな。

ちょっと部屋を冷やすついでにあれも出すか。

「ごめん、風呂桶持ってきてくれるかな?」

 部屋の中に入れるにはちょっと窮屈かもしれないけど、直接でろんと出したくはない。

 風呂桶が解けるとかいうことは……もしそうなったら、すぐ発注しよう……

 到着した風呂桶にスノーウーズを入れる。

雪をまとってないと半透明な見た目で、ゼリーみたいにも見えるな。

「おや、スノーウーズだね。ここらじゃ見かけないけど、昔襲われたことがあるよ。」

 ヨハンナは楽しそうに笑う。

 いや、笑い話じゃないでしょ。

「あー、厄介だったな。こいつは切っても切っても死なないし、叩くと増えるし、手こずった記憶がある。」

 ハンスも経験があるらしく顔をしかめてる。

「まあ、襲われたらカイロを投げるといいよ。こいつらは熱を食べるウーズだからね。そっちの方に行ってくれるから、その間に逃げるといい。」

 熱を食べるってなんだ。

 でも、その情報はありがたいな。

カイロくらいならみんな持ってるだろうし、攻撃するより逃げた方が得策だ。

「熱を餌にするって言うことは、死んだらもう冷えないんじゃ?」

 ベネットが不思議そうに聞いてくる。

確かに今も冷気を放ってきていた。

風呂桶のおかげか、寒気が一気に広がるわけじゃないが、部屋の温度はだいぶ下がった。

とっととインベントリに収めよう。

「あぁ、そうだねぇ。死んでも冷気を発してくるが、小さい奴でも1月くらいは冷気を放ってくるよ。そこからだんだん、弱くなっていって、最後はガラスみたいにぱりんと割れるのさ。」

 想像もつかないけど、ヨハンナの言う通りなら、保冷剤がわりにできそうだな。

いや、箱にうまい事納めたら冷蔵庫にできそうだ。

それくらい冷たい。

 風呂桶を戻し、部屋に戻ってきたらスノーウーズの話が続いていた。

「じゃあ、割れた破片はお湯に入れると柔らかくなるんですか?」

「そうそう、それを顔に貼っておくとお肌がすべすべになる。まあ、ウーズの皮はどれもそういう使い方ができるよ?まあ、中には酸を持つ奴もいるから注意は必要だね。」

 なんか高分子ポリマーみたいだな。

「でも、剣でずたずたにしちゃったから、使えないかも。」

「大丈夫、くっつけて、熱を加えながら力を加えればくっつくよ。まあ、熱くしすぎちゃうと元に戻らなくなっちゃうんだけどねぇ。まあ、加減はちょっと難しいね。」

 顔に乗せるくらいなら、大した大きさもいらないだろうし、人間大のやつだから平気だと思うけどね。

「あの大きさだと一年は冷気が抜けないんじゃない?」

 俺は口を挟んでみた。

「そうだね。1年かそこらは取れないかもしれないけど、ちょっと切り分けてお湯に浸せば冷気は抜けるよ。お湯の方は凍り付いちゃうけどねぇ。」

 なんだ、その特性は……便利すぎだろう……

「じゃあ、氷が作り放題だから、暑い日は涼み放題だね。」

 まあ、こっちで夏を過ごしてないから、涼まないといけないほど暑くなるかは分からないけども。

「それは、便利ね。」

 ベネットは気づかなかったという顔をしている。

「確かに、そりゃ便利だね。」

 ほけーっと、ヨハンナも言ってるけど、これの利用法としてはありみたいだなぁ。

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