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5-4 技を伝授してもらう。

いわゆる勁という技です。

あくまでもフィクションの中なのでオーバーな表現をしてます。

大目に見ていただければ幸いです。

「大丈夫だ、ヒロシ。これは人を殺す技じゃない。まあ、しくじっても軽く肋骨が折れる程度で済むはずだ。」

 つまり、槍の先がなくても人を殺せる技はあるって事か。

思わず、俺は唾を飲み込む。

「今回は正面から行く。まっすぐ前から。だからしっかり防御してくれ。胸のあたりだ。」

 そういうと初めてハンスは槍を構えた。

これは、ここから攻撃するぞという合図だ。

いわゆる弟子に対して、技をかける演武みたいなもんだろう。

 よくそれを見て、実戦じゃそんなことできないという人もいるが当たり前だ。

あれは、あくまでも分かり易くどういう技なのかを伝えるためのものであって、それをそのまま実戦で使うわけじゃない。

ハンスのもそれだ。

何度も、ゆっくりここに行くぞと合図を送ってくれている。

どの程度の速度か分からないが、俺は防御できるように心構えを作る。

 すっと速度が変わった。

早くはない、さっきのハンスの槍さばきからすれば間違いなくこれの数倍の速度は出せるはずだ。

だから、俺はそれに合わせて防御した。

 そして、俺は空を見ている。

途中経過が無さ過ぎてわからないけど、感覚としてはそんなもんだ。

「吹き飛ば、された?」

 尻もちを搗き、後ろに転んでしまっていた。

一回転位しただろうか?

距離にして3mほど飛ばされている。

格闘漫画じゃないんだぞ?なんだこれ?

俺は、動転しながら体を起こす。

「どうだ、ヒロシ出来そうか?」

 できそうかじゃない、何がどうなっているのかさっぱりだ。

「む、無理。」

 そう答えるとハンスは困ったような顔をする。

「好きな人を守りたいんだろ?ならこれくらいできて、損はないと思うぞ?」

 確かに、ハンスの言う通りこれが出来ればいろいろと便利だ。

 だけど、とてもできる気がしない。

「は、ハンス……今のは、もしかして何処に当てても同じことが起こる?……」

 ハンスが頷く。

「難しくはない。基本さえわかれば、手や足を狙っても出せる。腰より下なら前に倒れるが、その場合は吹き飛ばすのは難しいな。」

 そんなことあるんだろうか?

 いや、やられたんだからできるのは確かなんだろうけども。

 ふと俺に思い当たる技があった。

いわゆる寸勁、通しという奴だ。

力を内部ではなくて、外側に放射する形で与えることによって相手の体勢を崩せるという奴だったけど、それを槍でやったということだろうか。

「ハンス、もう一度頼むよ。できれば基本の動きから、それと何度か打ち込んで欲しい。」

 出来の悪い俺じゃ理屈をこねまわしてたらいつまでたってもできない。

幸い優秀な能力値がもらえてるんだから、体で覚えよう。


 それから2時間みっちり教え込んでもらった。

何回か肋骨や腕が折れたけど、こういう時に《治癒》のポーションがあるというのは非常に助かる。

何か月も治療にかけないといけないのを一瞬で直せるんだから。

 ただ、痛いのは痛い。めちゃくちゃ痛い。

体が痛いのはもちろんだが、懐的にも痛い。1つ5万円だもんなぁ。

 いや、治療費を考えれば安いものかもしれないけども。

結局2時間かけて、ハンスを吹き飛ばせたのは一回こっきりだ。

 もちろん、ハンスは俺みたいに転がったりはしなかった。

「やはり、ヒロシは筋がいいな。練習を続ければ、吹き飛ばす距離も増えるし、倒す姿勢や飛ばす距離の調整もできるようになる。すぐに自在に使いこなせるようになるさ。」

 なんか、ハンスは上機嫌だけど、とてもそんな真似ができると思えない。

何より、くたくただ。

へたり込んでいる俺の横にハンスが腰かける。

「なあ、ヒロシ、俺はお前に血なまぐさいことをさせたくないって言ったことがあったよな。」

 確かに言われた、確かアジームとローフォンのコンビに追っかけまわされてた時だったかな。

「それでも、世の中綺麗ごとばかりで済むわけじゃない。ときには手を汚さなくちゃいけない時もある。

 だから、ヒロシがワイバーンを倒したって聞いたときは驚きはしたけど、ヒロシならその程度できるだろうとも思っていた。」

 買いかぶりだ。

一応説明したけど、俺一人で倒せたわけじゃない。

「俺はそんなに強くないよ。何とか生き延びてるだけだよ。」

 俺の言葉にハンスは笑顔を見せる。

「それがうれしいんだ。ヒロシは何も変わってなかった。

 もしかしたら、強くなりすぎてなんでも奪えばいいみたいになってるんじゃないかと不安にも思ってたんだ。

 お前は、お前自身を過小評価しすぎだ。」

 そうだろうか?

 正直、自分を過大評価している気がするんだけどな。

うまくやれると思って、何度も失敗している。

 まあでも、力づくで奪ってやれとかいう破れかぶれには、何とかならずに済んではいるのも確かだ。

運がいいんだろうな。

「俺の力を買ってくれてるのは有難いけど……」

 なんか、恥ずかしくなった。

自分の能力を隠して調子に乗ってるやつみたいだ。

俺はいつだって全力だ。

できることをやった上で、これくらいしかできない。

「お前にとっては大したことじゃないかもしれないけど、俺たちは確実にお前に助けられた。

 水を出すのは、そりゃあたり一面を火の海にするような力と比べたら地味かもしれない。

 だけど、荒れ地で暮らす俺たちには、そんな力よりよっぽど手助けになったんだ。

 暖かい湯がどれほど貴重なのかを考えれば、ここじゃ人を殺してでも欲しい力だ。」

 確かに、燃料を確保するのも結構苦労する。

枯れ木が多少あっても大きな樹木は立たない土地だ。枝一つでも探すのは苦労する。

「そのうえ、どこからともなく麦まで用意してくれた。おかげで俺たちはいくつも争いから身をひそめることができてたんだ。」

 それは初耳だった。

俺の知らない間にそんなことがあったんだな。

具体的には水を用意したり、お湯を用意しただけで回避できる争いって言うのがあまり想像できない。

麦にしても、いまいちピンとこない。

「こういっちゃなんだが、ヒロシは神様がくれた贈り物、というか神様そのものって言ってもいい。」

 それはいくら何でも大袈裟が過ぎる。

「やめてくれよ。ハンスが助けてくれなかったら、俺はあそこで干からびてた。」

 実際、俺は自分の能力を調べる術すらなかった。

まともに荒野を踏破する力もなかった。

「あぁ、俺とお前は仲間だ。だから、お前が俺たちにくれるものは何でも受け取る。」

 そう言ってくれると助かる。

「お前がやれと言ったことはなんだってしてやる。」

 それは、困る。

前にも言われたけど、本当に困る。

「いや、前にも言ったけど俺がとんでもないこと言ったらどうするんだよ?」

 ハンスは真剣な顔になる。

「もちろん、友達だからな。悪いことをしそうになったら止めるさ。それでも、お前がやるというなら地獄の底まで付き合う。」

 どう答えたものだろう。

ハンスの真剣な気持ちにどう答えればいいだろう。

酔っていた時と違い、今はハンスも素面だ。

酔った勢いでとかでは片付けられない。

「あくまでも、俺はそうするってだけさ。だけどみんなそう思ってると思うぞ?だからヒロシ、何でも言ってくれ。」

 俺はずるい男だ。

ハンスの言葉がうれしくて仕方ない半面、責任は負いたくないと思っている。

「分かった、何かするときには相談するよ。俺には判断がつかないようなことも、これからいっぱいあるだろうし。その時は相談に乗ってよ。」

 そうやって言い逃れするのが精いっぱいだった。


 お昼に全員が戻ってきたところで、俺は軽く済ませられるサンドイッチを用意して、話したいことがあるから食いながら聞いてくれと言った。

 まあ、あくまでもサンドイッチじゃなくて、パンで具材を挟んだものなんだが、俺がサンドイッチと言えばそういう風に伝わるから、いちいち気にしなくてもいいんだけど。

ちょっと、何か略称が欲しい。

 ベネットもトーラスもいる。

改めて、俺の能力について洗いざらいしゃべった。

もう、変に隠し事をしない方がいいと思ったからだ。

 とはいえ、まあ、ある程度は予測はついていたらしいので、大した反応はない。

マージンを取って、裏で不正蓄財してることも話してみたが、その、うん反応がない。

「タオルってそんなに安いんだ。で、金貨1枚で売れるならすごく儲かるね。」

 ミリーなんかにっこにこだ。

「グラスコーには内緒な?あいつは、文句は言わないだろうけど、やばいことを始めそうだから。」

 下手に話せば、火薬や武器を平気で売りさばきそうだ。

値下げ交渉もきつくなったら、マージンも稼げなくなる。

「旦那には悪いが、俺たちだけの秘密だな。」

 ロイドも同意してくれている。

 まあ、どう考えてもやばい能力だからな。

「まあ、いろいろできるように見えて、実はいろいろと制限があるんだ。

 本当なら、みんなに俺のインベントリを共有してもらいたいところだけど、数は8つまでしかない。

 ちなみに、はい。」

 出入り口の設定したバッグをトーラスとベネットにも渡す。

「ヒロシ、私たちに渡すのは……」

「ベネットはともかく、僕は単なる傭兵だよ?」

 今更逃げられると思うなよ。

ここまでしゃべったら身内も同然だ。

「大丈夫、本人しかつながらないようになってるから。他の人間が開けたところで単なるバッグです。」

 そういっても、二人は困惑している様子だ。

「連絡手段にもなるし、一応俺以外には探られることはないですよ。とはいえ、やばいもの詰め込むのは勘弁してくださいね。」

 ベネットは渋々といった様子ではあるけど受け入れてくれた様子だ。

「正直、僕はまだ君の専属ってわけじゃない。場合によれば敵対するかもしれないよ?」

 まあ、所属している暁の盾の意向も無視できないし、依頼によっては利害が対立することがあるかもしれない。

 でも、それはベネットも同じだ。

「キャラバンのみんなと敵対しそうになったら、こっそり見逃してほしいかな。それ以外は、まあ仕方ないと思うよ。

 それに、ライフル渡してるんだから今更でしょう?」

 改めて口にしたことで、トーラスも何とか飲み込んでくれた様子だ。

「まあ、なるべく二人とも専属で雇えるように頑張りまーす。誰か、領地くれないかなぁ。」

 まあ、そんなもの一朝一夕で手に入るはずもない。

「領地貰うなら、広い森があるところがいいなぁ。湖の近くとか。」

 ミリーがとんでもないことを口にする。そんな庭付き一戸建てを夢見る奥様みたいに気軽に言うセリフじゃない。

「申し訳ないけど、粗末なコンテナハウスでしばらくは我慢してくれ。何かと差し入れするから。」

 夢は広がるが宝くじが当たったらみたいな話だな。

「まあ、地面の下から金でも出てきてくれれば、ありがたいがな。午後は、例の道具の使い方を教えてもらえるか?」

 手回し式のボーリングマシンについて、現物を出して説明しないとな。

「あー、その前に聞きたいことがあったんだ。ワイバーンの死体って解体できる?」

 まだ現状としては、余裕があるとはいえ死体で特別枠を潰してるのはちょっともったいない気がする。

 いや、別に他に入れるものがあるわけでもないんだけども。

「そうか、死体も持ち歩けるのか。できなくもないが、他に解体が必要なものがあれば言ってくれ。」

 ハンスからすれば手慣れたものなのかな?

キャラバンでの解体風景って言うのは見たことがなかった。

ちょっと見学させてほいしい。

他に解体して欲しいというわけじゃないけど、スノーウーズについて教えてもらいたい。

 これゲームとしては単なる敵だから、それ以外の情報って言うのがよくわからない。

成分表を見る限り、とてもじゃないけど、あんな強烈な冷気を放つ仕組みには思えなかったからだ。

 ハンスたちが知っているかどうかは分からないけど見せてみたい。

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