4-27 会えないかもなんて思ってなかった。
テンポが遅くて申し訳ありません。
里帰りの下りだけで1章費やしてたどり着いたところまでというのはちょっとスローペース過ぎるかもしれないですね。
ただ、これでも結構ハイペースだと思うんですよ。
3年、4年帰れないとか、そう言うのが普通だと思いますしね。
ともかく、これからも気長にお付き合いください。
次回は新章に切り替わります。
撤収も無事終わり、日が傾いたので、早々にコンテナハウスで休むことになった。
買ったソファやテーブルも置いて、ちょっとは部屋らしくなっただろうか?
出入り口には、焼いた砂を敷き詰められる箱を設置するようにしてある。
とりあえず、それで足を綺麗にしてから入ってもらう形にした。
とはいえ疲れた。
掃除機の説明とかそういう諸々のことはやめて、ともかくソファで寝っ転がろう。
二人掛けのソファにトーラスと俺が、ビーズクッションを置いた籠みたいなソファにベネットが横になる。
「死ぬかと思った。」
俺がぼそりというと、くすくすと笑い声が聞こえる。
「何がおかしいです?」
割と本気で怖かったんだけども。
「だって、あれだけ無謀な作戦なのに平然とやってるから、余裕なのかと思ってた。」
まあ、おとりになること自体は覚悟してたし、平然としてたと思われてたなら予定通りの行動が取れたって事だろう。
「余裕なわけないでしょ。あんなでっかい車みたいなもんが空を飛んできたんだから、怖いに決まってる。」
ライフルで撃ち落とせるものだと思ってたから正直焦ってた。
「目を狙ってたんだけどね。さすがにあの大きさでも無理だったよ。」
トーラスが申し訳なく言ってるがとんでもないこと言ってるな。
あれ、目を狙ってたのか。
確かに片目がつぶれていてくれたおかげで、初めの連続攻撃が若干緩んでいたような気もする。
意外と戦闘状況を覚えてるもんだな。
というか、見えてる自分に驚きだ。
しかし、目を狙うというのは有効な戦術だ。
前に、LEDランタンで目つぶしみたいなこともしたこともあった。
もしかしたら、閃光手榴弾くらいは買っておいてもいいかもしれないな。
売ってるもんだろうか?
まあ、バイザーがないと自分たちも目をやられるから、使う時は注意しておかないとな。
「とりあえず夕飯にしますか?リクエストとかあります?」
俺は、ソファから何とか体を起こす。
トーラスも同様に起き上がったけど、ベネットだけはソファに沈んだままだ。
「これすっごく気持ちいい。」
まあ、気持ちは分かる。
「じゃあ、お食事をお口元まで運びましょうか?おひい様。」
ちょっとやってみたい。ベネットがどんな反応するのか見てみたい気がする。
「ちょ、ちょっと起き上がらないとは言ってないでしょ?もう、それはお姫様じゃなくて、おばあちゃんよ。」
慌てた様子で起き上がる。
まあ、それはそれでいいかもな。
食事をとり、落ち着いたところでレベルアップの確認をした。
お知らせしてくれるのはありがたいけど、緊急時だと確認する余裕ないからな。
扱える呪文のレベルが1段階上がってくれたので、先生に呪文を教えてもらわないと。
それに、初級魔法の回数も増えている。
水を出せる量が増えてくれるのはありがたい。
そして、槍の才能が一段階上がった。
前回上がってなかったので何らかの法則があるんだろうけど、5レベルで2だと10にするには大分道のりは長そうだ。
いまいちこれの効果がよくわからない。
努力して槍の扱いに慣れてきた気はするんだけども、そこまで劇的に変化したかと言われると微妙だ。
レベルアップ後に槍を扱ってないので、レベルアップ後に何かの能力が使えるようになっててもまだ分からない。
能力値は筋力が1点上がってたのは、不思議な感じがした。
ゲームなら任意で上げられるんだけどな。
筋力アップの訓練を続けていたってわけでもないし、まあ1点の差は微妙なものだからこれも実感が伴わないなぁ。
確実に効果はあるものだとは思うけども。
とりあえず、思い思いに装備の手入れやら、ストレッチやらで過ごして床に就いた。
ベネットはもらった漫画が面白いのか、読みふけっている。
もちろん、やることはやった後なので、そこはレイナと違って健全だな。
まあ、旅はおおむね順調。
うまくすれば、明日にでもハンスのもとにたどり着けるかもしれない。
そう思ってた時期が俺にもありました。
グラスコーの話じゃ、適当に水場近くをうろついていればロイドたちが迎えに来てくれるとか言ってたんだが、一向に気配がない。
そもそも、来訪を告げる手段もないから探してくれてるとは限らない。
当たり前と言えば当たり前だ。
それでも、水場に一切立ち寄らないってことは無いから、知ってる水場を回っていればそのうち落ち合うだろうと軽く見ていた。
トランシーバーを渡せてればなとも思ったけど、その渡すタイミングが今なんだよなぁ。
それとも、俺に会わないように避けられてる可能性でもあるかな。
仕方がないので、水場に立ち寄り利用しているキャラバンに声をかけたんだが、ハンスの名を出すだけで嫌悪感を示す人たちがいたりするし。
本当に参った。
下手に、ベネットやトーラスを連れて行くわけにもいかないので一人で立ち寄ったんだけど、やはり出で立ちが蛮地にふさわしくない格好だと警戒される。
2回目以降は特に加工されてない皮をかぶって行ったけど、1回目の時なんか剣を突き付けられたしな。
「それで、その人たちは誰かしら?」
ベネットの言葉で俺は、振り向く。
事前にトランシーバーで誰かが追けていることは二人に教えてもらっていたけど、まあ人相の悪い3人組だ。
途中で襲われるようだったら、トーラスに撃っていいとは言ったから命拾いしたね。
「あぁ、彼らは危険だからって俺の身を守ってくれてたんですよ。ね、そうですよね?」
数的有利はこの時点で失われたわけだから、ここからは穏便に済ませられる。
「お、おう。そ……そうだな……」
訳の分からない銃を抱えている男と、馬鹿でかい剣を携えてる女。
俺一人なら攫ってしまえると思ってたところに、二人が殺気を出して立ってたら、そりゃ及び腰にもなるよな。
「どうも、ありがとうございました。お礼と言っては何ですが……」
そういいながら、小さめの籠に収めたリンゴを渡してやる。
友好の証だ。
すごすごと立ち去っていく姿を俺たちは見送った。
当然ながら、そのあと襲撃してこないか鑑定の対象として追尾してたけど、そういう様子はない。
能力なんかも大したこともないし、返り討ちにはできそうだ。
なんか俺、嫌な性格だな。警戒しなくちゃいけないのも事実としてあるわけで、仕方ないと言えば仕方ないけども。
「ねえ、ヒロシ。聞いてもいい?」
ベネットが少し心配した様子で聞いてくる。
結局今日はハンスたちに合えなかった。
コンテナハウスで問い詰められるだろうなということは覚悟していたので、神妙な顔になってしまう。
一応食事が終わるまで待ってくれたんだから有情だよな。
「ごめん、もっと簡単に会えると思ってた。」
素直に謝ろう。
最悪、明日までに会えなかったら帰るしかない。
「そこはいいわ。ヒロシの気が済むようにしてくれればいい。」
ベネットがそういうとトーラスも頷いてくれた。
なんかありがたくて涙が出てくる。
いや、実際には泣かないけども。
「ただ、気になるのは一人で行動することよ。確かにトーラスの腕なら遠くからでもサポートできるし、平気なのかもしれないけど……」
場合によれば、確かに危険ではあるよな。
複数人が身を潜めて多方面から攻撃を仕掛けられてきたら、一人ではさばききれない。
いくらスナイパーのサポートがあるからと言っても、せめて二人でないと身を守り切れないだろう。
「私も同じ格好をするし、武器もヒロシに預けるわ。だから、同行させて。」
いや、それは。
想定はしておきながらうろたえるのもなんだけど、改めて考えると虫が良すぎる。
申し出はありがたいけど、いざというとき責任が持てない。
「私は、ヒロシの護衛なの。だから、私があなたを守れない状況は受け入れがたい。」
ベネットの真剣な様子に俺の気持ちも揺れ動く。
多分、二人なら大丈夫かもしれない。
勝手な思い込みかもしれないし、いざとなってみなければ分からないこともある。
とはいえ、ベネットの申し込みを断りづらいのも確かだ。
「分かった。最悪、剣を抜かれても振り上げるまでは手を出さないと誓ってくれるなら。」
それはそれで酷な条件だ。
剣を抜いた時点で切り結んだところで普通はおかしくない。
それを極限まで待てって言うんだから、無茶苦茶だろう。
「いいわ。私もそのくらいで後れを取らない。」
確かな自信もあるのだろうし、拒否する理由はなくなった。
「ありがとうベネット。」
次の日もキャラバンの影を追って、水場を巡る。
少し探索範囲を広げて、双眼鏡を覗いてみても、それらしい人影は見えない。
もう会えないんだろうか?
そんな悲観的な気持ちになってきてしまう。
ドローンが落されていなければあるいは見つけられたかもしれない。
だが、あれを飛ばすことでワイバーンに狙われた可能性もある。
あれに《透明化》や《静寂》の呪文をかけておくべきだったな。
もしくは、《魔法の目》を習得するまでレベルアップをしておくべきだった。
反省すべき点はいろいろある。
だけど、今更遅い。
夕暮れの気配がする。
最後の望みと思って、俺は初めてこの地に降り立った場所へ向かう。
目線の先に人がいるのが分かる。
俺は逸る気持ちを抑えて、双眼鏡を覗いた。
間違いない、ハンスたちだ。
俺は思わず駆け出してしまった。
本当はベネットの剣を預かるとかそういう約束をしていたんだが、そんなことはすっかり忘れてしまっている。
でこぼこ道がもどかしい。
あのころと比べれば、足腰はしっかりしたと思う。
それでもうまく走れない。
「ハンスー!!」
俺の声にびっくりした様子で振り返る。
「ヒロシ!!お前……」
言葉も聞かず俺は抱き着いた。
男に抱き着かれても誰も喜ばないとは思うけど、そんなこと考える余裕がなかった。
「ハンス、ただいま。」
何も泣くことはないはずだけど、涙が止まらない。
「おかえり、ヒロシ。」
いろいろ言いたかっただろうけど、それでもハンスは俺を受け入れてくれた。
この世界に初めて会った時と同じように俺を受け入れてくれた。
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