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4-23 こんなタイミングで愛の告白とか。

告白したはいいけれど、宙ぶらりんの中途半端な状況。

こういうのが好きです。

ただ周りで見せられたらリア充爆発しろって感じるのは自然なことだと思います。

 前回アルノー村を訪れたのは、人目に付かないルートを探していたというのもある。

結果としては、冬場であればほとんど森の中に人は足を踏み入れないことが分かった。

 というか、あんな化け物がうろちょろしてるなら村の外には出ないだろうな。

なるべく雪かきしてああいうのがいたら気付けるように準備するくらいしか対策が思いつかない。

 実際、あいつは俊敏に動けるわけではないようなので、先に気づければ逃げることは可能だろう。

というわけで森の中を進むわけだけど、丁度開けた先にジョシュの師匠であるレイナの邸宅がある。

邸宅と言っても立派じゃない。どう考えても潰れかけの山小屋って感じだが。

「いったん休憩を挟みます。あのうちの前で止まりましょう。」

 移動中も通話ができるようにインカムも用意した。

二人にも渡して、使用感を確かめてもらってるのでちゃんと聞こえると思う。

「了解。あそこには誰が住んでるの?見せても平気な人?」

 ベネットはちょっとした懸念を口にした。

「大丈夫、こういうのには慣れている人だから。ジョシュのお師匠だよ。」

 何故慣れているのかは分からないかもしれないが一応誰だかは話しておく。

「じゃあ、魔法使いか。というか、あの家じゃ魔女だよね。」

 トーラスが冗談めかしながら、スノーモービルから下りる。

ちゃんと停車したら、鍵を回してエンジンも止めてくれてるから、もう完全になれた感じだな。

インカムを外して、首にかけてベネットが俺のところにやってくる。

「日も暮れてきたし、あそこのお宅に泊めてもらうの?」

 俺もインカムを外して首にかける。

「いや、ちょっと土地を借りるだけで、泊めてもらうわけじゃないですよ。」

 ふと家の方を見ると、扉を半開きにしてレイナがこちらをのぞき込んでる。

ちょっと変なものを見るような顔だが、まあそりゃ変だよな。

俺は、頭を下げた。


「あー、えっとレイナさん。突然大勢で押しかけてすいませんでした。

 ちょっとお話良いでしょうか?」

 なんか滅茶苦茶警戒されてるみたいで、なんと言ったものか。

扉の前まで行って挨拶をしても返事がない。

 もしかして、怒ってるのかな?懐柔しておかないと。

「ちょっと所用がありまして、旅の途中なんです。二人は護衛をしてくれてるベネットと、トーラスです。」

 あれ?

なんか、ベネットの表情が険しいな。

「何の用かな?別に泊めるくらいなら構わないけど……」

 レイナは警戒というより怯えてる感じがするな。

「いえ、ちょっと土地をお借りしたいただければ、助かるんですが。これは、おみやげです。よろしければ召し上がってください。」

 売買で取り寄せたお菓子の詰め合わせやハロルドが作ってくれたマドレーヌを入れておいた。

「あ、ありがとう。土地くらいならいくらでも。」

 レイナが礼を言うと、ずいっとベネットが割り込んできた。

と、突然どうした。

「ビシャバール侯爵家ご令嬢のレイナ様とお見受けします。ご挨拶遅れて申し訳ありません。」

 いわゆるカテーシーという独特なお辞儀をしながら、ベネットは挨拶を始めた。

しかし、こっちの世界でもカテーシーって言うお辞儀の仕方があるのは初めて知った。

もしかしたら、名前は違うのかもしれないし、細かな違いがあるのかもしれないが正直初めてなので戸惑いしかない。

 確かに、レイナのご身分からすればそれくらいの挨拶が必要なのかな?

 しかし、レイナってのは有名人だったんだなぁ。

「い、いや、そういう大層なものじゃないから。令嬢って言っても、そんな年齢じゃないし。」

 まあ、確かに110歳だから普通はおばあちゃんだよな。いや、さすがにそんな年齢のおばあちゃん、日本でもそう何人もいない。

「いえ、さすが大魔女と称えられたお方です。とても若々しいお姿で羨ましいですわ。」

 大魔女というのがレイナの二つ名なのかな?

 しかし、ちょっと若々しいって言葉にとげがありませんかねぇ、ベネットさん。

レイナが怯えてるのはこれが原因か。

「私も恥ずかしながら最近は銀髪の剣姫と呼ばれておりますけれど、レイナ様のご高名には及びません。」

 にっこり笑ってるけど、これは明らかに敵意を持った笑顔だ。

トーラスは、危ないものを感じ取ってるのか遠巻きに見ている。

 しかし、わざわざそう呼ばれるのは嫌だと言ってた銀髪の剣姫の名前を出す必要はどこにあるんだ?

対抗心か?

「ちなみにヒロシさんとは、どんなご関係なんでしょう?」

 うわぁ……なに、それが原因?……いや、まじで勘弁してくれ……

いや、うん。

嬉しい半面、滅茶苦茶困る。

「ベネットさん、少しこっちに来てください。」

 俺は無理やりベネットの手を引っ張り距離を離そうとする。

若干もみ合いになるが、どうにかこうにか引き離すことに成功する。

見れば、へなへなとレイナは玄関でへたり込んでいた。

どう考えても、オタク女子にはつらい状況だよな。

「まさか、ジョシュ君のお師匠が、大魔女だったなんてね。」

 下手すれば唾を吐き捨てるような勢いでベネットは言い放つ。

大魔女って言うのは、敬称というよりは侮蔑した言い方なのかな?

「大魔女って言うのは、彼女が何かやったんですか?」

 そう聞くと、ベネットは俺を睨んでくる。

けど、すぐに目をそらす。なんか拗ねてるみたいだ。

「いいえ、カナエの血脈ですもの。功績はあっても、悪名はないわ。」

 まあ、単純に有名人ってことだよな。

「さっき、彼女との関係を聞かれてましたけど……」

 今度は怯えたような表情になる。

「単なる客と売り手の関係ですよ。来訪者の孫ってことで、文化的なつながりは多少ありますけど、決して男女の関係はありません。」

 はっきり、きっぱりという。

「嘘、ついてない?」

 じっと縋るような眼で、俺を見てくる。

「俺が女性として愛してるのはベネットさんだけですよ。」

 手を取り、彼女と目を合わせる。

怯えたようにベネットは目をそらす。

曖昧な態度はよくない。

俺は彼女を抱きしめる。

「知ってほしくないことや秘密にしてることは、すぐ見破るのに。分かって欲しいことは伝わらないのはずるいでしょ。」

 微かに震える彼女の体をぎゅっと抱きしめる。

「返事は、全部が終わった後でいいから。だから……愛してるよベネット。」

 もがいて抜け出そうとかされてないから、これでいいんだよな。

すぐに受け入れてくれないのは分かってる。

彼女には彼女の都合、彼女が折り合いをつけないといけないことがあるのは承知の上だ。

 その上で、俺に好意を抱いてくれたのが分かった以上、それに応えないわけにはいかない。

今まで勘違いだとか、思い過ごしだとか誤魔化してきたけど、はっきり分かった。

彼女も、俺も、ちゃんと恋愛感情を抱いてる。


 どれくらい抱きしめてただろう。

いつの間にか抱きしめ返されてはいたけど、だんだん気まずくなる。

なんせ、レイナをダシに告白したようなもんだ。

いくら人がいるとはいえ、無警戒に抱きしめ合ってるわけにもいかない。

 思いっきりレイナには、爆発しろリア充って顔をされている。

 まあ、端から見ればリア充に見えるかもしれないけど、そんな単純な状況じゃないんだよなぁ。

そっと力を緩めると、そそくさと二人して、お互い距離を離してしまった。

ベネットはきゅっと俺の裾を握ってくれているけど。

トーラスは、おおむね祝福してくれている様子なので、そこは一安心だ。

これで全員から冷たい視線を送られてたらやってられない。

「失礼しました。彼女も落ち着いたみたいなので……」

 そういうと、ベネットは頭を下げる。

「無礼なふるまいをお許しください。少し、私が先走ってしまったようで、申し開きもございません。」

 恥ずかしいのか、少し顔が赤い。

「来訪者との恋愛はあんまりお勧めしないよ?絶対後悔するから。」

 特に、それで気分を害したわけでもなかったのか興味がないのか、忠告めいたことをレイナは口にした。

グラスコーもよく後悔するとは言うな。

意味合いは違うだろうけども。

 とはいえ、後悔ってのは先に立つなら苦労はしない。

「まあ、私は部外者だから、口出しする権利はないし、好きにすればいいけどさ。」

 レイナはやれやれといった様子だ。

「ところで、泊めてくれって事じゃないなら、どうするって言うの?むしろそっちの方が興味があるんだけど?」

 レイナの言葉にトーラスも同意見のようだ。

「僕も、聞いておきたいところだよ。テントを立てるというだけなら泊めてもらった方がいいと思うし。」

 まあ、当然そうだよな。

この寒空の下、目の前に家があるのにもかかわらず、テントを立てますって正気を疑う。

「家を建てます。」

 ちょっと驚かせてやろう。

気分を変えないとちょっとまずい気もするし。

「あぁ、《待避所》の呪文ね。」

 レイナは呪文で何とかするものだと理解したのか、ちょっと冷めた反応をしている。

確かに、呪文の中には寝泊まりする場所を作り出し足りするものがあるので当然の反応だろう。

 ただ、トーラスはびっくりしている。

さらに驚かせてやろう。

「じゃあ、失礼して……」

 俺は、特別枠の中からあるものを展開しようとする。

大きさとしては、大して大きくはないか。

一辺が8mくらいで、高さは2m弱しかない大きさだから、一軒家と呼ぶには若干小さい。

いわゆるコンテナハウスという奴だ。

 本来なら整地が必要なんだが、特別枠で呼び出すものは安定した場所を作り出すように地面を変形させてくれる。

流石に岩とか木とかは事前にどかしておかないといけないけど、地面は勝手にならされた状態になるので、ありがたい。

大体こぶし大くらいの石なら問題ない。

 出現させても別に音が鳴るわけではないが、ずんっと置かれた感じがするのでちょっと安心感を感じる。

「でっか!というか、鉄製?」

 鋼鉄製であるのは間違いないけど、塗装がされており錆には強くなっている。その上で断熱材が入っているので、鉄無垢ではない。

 でも印象としては鉄って感じだけども。

「ろ、牢獄みたい。」

 ベネットには、外観の印象からいい反応はもらえなかったみたいだ。

ちょっと外観いじるかな。

いや、でも何かに襲われた時のことを考えると、窓はなるべく少ない方がいいし、少ない窓にも防護柵がないと不安だ。

「な、中は快適だから。」

 俺は、ドアを開けて入室を促す。

当然、電灯があるので明かりをつける。

 いくつかのコンテナをつなげて作ってあるので、ところどころに柱があるとはいえそれなりに広い空間ができている。

端の部分は厩舎にしてあるので外観よりやや狭い。

 水回りはタンクを設置してあるので800リットルは確保できる。ただしタンクは外側にあるので、水を補給するには外に出ないといけない。

 屋上に上るための梯子があり、上に上ることは可能だ。

 一応、電気が使えるように風力発電機とバッテリーを設置しているけど、正直心もとない。

 まあ、インベントリに戻してさえいれば、給電サービスでフル充電してくれるから、こまめに出し入れさえしていれば問題ないだろう。

いざとなったら、燃料発電機を設置してもいい。

 ベッドは二段ベッドが二つにシングルの折り畳みベッドが一つだ。

最大5人で生活することを想定している。

 キッチン設備も一応用意してあって、シンクとオーブン、それにIHヒーターを準備してある。

 トイレは設置してあって、単純な水洗だけどちゃんとしてある奴を準備した。

 一応、こっちの人たちもお尻を拭くというのはするので、トイレットペーパーもおいている。

拭くものは地域によって古布を使う人や植物の繊維を使う人いろいろなんだけども。

 汚物に関しては、タンクがトイレの下にあるので、外側から引き出せるように設計してある。

厩舎の排水も別にタンクがあるので、掃除は定期的に行わなくちゃいけない。

 何とかそこら辺の手間を省く手段が欲しいところではあるけど、下水処理サービスに頼るのはためらわれた。

場合によっては、必要とされる場合だってあるからだ。

 あと、暖房は一応オイルヒーターを用意してあるけど、あまり長い時間かけてるとバッテリーが上がってしまう。

なので、なるべく断熱効果が高くなるように開口部を減らしていた。

事前に若干温めてあるので部屋の中はまだぬくもりがある。

本当は、体を清潔に保つためにお風呂を準備したかったけど、部屋に付けることは断念した。

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