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星の光で照らして

ゴオオオオッ



ラムの大きな牙の生える口から放たれる氷の咆哮。

それが周りの空気も巻き込んで今にも落ちてきそうなヴォラーベ洞窟を見事に補強していく。



「キミのペット、案外凄いのね…」



そう言ったエクラを含めその場にいた誰もを(伊勢以外)、ラムと長い付き合いのエルさえも圧倒するワザ。

なるほど、あんなにも鼻を高くする理由もわかる。

ラムの足元に展開したままの魔法陣が、ゆらゆらと青白い光を放ちながら奇怪に廻っている。

咆哮で外の壁を、魔法陣を通して内側の壁を氷で同時に覆っているのだ。

そんな神業とも言えることが出来るのはは、膨大な霊力と天からの才能がある限られた者のみだ。

記憶にはなかったが、ラムが神の使いなのかもしれないなんて嘘も、誠に聞こえてくる。



□■□



「これで良いじゃろう」



しばらくすると、崩れかけていたヴォラーベ洞窟は美しく光を反射する氷の洞窟へと姿を変えた。



「上出来ね。じゃあ次はキミ」

「はいはい」



弾を込めたシリンダーを回しながらセットし、フェルドが引き金に指をあてると、銃口に炎の陣が何重にも展開し、それらが互い違いに高速回転する。



「美しく燃えろ」



ダンッ———



陣の一瞬の発光とともに銃声が響き、瓦礫に緑色にも似た蒼色の炎が燃え盛った。

フェルドの炎はラムの氷諸共瓦礫を喰らうように燃え広がる。

やがて人ひとりが通れるほどの穴が開き、瞬間———



『ギュルルルルルルル』

「…!」



一同を影花の黒いムチが出迎えた。



「小僧!!」



ラムがそう叫んだ直後に、フェルドのリボルバーが鳴った。



「…ったく、とんだ歓迎じゃないか」

『ギュルルルルルルル』



怯んだ影花はフェルドの撃った炎に焼かれながら、仕向けたムチを引っ込める。



「まずいな。中の影花も増殖してるのかも」



エクラが顎に指をあてて考え込むように言うが、ここで立ち止まるわけにも行かない。



「早く行って終わりにしようよぉ」



ズンズンとひとり洞窟に向かって行く伊勢を、その着物を掴んで引き戻すエクラ。



「キミは雛菊と離れたくないだけでしょ!?でも…そうね。警戒を怠らずに行きましょう」



フェルドの炎をラムの氷で固め、シド救出隊は影花の巣食う氷の魔窟へと足を踏み入れた。



□■□



ヴォラーベ洞窟の中はやはり影花の巣窟となっていた。

入ってすぐのところで、フェルドの炎に燃やされている影花が一体。

その奥にも、確認できるだけで両手で数えても指が足りないほどの数が潜んでいた。



『ギュルルルルルルル』

「ねぇ!キミ達のとこの隊長さん、どの辺にいるか分かんないの?」



じりじりと近付いてくる影花と一定の距離を保ちながら、フェルドがエクラと伊勢に問う。



「あたし達がシドと別れたのはあそこ!」



エクラが指さしたのは、洞窟の奥の行き止まり。



「壁が崩れて塞がれてるけど、あの辺りに枝分かれした道が3つあったはずなの!そこの一番右の道!あの大きな岩がある辺り!」

「じゃあまた僕の炎で燃やせばいいのか?」

「そういう事ね。ここからでも狙える?」



真剣に聞くエクラに口角を上げて、フェルドが二丁拳銃リボルバーを構えた。



「誰に聞いてるんだい。そんなこと、朝飯前さ!」



フェルドが付いてきたのは偶然だったが、彼のお陰で時間が短縮出来そうだ。

たまには自分のバディも役に立つんだなと、エルがその背中を見つめて思う矢先。

フェルドの足元に先程と同じ陣が現れ、彼の体を伝って上り、握られた対影花用リボルバー、蒼色の乙女(フロイライン)の銃口へと流れていく。

まるで、そのリボルバーが己を使う者を審査するかのように。

そして。



「燃やせ、蒼炎(レイゲン)(オブ・フランメ)!」

眩い光を放ちながら回転する魔法陣の中心部、両リボルバーの銃口から一発ずつ銃弾が発射された。

蒼い軌道を描きながら、影花どうしの僅かな隙間をぬっていく全焼必至の炎を閉じ込めた銃弾。

細かな計算によって決められた軌道では無い、フェルドの感覚が全てを決めるそれは、まっすぐにエクラが指した道があるという瓦礫へと飛び、着弾、直後に着火した。



「エル!ラムと一緒に先へ!!」

「言われなくても!」



ラムにまたがり、颯爽と駆けていくエルみ見送りながら、エクラと伊勢に向けてフェルドが叫ぶ。



「キミ達も行って!僕がここから援護する!」

「わかった」



狭い洞窟内に詰め込まれたように密集する影花。

それらをかき分けながら走るエクラ。

その横を掠めていった影がひとつ。

しなやかな体でもって突進する伊勢だった。

だが不意に、視界の端から現れた影花に、伊勢の体が追いつかず。



「あ…」



視界が闇色のバケモノに覆い尽くされ、足が風をきることをやめかけた時。



「だーかーらー!ひとりで突っ走るなって言ってんでしょ!!」



そう怒りの声をあげたエクラが、伊勢の後方で両手を天にかざした。



「トゥインクル!リンクル!リトルスターズ!」



そこに顕現するは、微小な星々。

『エクラ』の名の通り眩い『輝き』を個々が持つ、紛れもない小さな隕石。



「流れる塵も光れば星屑!行っけぇっ!流星群(メテオール)!!」



かざした両手を一気に振り下ろすと、星屑は一層光を強めて流れていった。

エクラの武器はその小さな星たち。



能力名は『流星群(メテオール)



背後から差し込む数多の光に思わず振り向き、眩しさに目を閉じて構えた伊勢の体をスレスレに通り過ぎていく幾つもの流れ星たち。

流れ着く先は暗い闇を写した花型のバケモノ。

大きな爆発音とともに、激しく煌めきながら伊勢を襲いかけていた影花は消滅した。



「……」

「一秒でも早く雛菊の所に帰りたいなら、協力して」



エクラが輝く星々を従えて、伊勢を追い越しざまにそう牽制した。


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