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出会い、のち③

 ミスラは再び夢を見る。

 ひどく現実的で、鮮明に描かれる

 夢を———



 ………—————



「太陽を思わせる色の髪と瞳を持つ、女の子だって……」


 ルチアの言葉にセレネは拳を握り、ミスラは自分に向けられた複数の視線にたじろぐ。

「……それって、あの子のこと……だよね」

 と、長身の男、フェルドがミスラを指差しながら群青色の髪の男、ルチアに確認する。

「う、ん……たぶん、そうだと思う……」

「あっさり見つかりましたわね」

 金髪金眼のツインテール少女、エルはミスラを横目で見てそう零す。

「で、この娘をどう保護するんじゃ?」

 人間の言葉を話す青い獅子、ラムがエルの隣でルチアに問う。

「リンゼは少女を見つけ次第、館に連れて行って影花から守れって言ってた」

「じゃあもう見つけちゃったし、あとは連れて帰るだけだけど……」

「見ず知らずの私達に、彼女が説明ひとつでついて来るとは思えませんわ」

「だよねー。あ、そういえばさっきこの子、セレネのことをお姉ちゃんって言って、た……」

 フェルドがヘラヘラと軽く笑って話す横を、セレネが無言のまま通り過ぎる。

「セレネ?」

「お姉さま……?」

 ルチアとエルの声も、まるで聞こえていないかのように、セレネの瞳はミスラだけを映していた。

 険しい顔で歩くセレネは、ミスラの前まで来ると腰に巻いたポーチから何かを取り出して、差し出した。

「ん」

「……え。なにこれ」

「あめ。あげる」

「今?今この状況であめくれるの?」

 こくりと頷くセレネ。

「ん、あげる。食べて」

 あめを差し出す腕をさらに前に突き出して、強引にそれをミスラに押し付ける。

「食べてって……別にわたしあめいらない…」

「はい、あーん」

「ちょ、ちょっと……むぐ!?」

 受け取りを拒否するミスラの口に、セレネは無理矢理あめを押し込んだ。

 ミスラの口の中で、甘い香りが広がる。

 と同時に———

「……っ!?」


 …っ!?……急に、体が……


 ミスラはその場に立っていることも出来なくなった。

 がくんと膝がおれ、脳は働くことを放棄した。


 お、姉……ちゃん……


 ミスラが最後に見たのは、静かに浮かぶ紅い月と。

 そして同じ紅い瞳で自分を見下ろす姉、セレネの冷たい表情だった———



  □ ■ □



「………ごめんなさい、ミスラ」

 セレネは自分の足元で横たわるミスラを抱きかかえてつぶやく。

「セレネ。その子に……なにをしたの?」

 振り返るとルチアが不安そうに見つめて聞くので、セレネは彼から目をそらして言った。

「……本部からもらった記憶操作のあめ、食べさせた」

「え!?まさかまだ開発中の試作品だって言ってたやつのこと?」

 視線を合わせないまま頷くセレネに、一同が絶句する。

「それ、ちょっとまずいんじゃ……」

「ねぇ、その子セレネの双子の妹ちゃんでしょ?」

 焦るルチアの隣で、フェルドがセレネに確認する。

 彼女はそれに、首を縦に振って答えた。

「もしかしたらセレネの記憶もなくなっちゃうかもしれないよ?」

 ルチアがなおも心配そうに、双子というには似ても似つかぬ容姿のふたりを交互に見て言った。

 そんなルチアに、セレネは腕の中で眠るミスラを見下ろして、口を開く。

「……忘れてくれた方がいい」

「セレネ……」

 低く小さな声でそう言いうつむいてしまうセレネに、ルチアはかける言葉を失った。

「あの」

 3人の暗い雰囲気を断ち切るように、エルの高い声が耳に入った。

「お二人共、先程からお姉さまばかりを責めているようですけど、お姉さまが全て悪いわけではありませんわ。とりあえずは、その方を館まで連れて帰ればいいのではなくて?これからの対策はそれから練っても問題ないと思いますわ」

「エル……」

 セレネが不安そうにエルの名を呼ぶ。

「お姉さま。心配することなんてなにもありませんわ。私がずっとお姉さまのお側におりますから」

 にっこりと天使のような微笑みで、セレネに駆け寄るエル。

「さぁ!もう全ての仕事が終わったのです。さっさと館に戻りますわよ。……男性方!いつまでお姉さまにこの方を持たせるおつもりですの?……あなた!」

「え、僕?」

 指差し指名され、フェルドはセレネからミスラを受け取る。


 エルは彼らを急かすように言い聞かせた。

「早くしてください。私、夜更しは苦手ですの」



 …………——————



今回はミスラの夢見回でした。夢といえばわたし空を自由に飛ぶ夢を見たことが何度があるのですが、自分の意思のとおりに動いて飛んで、というのができた夢は最高でしたね。目覚めもばっちりでした。

今回もお読みいただきありがとうございます。

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