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すき、きらい⑥
「だって私がお前を倒すから」
同情のかけらも見えない紅い瞳に見下ろされたホア。
「いや……私は、こんな所で終わりたくないっ!!嫌よやめて……いやぁあああっ!!」
反撃の隙も与えられず、次の瞬間セレネが振り下ろした月華丸に両断され———
「なぁんて、ね」
「!?」
影花よりも高く跳び上がったセレネが眼下で見たものは、ホアの意味深な笑顔だった。
「ごめんなさい。私、もう完全に堕ちてしまったみたいなの」
「は……」
「だからね、本当はどうでもいいのよ。外の世界なんて。私が今欲しいのは……」
「!」
にんまりと笑うホアの瞳が捉えるのは、ミスラ。
「え……」
「ミスラさん、貴女だけ♡」
「だめっ!逃げてミスラ!!」
そうは言われてもミスラの体は強ばって動かない。
目の前には影花が迫ってきている。
「ミスラ!!」
「…っ!!」
セレネが地に足が着くと同時に助けに向かうが、距離的にも間に合わないのは明白。ミスラはぎゅっと強く目を瞑った。
———……
凄まじい地響きの後、舞い上がる土煙。
どこからか聞こえる自分を呼ぶセレネの声。
「…っ……あ、れ……」
感じるはずの痛みが全くない体を起こすと、近くに人の気配がした。
『どうやら間に合ったようねぇ、リンゼ』
「……ああ」
リンゼ……?
顔を上げるとそこには、太く編んだ青灰色の三つ編みを揺らす眼帯の男が立っていた。




