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聖なる扉

 ハンプティたちがミスラの手を引いて走った先。廊下の突き当たりを曲がって細い道をどんどん進んでいく。

 灯も陽の光もない場所に幾何学的な模様が施された重い印象の金属壁が見えた。

 その外淵からぽう、と柔らかい光が零れ、3人はその前で足を止めた。

 ハンプティとダンプティの目先にはふたつの窪み。ミスラの手を握ったままハンプティは左手を、ダンプティは右手をそれぞれその窪みにあてた。すると……


「!?」


 金属の擦れる音を伴って、装飾がゆっくりと動き出した。それはまるでパズルのように、ひとつひとつのピースがぴたりとはまっていく。

 そうして幾何学的な装飾は渦をまくようにして廻り、やがてその先の景色を見せた。


「……っ…」

「これ。お姉さんに、見てほしかったもの」

「みんなには、ないしょなの」


 立ちすくむミスラの手を引っ張って、ふたりが部屋に足を踏み入れる。

 この世にこれほど大きなものが存在するのかと疑うほどまで高くそびえるそれはきっと……いや。それが放つ独特の雰囲気、漏れ出る空気や光、様々なことから察して、紛れもなく眼前に佇むのは『聖なる扉』


「これが……ポルタ・サンタ……!」



  □ ■ □



『お姉さんっ』

「!!」

『ねぇ、こっち。きて』

「っ、ま……待って!!」


 ミスラは繋がれた手を振り払って、その先に行くことを躊躇う。


「あ……ご、ごめんなさい。でも……わたし……」


 そう答えたミスラの声は少しだけ震えた。

 どうしてかこの扉のある空間がとても恐ろしく思えた。それをあえて言葉とするならば、そう。


 ———『畏怖』


 ホアの言葉を疑っていた訳ではない。だが信じるには今までの生活が、平和すぎていた。

 神々しいその姿。天窓から差し込む自然の光さえも、聖なる扉を照らすべく用意されたもののよう。

 いっそ、見たこともないが、そういう風に脳が勝手に事実を曲げてしまう。

『これは、神ではないか』と。


「大丈夫、だよ?」


 不意にハンプティが子首をかしげて言った。その拍子に耳飾りの鈴がりんと鳴り渡る。


「え……」

「怖くないよ」


 ひとつに結んだ長い髪をなびかせて、ダンプティがハンプティの両手を取り指を絡める。そしてお互いに頬をすり寄せた。


「ハンプティたちが、お姉さんをここに招いたから、扉さんも歓迎してくれるの」

「歓…迎……招いた……?」

『そうなの』


 同じように頷くふたりは扉のもとへ駆け寄ると、それを見あげて言った。


『扉さん。太陽のお姉さん、連れてきたよ』

「!?」


こんばんは。作者の蒼依です。

ポルタ・サンタ登場しました。扉です、ハイ。

あ、そう言えばみなさんハンプティとダンプティ、どっちがどっちだか覚えていますか?男の子がハンプティ、女の子がダンプティです。

忘れてしまったそこのあなた!安心してください、作者もたまにこんがらがりますので。……いや、駄目なんですけどね。

今回もお読みいただきありがとうございます。是非次話も!

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