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白い、ヒト

「この度は我が国突然の申し出を受けてくださり、心より御礼申し上げます」


 照明が声に反応するように、城内の右半分をうすく照らす。その先にはひとりの白い『人』が深々とお辞儀をしていた。


「わたくしどもは、この国の未来を任されているものでございますれば」


 続いて左半分が照らされ、右と同じ白い『人』が下げていた頭をあげ客人に顔を見せた。


「こちらがその鍵」

「こちらがその錠」

『で、ございます。どうぞお見知りおきを』


 まるで用意されたセリフを読み上げるようだった。

 顔に浮かべた笑みは見た目に似つかわしくない酷く固いもので、他人行儀感が否めない。

 だが、それよりも。


「!!」


 ミスラ達は『それ』をこの時初めて見た。

 本の世界だけの存在だと思っていた。

 見た目は両者ともおそらく10歳前後の子供。

 髪と瞳、さらに着ている服や手首足首に着けた装飾品など隅から隅まで真っ白い小さな子供だった。

 だが、彼らには明らかに人間のものではない耳と尻尾があった。


「…………」


 ミスラたちは美しすぎるその容貌に目を奪われつつ、この状況をのみこめずにいた。


「国際警察チアーノ支部の方々で御座いますね」


 城の奥から女の声がそう尋ねた。

 獣耳の子供ふたりはその声の主に向き直って再び深々と頭を下げた。


「はい。数日ほど前に依頼書と思われるものを受け取ったので参りました。IPF特殊警察戦闘員の者です」


 ルチアが黒いコートの胸ポケットから警察手帳を取り出して相手に見せる。

 それに続いてセレネ、エル、フェルドも各々の警察手帳で身分の証明をした。


「……そちらは?」

「!」


 影から除く白いふたつの眼光に捉えられ、ミスラは身を固くした。


「彼女はチアーノ支部の保護対象者です。訳あって我々と共に行動するよう言われております。この国に危害を加える存在ではありません」

「み、ミスラと言います。あの、えと……お、お世話になります!」


 どう挨拶していいのか迷った挙句、前に友人の家へ泊まった際に言ったものがとっさに口から出てしまった。

 後ろでくくとフェルドが笑いをこらえているのが聞こえて、恥ずかしさに耳が熱くなる。


 うぅ……ちゃんとしたご挨拶考えとくんだった……


「……そうですか」

「貴女が依頼主ですね」


 表情が見えない相手と、淡々と会話をするルチア。

 やがてカツカツと大理石にハイヒールを響かせて、細身の女性が光の下に姿を現した。


「はい。申し遅れました。私はホア。天に選ばれた聖国ルシアーゼ第23代目女王で御座います」


 彼女もまた、真っ白だった。

 歩く度に揺れる長い髪は光を反射して白銀に輝き、頭には純白の宝石で飾られた冠が置かれていた。体のラインを際立たせるマーメイド型のドレスを身にまとい、右手に握られた杖には冠と同じ大きな宝石がはめ込まれている。白く長いまつげに守られた白眼は、見た者を魅了する輝きがあった。


「彼らもまた選ばれた子ですわ。左の髪が短いほうがハンプティ、右の長いほうがダンプティ。この国の次期王と女王になる存在です」


 ハンプティとダンプティはなおも硬い笑みをくずさなかった。

 ホアはそのふたりの間をぬけてルチアたちの前まで来ると、にっこりと笑って言った。


「警察の皆様。食事を用意してあります。話はそこで致しましょう」


 そう言ってホアはゆっくりと踵を返し客人を城の中へと招く。


「さぁ、こちらです」


 言われるがままに彼女について行く途中、エルが小声で言った。


「なんというか、随分と余裕があるじゃないですの」

「ねぇルチア。ほんとにこの国に影花が?」

「そう言ってるし、間違いないと思うんだけど……」

「?」

「ふふふふ」


 先を歩いていたホアが突然静かに笑い出したので、エルたちは寄せあっていた顔を気まずそうにぱっと離した。

 ホアは少し後ろを向いて、大きなふたつの耳を頭の上でぴくぴくと動かしながら言った。


「あぁ、ごめんなさい。私達は耳が良いもので」

「あ、いえ。こちらこそすみません。失礼なことを……」

「いいえ。良いのですよ」


 ふっと目を伏せてホアはぽつりと話し始めた。


「………正直に申しますと、国としては貴方がたに今すぐにでもアレの退治をしていただきたいのですが……子供たちがあまりにもお客様のご到着を楽しみにしていたもので」


 そう語るホアの瞳はまるで母親のそれと同じだった。


「なにせ何十年ぶりの来客ですもの。実は私もこう見えて少しだけ浮かれているのですよ。ふふ、こんな事言ったらご先祖様に怒られるかしら」


 また笑ったホアがひとつの扉の前で振り返る。


「こちらです」



 傍にいたハンプティたちが待ち構えていたかのように扉を開いた。


「久方振りのお客様に、心を込めてご用意させていただきました。どうかお気に召して頂けますように……」


 開かれた扉の向こうには、煌びやかに飾り付けられた天井や壁。長いテーブルには見たこともない料理が窓から差し込む光に照らされながら、ミスラたちを出迎えた。


こんばんは、蒼依です。

あーやっとこの人たちを出すことが出来てうれしいです((´∀`*))

読みやすいように会話文の前後を一行空けてみたのですがどうですか?

昨日は短い文章量でしたよね、、すみません。毎回今回くらいの量が丁度いいのでしょうか?もう少し長め?なんにせよ毎日更新だけはやっていけるようにします。作者はがんばります。よろしくおねがいします∠( ˙-˙ )/

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