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プロローグ

 それは、神と神の——『約束』


 世界を作る上で


 神が守らなければならない——『掟』


 それを破った神は


 神によって


 裁かれる———



  ■ □ ■



   『世界』史上、他に類を見ない、唯一の生命の住処、『青い星』


  誰がつくったものでもない、全て『偶然』が重なり生まれたそれは。

 だが偉大なる『宇宙のチカラ』には抗えず消滅の一途をたどった。



 神々は考えた。



 我々は、かつて姿形を持たなかった。

 青い星が生み出した、あらゆる知によって、各々姿を得ることが出来たのだ



 神々は言った。



 叡智とは、なんと素晴らしきものか。

 生命とは、なんと尊きものか。

 青い星が死んだ今、我々の行うべきことは。敬愛したこの歴史の終焉を、涙と共に惜しむことではない。



 ならば



 消えてしまったものは、もう一度作ればいい

 死んでしまったものは、もう一度甦らせればいい



  ■ □ ■



 青い星が消滅してから一千年後の、『世界』



 神界。

 星ぼしが宙に浮かび、七色の幻想的な光を放つ空間に、今は無き『青い星』の宮殿を模して作られた建物が、一つ。

 距離感が掴めない程巨大な城、その中の議場にて。

 神々によって行われる会議は、さながら人間の『裁判』の形式を思わせる。

 光が僅かに射す大部屋で、確認できるのは10の影。

 9つは円をつくるように並び、残りの1つはその円の中央で一際濃い影を落としていた。



 9つの影、すなわち9人の神はそれぞれに頭を抱えていた。



「愚かな……」

「このような事をして……我々だけでなく、青い星をも侮辱するか!!」



 声を荒げながら言い放つ神に対して、円の中央に立つ者は冷静に、だがこの状況を楽しんでいるような笑みを浮かべて、答える。



「侮辱?まさか!私はあの星は唯一無二の、それこそ私達神よりも神の存在、神の中の神であると。人間の言葉で言えば崇拝に近い思いで……」

「ほざけ!ならば何故このようなものを作る!?ふざけているとしか思えぬわ!」

「お言葉ですが、私がどのようなものを作ろうと、私の勝手でございます。……もう少し私のことも信じてくれたって……」

「貴様のその真意の欠片も見えぬ瞳を、どう信じろというのか!!」

「えぇ……いや、でもこの瞳を創ったのはあなたがたの大好きな人間……」

「黙れ!大体、貴様その姿はなんだ!元は女の姿であったはずだろう!?」

「あ、これですかぁ?いやぁ、女よりも男の私の方が好きだと言ってくれる者がいましてね……」



 ダンッ



 大袈裟な身振りで話す神の言葉を止めたのは、ガベルの乾いた音。



「議長……」

「みな、静粛に。此処は生命の起源、青い星に次ぐ、新たな命の住処を誕生させるための場。そのように争うところではないよ」



『議長』の発した言葉は、優しく、しかし確かな重みを持って、彼らの体に、心臓に、響く。

 議長と呼ばれたその神は、中央で笑う神に向き直って、言った。



「憲法第2条に従い、この世界を生むことを承認します」

「なっ……!?」

「議長!!」



 騒ぐ神々をまぁまぁと言って落ち着かせて、咳ばらいをひとつしてから、議長は中央の神に言う。



「君も、頭には入っていると思うけど……神界で決められた法は『絶対』。何者も、これを犯すことは……」

「あーはいはい。分かってますって」

「……はぁ。それなら良いんだけど……。くれぐれも、余計なことをしないように。……いいかね、スカアハ君」



 スカアハと呼ばれた神は、相変わらず何を考えているのか分からない、不敵な笑みで返す。



「はーい。よろしいでーす」

「……では、本日の世界創作審議会はこれにて閉会します。……これから生まれるすべての命に、幸多からんことを!解散!」



  ■ □ ■



「うぅぅぅぅぅぅぅんっ、つっかれたぁ」



 城の廊下で思い切り伸びをして歩くのは、会議からやっと解放されたスカアハ。



「クーさん、いるー?クーさーん」

「ここに」



 スカアハに呼ばれ柱の陰から現れたのは、昔の使用人風の服装をした10代後半、に見える少女。名をクー・フーリン。通称クーさん。



「クぅさぁぁん、もうっどうしてぼくから離れちゃったの?強面の老人共に囲まれてぇ、すっごく心細かったんだからぁ」



 強引に頬をすり寄せて喚くスカアハに、エメラルド色の瞳のクーは不自然なまでに抑揚のない声で答えた。



「私は神ではありませんので。あの場に立ち入ることは禁じられています」

「そんな気にすることないのにぃ」

「そういうわけにもいきません。……というか暑苦しいです」



 と言ってスカアハを押し退け、離れるクー。クーが動く度に、宝石の糸に飾られたブロンドの三つ編みが繊細に光った。

 そして無理やり引き剥がされたスカアハは、わざとらしくよろけ、更に床に手をついて、泣いた。



「ひどいっ。クーさんまでぼくをいじめるの!?」



  その小芝居を盛大に聞き流して、クーがスカアハに問う。



「スカアハ様、それで議会の答えのほうは」

「………。あぁ、うん。いいって言われたよ」

「おめでとうございます。では至急、準備に取りかかります」

「はーい、よろしくー」



 頭を下げて虚空に消えるクーを、手を振りながら見送ってスカアハ。



「……さて、僕も行きますか」



 そう言うと、暗闇の中へ静かに消えていった。



  ■ □ ■



 スカアハが姿を現したのは、どこまでも闇が続く空間、宇宙。



「……ふ、ふふ……ふふふふ」



 眼前には燃え盛る太陽と、軌道を失った月。

 そして、滅び砕け、無数の星屑と成り果てた、見るも無残な嘗ての『青い星』があった。



「くく…あはははっ、あはははははははっ」



 漆黒の闇を纏うスカアハが漆黒闇の中一人嗤う。



「やっと……やっと手に入る…!」



 腹を抱えながらそうつぶやいたスカアハの表情には、歓喜と期待が複雑に入り混じっていた。



「あぁ、あぁぁ!退屈な日々とはもうお別れだ。ぼくは遂にここまできたよ、そう!全て君たちのために!これから世界が間違いなくおもしろくなる!何故ならっ!」



 そのいっそ狂気さえも帯びているような、正気とはとても思えない顔で、だが確かに笑って、スカアハは叫ぶ。



「全ては神ではなく、愛の導き!この世の森羅万象は愛の下に誕生し、存在を許される!そう!愛こそが生命の起源!あぁ、なんて美しい!」



 スカアハは大きく両腕を広げ、溢れ出る感情を爆発させた。



「ぼくはこの時をずっと待っていたんだ!」



 その刹那に、無数の星屑は重力に引かれるかのように集まり始めた。



「今度こそ、今度こそぼくのものにしてみせる!」



 それはスカアハの目の前で、眩い光を帯びながら徐々に下の姿を現わす。



「今一度此処に、愛の星を!愛の世界を!」



 冥界、ダン・スカーを統べるこの男、スカアハ。

 神の名を持つ彼の正体は、紛うことなき神であった。

 そして彼こそが、一度消滅した『青い星』を今まさに再び甦らせた、この惑星(ほし)の創造主である。



  ■ □ ■



 『世界』史上、他に類を見ない、唯一の生命の住処、『青い星』



 名を『地球』



 消滅したその星が、1人の神によって



 再び甦り、時間を刻みはじめる—————

初めまして!

この度は「TWINS~太陽の姫と月の騎士~」をお読みいただきありがとうございます!

作者の蒼依と申します。



この物語は、今回は出番お預けとなった、少女たちを主人公として進んでいく、バケモノあり、戦闘あり、恋愛ありのラブダークファンタジーです!



プロローグではこの世界がどのようにしてつくられたのか、それを綴っています。

次話からはぐっと時間を早送りして、主人公の生きる時代に飛びますヨ。

プロローグはプロローグで完結、次話からが本編で再スタートと考えて頂けると時間軸やストーリーの理解がしやすいのではと思います。



ではでは!

これから始まる愛の物語へ、皆様をご招待しましょう。なんつって笑笑

どうぞ、続きをお楽しみください。

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