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シュバイス祭り

シュバイス祭り当日。


輝は窓から差し込む光で目を覚ました。すると、耳元で何やら人の吐息のような音がした。振り向くと、横には、目も当てられない姿のユリシアが眠っていた。


輝はベットから飛び起き、動揺した様子で、


「おい、どうしてそこで寝てんだよ。

ていうか、その格好なんだよ。」


輝は、地べたに落ちてあったユリシアの服を手当たり次第、投げた。


「イターイ。ちょっと人肌が恋しくなっただけじゃない。もう、輝ったら照れ屋さんなんだから。」


すると、下からフォルシアの声がした。


「お主ら大丈夫か、ドタバタしてネズミでも出たのか。」


「そうですね、何やらネズミよりもタチの悪いユリシアという奴が突然現れてですね。」


「それは、災難だったな。

まあ、朝ごはんが出来たから、降りてきてくれ。」


「分かりました。」


そして、二人は着替えてにおいにつられるかのように足早に降りていった。


「うわー 美味しそう。」


その日の朝食は、ベーコンエッグサンドだった。


二人はあまりの美味しさにペロリと完食してしまった。


「そうだ、お主ら。

昨日、少しでも役に立つと思って有力者をまとめておいた。まあ、参考にでも目を通してくれ。」


フォルシアから一枚の紙を手渡された。


「こんなに細かく、ありがとうございます。」


「大したことじゃない。

あ、もうこんな時間か。お主らはもう少しゆっくりしていると良い。わしは祭りの準備に行ってくる。」


二人はしばらく、紙に目を通した。


数十分後、花火のようなものが打ち上がり、村じゅうにフォルシアの声が響き渡った。


「今日は、10年に一度のシュバイス祭りだ。こうして開催できたことをわしは心から嬉しく思う。しかし、ここ最近謎の生命物体にこの村を襲撃され、この祭りを中止するべきだという声も上がった。しかし、こういう時だからこそ、わしは祭りを行うべきだと思う。

今日は、みんなに心から楽しんでもらえたら、幸いだ。

それでは、シュバイス祭りの始まりだ。」


「それじゃあ、私たちもそろそろ弓矢会場に向かおうか。」


そして、ある男が司会を始めだした。

「お集まりのみなさん、本日はわざわざこの場に足を運んでいただき誠にありがとうございます。ここではこの祭りの目玉、己のプライドを競い合い弓矢大会が行われます。

それでは、ルール説明をします。

この大会は、ファーストステージとセカンドステージに分かれており、ファーストステージはこの的の10、5、3点のところに5回打ち込み、より多くの点数を獲得した上位二人がセカンドステージに進むことができます。そして、セカンドステージはこの檻に入れているドスノシシ(イノシシにている)を放ち、それを先に射止めた方が勝者です。しかし、このドスノシシは危害を加えない限りは、おとなしい、動きの速いだけのモンスターなのですが、危害を加えたものには、突進し、その突進は命に関わるほどなので、くれぐれも観客の皆さんは危害を加えないようにお願いします。

それでは、弓矢大会の開催です。」


こうして、弓矢大会は始まり、あっと言う間にファーストステージが進んでいき、セカンドステージに出場する二人が決まった。


「みんなすごかったね、輝。しかし、あの二人は格が違うかったね。あの二人だけは満点の50点。それに一切のブレもなく常に的の真ん中。もしかして、あの二人のどちらかが」


「でも、ユリシア。

二人のうちの片方は、前回チャンピオンの人だってわかるけど、俺たちと同じくらい歳のもう一人の青い髪のロングヘアの少女はいったい?」


「そうだね、一回話しかけにいってみよう。」


こうして、二人は少女に話しかけにいった。


しかし、その頃誰もが気付かないうちにドスノシシにあやしい影が近づいていた。


「すごい弓の腕前でしたね。私はすっかりあなたに魅了されてしまいました。そんなあなたのお名前を聞かせてもらってもよろしいですか?」


「ええ、私の名前はカナリアよ。」


「あと、申し訳無いのですが少し質問させてもらってもよろしいですか?」


「何か?」


「カナリアさんはジョブマスターについて何か知っていますか?」


「い、いえ。」


「そうですか。お手数掛けて申し訳ございませんでした。セカンドステージも頑張ってください。」


「はい。」


そして、カナリアはその場を立ち去っていった。


「手がかかりなしかあ。何か知っていると思ったんだけどなあ。まあ、注意して見ていようよ。」


「そうだね。」


そして、セカンドステージは始まった。

檻を開けると同時にドスノシシはものすごいスピードで村じゅうをかけて行った。しかし、そのドスノシシの様子は何かおかしかった。何かに操られているかのように。


「倒すのは、前回チャンピオンのこの俺だ。」


そして、前回チャンピオンはいきおいよく飛び出して行きドスノシシを追い込むことに成功した。


「これで終わりだ。」


渾身の力を込めた矢は、ドスノシシの急所でもある眉間に突き刺さった。しかし、ドスノシシは倒れるどころか、怒号をあげこちら側に向かってきてた。そして、吹っ飛ばされて気絶してしまった。

それからは、ドスノシシは村じゅうのものに突進し、破壊して行った。


しかし、そんな中カナリアは動けずにいた。

彼女の中には、あるトラウマが蘇っていた。


「私は、幼い頃、父親に狩りに連れて行ってもらったことがあった。しかし、それが父親との最後の別かれになるとは思ってもいなかった。

私は最初は狩りを怖がっていてお父さんにくっついていた。その目標は今日と同じドスノシシだった。しかし、私は何匹かのドスノシシを倒していき自信がつき勝手に行動するようになった。自分に自信がつくと同時にそれは奢りに変わっていった。そして、私はある過ちを犯してしまった。それは、父親から禁止されていたエリアに入ってしまったことだ。私がそのエリアに入ったのはただ、より強い獲物を狩りたいという軽率な考えだった。しかし、そのエリアのモンスターは私がさっきまで狩っていたモンスターとはレベルが段違いだった。私はあっと言う間にモンスターに囲まれてしまった。私は泣き叫んだ。そんな時、父親が助けに来て、私の手を引っ張ってそのエリアから脱出することができた。しかし、父親の手からは握力がなくなっていき、私の手は赤く染まっていた。そして、父親はそのまま地面に倒れこみ息を引きとった。

私は誰からも責められなかった。しかし、それは私にとって何よりも地獄だった。

それからというもの私は的を射ることはあっても、モンスターを射ることはなくなった。


そして今

「私は二位でいいと思っていた。だから私は、この大会に参加していたのに。一体どうしたら。」


その時、カナリアの前にドスノシシが現れた。ドスノシシは手当たり次第あらゆるものにブツかっていく。そして、その進路の先には大勢の観客がいた。


「このままでは多くのけが人が出てしまう。」


カナリアは意を決して矢を構え放った。しかし、カナリアは過去のトラウマに動揺してしまい、全然当たらない。そして、ドスノシシは刻一刻と狭ってくる。


そんな時、カナリアの右手が突然光り出し、カナリアは光りに包まれた。

そして、カナリアの目からは今まで我慢してきた分の涙がこぼれ落ちた。

そして、震えた声で、


「お父さん。どうして。」


「カナリアよ、さぞつらかっただろう。カナリアを残して先に死んでしまいすまなかった。」


「お父さんは何も悪くない。私のせいで、」


「カナリアよ、私はお前が無事であった事が何よりの幸せだよ。

それにな、カナリア。お前にはしっかり前を向いて生きてもらいたい。そして、困っている人に寄り添うことのできる優しい人になってほしい。

そして私はいつもお前のそばについているよ。」


「ありがとう、お父さん」


カナリアは、涙を堪え弓を構えた。

その姿からは一切の迷いもなかった。

そして、放たれた矢は雷のように閃光を放ちながら一直線にドスノシシの眉間を貫いた。


そして、辺りは歓声に包まれた。


「この大会の優勝者が決まった。その名もカナリアだ。」


観客からは再びどっと歓声が沸いた。


そして、この大会は終わり、無事シュバイス祭りも幕を閉じることができた。


次の朝、輝とユリシアはカナリアに会いにいった。


「カナリアさん、私たちの旅についてきてくれませんか。」


「いいですよ。」


「本当ですか。」


「実は祭りの前日の夜、村長からあなたたちの事情について伺っていました。しかし、あの時は自信がなく私のことは伏せといてくれとお願いしていたんです。しかし、私はこの祭りで吹っ切れる事ができました。私もこの世界を変えたい。こちらこそよろしくお願いします。」


こうして、カナリアという新しい仲間を加えて次の目的地へ向かうのであった。











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