迷いの森
「簡単に行ってくるって言っちゃったけど、入り口に戻される森。そんなおとぎ話みたいなもの輝は存在すると思う?」
「俺からすると今の状況もあり得ないし、全てが嘘であって欲しいよ。」
「そう思えば、輝はこの世界に召喚される前どのように暮らしていたの?」
「そんなことも知らないで俺を召喚したのかよ。
俺は自分の生活に飽き飽きしていたんだ。同じ日々の繰り返し、相手の顔色を伺ってばかり。そんな俺の唯一の楽しみがファンタジーゲームだったんだ。俺は毎日こんな世界に行きたいと思っていた。あれ、今の俺って。」
「輝!見て。もしかしてあれが噂の森じゃない。確かにいかにもあやしそう。入ってみようよ。」
そして二人は森の中へ足を踏み入れた。
「案外入ってみると、普通の森と変わらないね。これなら余裕じゃん。」
「ユリシア気を抜かないでよ。何が起こるか分からないんだから。」
そうして森を進んで行くと、話の通り突然濃い霧が発生した。
「やっとここまできた。こっからが本番よ輝。」
そして二人は濃い霧の中進んで行った。しかし、二人は一向に濃い霧は晴れず森を抜け出せずにいた。
「どうなっているのよ。視界は悪いし、道も険しいし。」
「ユリシア待って。俺たちは同じ道を歩いているんじゃないのか。」
「そんなはずは。」
「それに、俺はさっきから何ものかに見られている気配を感じるんだ。そこにいるのは誰だ。」
そして、輝は地面に落ちていた石ころを木にめがけて投げつけた。
すると突然木が動き出し。枝を使ってユリシアの足を捕まえ、宙ずりにした。
「きゃー。」
輝は即座に、敵に向かって行った。
幾つもの枝を掻い潜って輝は敵を切り裂いた。しかし、いくら輝の一撃が速くても敵の再生能力が速すぎて致命傷を与えられずにいた。
「はあはあ、一体どうしたらあいつを倒せるんだ。」
「輝、こいつの根っこをを見て。最初は根っこが8本あったの。でも今は7本しかない。もしかしたらこいつ根っこだけは再生できないのかもしれない。」
「そういうことか。ありがとうユリシア。」
そして輝は敵の攻撃を掻い潜りながら、一本また一本と切り落として行った。
「これで最後の一本だ。」
輝はありったけの力を込めて最後の一本を切り落とした。すると案の定木は消え、霧も消えた。
「やはりあの木が俺たちに幻覚を見せていたんだな。なあユリシア。」
すると、ユリシアの唇が輝の頰に触れた。
輝の顔はみるみるうちに赤くなっていく。
「ユ、ユリシア何やってんだよ。」
「私、輝のことが好きになったみたい。」
輝には初めてされた告白だったので気が動転して、逃げ出してしまった。
「ちょっと、どうして逃げるのよー輝。」
こうして二人は無事森を抜け出すことができた。