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Ep3-1

無人になった旧工場地帯は唸り声をあげる人間の形をした化け物のせいで静寂を失っていた。しかし人間はその静寂をまもり着々と布陣を完成させていく。そんな中少し離れた位置に2人の少女は待機していた。1人はバレルの長い銃についているスコープを覗きながらそれを少しずつ動かし、作戦対象地を見ていた。するともう1人の少女が尋ねた。

「エリカちゃん、私は具体的に何をすればいいの?」

「結芽ちゃんは周辺の警戒に全神経を使って。そして私が動いたらついてきて。」

とスコープから目を離さずに言い、彼女はスコープの望遠を使い、周辺に未確認のアザンや一般市民がいないことを確認する。そしてマイクをオンにしてマナに報告した。

「了解しました。こちらで全隊員に通知しておきます。」

そしてマナは無線をオープンチャンネルに切り替え、

「こちらオペレーターのマナ・クラインです。先程、エリカ・ベルベット二等兵が周辺の安全及び未確認のアザンがいないこと確認しました。戦略は変更なく、花川中佐の立案したものを展開します。作戦開始の合図はエリカ二等兵の初弾の発砲音です。」

了解と照正と合図を任されたエリカが返事をした。

 大きく深呼吸をし、スコープの中心を目標の急所に持ってくる。初めての狙撃だからか心音が頭の中で響くが、それでリズムをとり、集中力を高めていく。彼女はボルトハンドルを引き、初弾を装填した。

「発砲5秒前。」

そういうとエリカは背中を守る結芽にかなりの威圧感を与えるほどに集中する。

「3,2,1、ファイヤ。」

その声とともに爆音が鳴り響く。そして空を切るように弾丸は目標に向かってかなりの速度で飛ぶ。しかし、発砲音に反応され弾丸が落とされてしまう。だが織り込み済みだった。目標の能力がキークと同じ重力操作だということはわかっていたことだったからだ。

「結芽ちゃん!場所がばれた可能性があるから移動するよ。」

暴走状態のアザンは場所の特定などしないだろうが可能性がないわけではないのでこのような対応をした。そして次のポイントに着くとすぐに次弾を装填しスコープを覗く。次は目標の能力で隊員に降り注ぐである岩の重心を射抜き、砕くという援護に入る。

「みんなの背中はきちんと守るから・・・。」

そう呟き、また次弾を装填し狙撃を繰り返していった。


 爆音を確認すると、目標の周辺に待機していた隊員が一斉に射撃を始める。基本的にエクスは部隊の三分の一程度の人員で目標に攻撃を仕掛け、残りは避難誘導や周辺警戒などに配置される。だが今回は無人区域だったため、避難誘導に回すはずの人員を攻撃班に回していて、一斉射撃の火力はより一層増していた。キークやユーマなどの近接戦闘を主軸に戦う隊員は周辺警戒に回されていた。

 銃弾の嵐を浴びせられた目標は重力を操作して岩の塊を飛ばすものの、全て狙撃によって砕かれる。照正の指示で射撃をやめると、目標は息こそあったが反撃できないほどにダメージを受けていた。そして、その目標の頭を遠方から飛んできた弾丸が貫いた瞬間に、

「遠方より暴走状態と思われるアザンを確認。一番距離の近い俺とキークで対応します。援護急いでください。」

とユーマが叫ぶ。それを聞くとキークは鞘から刀を抜く。

「なあキーク、鬼門少将から剣術指南してもらってんなら、お前も一瞬で移動できるのか?」

「あれは少将の刀型A級装備が可能にしてるらしいよ。」

そんな会話を済ませると彼らは目標に向かって走り出した。

目標もこちらに向かい走り始め、距離が30メートルほどになったときにエリカが放った弾丸が遠方から飛んできて、目標の左腕を貫いた。

「能力不明なんだから気を付けなさいよ。」

彼らの無線にエリカの声が響くと、返事をする間もなく戦闘が始まる。

 キークは後ろに回り込み、ユーマが目標と正面からぶつかり合う。ユーマはまず銃を持たずに右手で殴りかかり、避けた目標を彼は体の流れに身を任し左足で回し蹴りを入れる。目標はそれを両腕で受け止める。そしてその感覚で敵の能力が判明した。

「能力は衝撃吸収だ。キークは報告して一撃で切れるように狙え!俺が誘導する。」

そういうと彼は銃を取り出し敵の頭に銃口を向けた。それに反応して敵は彼の足を離し、一定の距離をとった。

「理性はぶっ飛んでも、勘は働くんだ。」

そういうとすぐに彼は次の攻撃に入る。敵に向かって全力で走りぎりぎりでスライディングをする。敵はそれを目で追い、彼の攻撃しようとした。だが次の瞬間、目標の首は宙を舞い、その接続部分だった場所は砂のように崩れ始めていた。そして、そこには息を切らしたキークが刀を両手で持ち、立っていた。

「立てるか、ユーマ?」

キークはユーマに手を伸ばし、彼はその手を掴んで起き上がった。

「さすがに修行の成果はばっちり出ているな。」

照正がそう言いながら走ってきた。

「まだ基本をかじった程度で、そこまで応用できるなら我流でいってくれ。」

「もっと花川流銃術を教えて欲しいです。」

「その応用の仕方だと無理だ。どうしてもというなら結芽に聞け。」

そんな会話をしていると無線でマナが割り込み、

「作戦完了を確認したのだったら、早くしてください。」

と言う。それに照正は軽く謝りながら、タバコの形状をした薬に火をつけながら作戦終了を伝えると、それを吸い始めた。


「彼は今回も能力を使わずに任務を遂行しました。周りの人間も発動を促す発言や命令はしていませんでした。」

 将一は彼らの戦いを高い位置から見ていた。そして、それを現元帥に特別な周波数に合わせた無線機で直接報告した。

「そろそろ面倒くさいなーって思っているんですけど、そろそろ信用してくれませんかね?」

と彼が言うと、

「君や花川中佐、そして彼の直下部隊の隊員たちは信用しているぞ。私が信用していないのはキーク・深里というアザンだけだ。」

そしてその返答にそうですか、とだけ返事をして無線をオフにした。


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