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三十話

 好意も持てるようになってはいたが、同時に以前よりややこしい人間になっている気がした。でもそれなりに楽しめもするから、やっぱり以前より全然よくはなっている気もした、ややこしい。

「そ、それで堀さんは、彼のどんなところに惹かれたんですか?」

 まぁ彼女のことを聞くとしたら、こんなところからが妥当だろうか。

「関係あるんデスか?」

 以前とぜんぜん変わってませんね、ハイ。ぼくはやっぱり苦笑いして、みそ汁の残りを飲みだした。もう昼休みに入るし、入ったらおいとまして、どこかで適当に時間を――

「……喜一郎は、あまりお話が得意じゃないそうなんデス」

 考えていたら、唐突に話が始まっていた。わからん、女性の心理ってもんは本当にわけわからんと、ハハ、と再度苦笑いを浮かべ、もうあんま遠慮せずみそ汁の残りを啜りながら話を伺うことにした。

「そ、そうみたい、ですね」

「でも話してみると、子供の時に御病気をされたそうデ。それ以来ひととうまく話せなくなってしまったそうなんデス。それで一時期ひきこもりにもなって、学校にも行かない時期が続いたそうなんデス。お友達はフィギュアと二次元だったそうデ……」

「――――」

 正直、ドン引きだった。なんだそりゃ? そんな重ったい過去、持ってたのか? てかガチマジなヲタだな、そりゃあ。東京だナンダを飛び越えて、もはやテレビの世界だった。ネット廃人とかだったのだろうかとか考えたが、問題はそこではないだろうと自重した。

 当然のように彼女の話は、続く。

「それで彼自身色々と諦めかけたとき、X-japanを知って、それでビジュアル系ロックバンドに興味を持って、最初はライブハウスを回って、気づけばカラオケに通うようになってて……」

 おいおい?

 なんだか、雲行きが怪しくなっていた。身体障害者がヲタクのひきこもりになる悲劇が、運命的な出逢いからまさかの――なんて言わないよな?

「そして大学で悲願のビジュアル系ロックバンドを組み、そこでボーカルとして活躍、ここ2カ月で10回以上のライブをこなしたそうですっ! ちびらーさんっ!」

 ちびらーさんってなに?

 あまりの展開に、目先のことが気になっていた、てか多分に方言なのだろうけど、ていうか目が点になってるし、お盛んなことだった、恋してる女の子っていうのは可愛らしく見えるね、我ながらなに言ってんのかわかんねぇ。

 ちらり、と嘉島のほうを見た。

目が合いなんだか照れたように笑い、頭をかいていた。

 失礼、と前置きして、その長い前髪を掻き分けさせてもらってみた。真っ黒なサングラスはプロ仕様のようで、かつ痩せ気味のその顔だちは確かにイケメンだった。

「悪い」

 いやいや、といった感じで手を振る。印象は、大いに変わっていた。確かに深く、色々と話したいという欲求が湧いてきていた。

「……それで堀さんは、そのちびらーさんに惚れたと?」

「ん? ちびらーさんなんて言ってまセンけど?」

 無意識ってすごいなと思った。

「ああ、うん、言ってないね……それでキミは、彼のイケメンぶりに惚れたと?」

「いいえ。深雪そんな軽い女じゃありまセン。深雪は、彼の思いやりにやられたのデス。見た目だけで判断しない、その深い深い懐の深さに」

 それにぼくは、堀さんのカッコをじっと見ることになった。

 今日も彼女は、メルヘンチックだった。というか場違いというか、輿水さんとは別の意味で痛いというか。いわゆる原宿ファッション、ふわっふわで、補色一色で、そして髪は金髪のツインテール、メイクもばっちり。

 東京なら、まだいい。いやまぁ原宿以外ならやっぱり人目は引くが、それでも東京だ。色んなひとがいる。

 だが彼女の出身地は、沖縄だという。

「あの、堀さん?」

「なんデスか?」

「堀さんは、上京してハッチャけちゃったくちですか?」

「なんの話をしてるんデスか?」

 違うらしい。となると、彼女は相当に謂れのなき誹謗中傷に晒されてきたということか? いや沖縄の気質からそういうことは無さそう――だが、だからといって歓迎されてきたかというと、そうでもないのかもしれない。

「……なるほど」

「勝手に納得しないでくれまセンか?」

「だからそんな敬語、と」

「先輩も敬語じゃないですか。それに敬語なのは、先輩たちが年上だからデス」

 一瞬言葉に、詰まった。

「……マジ?」

「はい、マジデス。深雪は飛び級でこの大学に入ったので、現在16歳です。先輩、新聞見てマスか? この前日本でも試験的に始まったんデスよ?」

「へ、へぇ……」

 なんだか、二人とも異次元の存在に思えた。なるほど、なんだか本当にスゴいメンツだったんだな、この前の合コンって。類は友を呼ぶっていうか、だったらぼくもやっぱり自意識過剰じゃなくて、変人の一種だったということだろうか、なんだかちょっと嬉しい変人だったことがじゃなくて。

「なるほど、それは光栄ですね、お会いできて……まぁ今更だけど言わせてもらいますよ、おめでとうございます」

「ありがとうゴザイマス」

「ありがとう」

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