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二十四話

 正直若干ビックリするくらい、打ち解けるのが早いなと感じていた。ていうか赤羽の時も早かったし、意外とオレ、初対面のひとにウケいいのか? 根拠のない自身が湧いてきていた。この調子なら、ひょっとして合コンもスんゴイ楽しいモノになりそうな予感がビンビンだった。てか既にこの京美人の――

「あ、そういえばお名前とか聞いてもいいですか? 名前だけだと、ちょっと呼ぶのは失礼っていうか」

「そういうのは自己紹介の時までのお楽しみだと思うんだけどな~?」

「あ、そういえば……す、すいません」

「いやいや、素直でよろしい、ってか可愛いねキミ。あははっ」

「え? か、可愛いって……なんか照れますね、ハハハ」

「じゃあ特別に名前だけ、年齢はまだ秘密だよー?」

「え、あ、はい……ありがとうございます」

 ペコリ、と頭を下げる。それにその女性はニコニコ笑って、

「うちの名前、別に万知子って呼んでくれても全然いいけど、苗字の方は菅原すがわらっていいますぅ。よろしくね、之乃くん?」

「あ、はい。よろしくお願いします」

「それで、そっちの女の子ちゃんは?」

 ヤバ。

正直半分くらい忘れてた、存在を。失礼な話だった、無理やりここまで連れてきておいて。

 ぼくは焦りと慌てを足して二で割ったような状態に陥りながら、

「あっ、そのっ、こっ、このこっ、はっ……あの、」

 ――なんて説明すりゃいいんだ?

 まさか穴掘り美少女です、なんて言えるはずもなく、かといってイジメられっ子だから気になってなんてもっとダメで、しかし事実として繋がりは――って、

 あ。

「そ、そう。合コンに一緒に参加する、参加者です。名前は――」

「そう、お名前は?」

 気づけば菅原さんは、振り返っていた。首だけじゃなく、身体ごと。そして手を後ろに回し胸と腰を張り、そのくびれた抜群のスタイルをさらに強調するようにして、こちらをそのキレ長な瞳で覗き込んでいた。

これは、迫力がある。しかも生半可な美人じゃないから、男ならコロッとなんでも吐いてしまいそうだった、別に詰問でもないけど。

 さて、輿水さんの反応は?

「…………」

 ダンマリ、いつもの彼女だった。いや違うか、いつもは自分に話しかけられてると思ってないだけ――いや違う。ひょっとして、これも彼女は――

「今日は、よい天気ですね」

 また、お天気ネタ。嫌な予感が、ジワジワと背中を這いあがってくるようだった。

 今度はなにを、かましてくれるのか?

「ああ、うん、そうね。お昼はまーまー曇ってたみたいだけど、今晩はそこそこ晴れるみたいね。まーそこは東京だし、星とかあんま見れないでしょうけど」

「お星様に乗って別の星たとえば冥王星とか海王星とかにいけたムグっ」

 慌ててその口を塞ぎ、

「あ、いや、その、あそういえばみんな待ってるんですよ、ね?」

 さりげなくそれとて、促した。もちろん無理があるのは重々承知の上だ。

「――そうね、急ぎましょう」

 この大人な対応に、本音いうとちょっぴり惚れそうでしたマジで。見ると、輿水はとっくにいつもの無機質な彼女に、戻っていた。


 週末ゴールデンタイムの新宿ってやつは、本当に別次元だった。これが本当に同じ日本なのかと疑いたくなる勢いだった。ひとが、ひとで、ひとによって、渋滞していた。いやリアルに車みたいに、ひとが移動してくれなければ前というか後ろを除いた前後左右、どこにも進めない状態だった。視界もまた前方はもちろん、足元もろくに見えない。そして狭い、ていうか圧迫感がすごい、暑苦しいともいえるかもしれない。早くどっか言ってくれよ、と思っていたら一斉に動き出した。さっきまで信号待ちかよ、リアル車っぽいな。

と思っていたら結構先までいく菅原さんだったから、慌ててついていくハメになった。もう少しはこっちを気にしてくれてもいい気もするが、その辺もっぽいといえばその通りだった。

 自分の言葉に我に返り、振り返る。

 輿水さんは――言葉は悪いが幽鬼のようにユラリ、とぼくのあとをついてきていた。

 幽鬼か、と自分の言葉に納得するような、不思議な感じがした。彼女自身がその身体を使って、ソレを体現しようとしているような。そんな確信めいた、妄想を。

「こっちこっち、こっちの新宿ゴールデン街の方の」

 マジでそんな名前のストリートがあるのか、さすがは東京だともう何度目になるかわからない感心だった。

 そしてぼくたちは、ひとつの雑居ビルに入っていった。薄汚れたそこに自分の身を投じるというだけで、なんだか都会のアンダーグラウンド部に踏み込んだような気分になった。そこからエレベーターで7階に上がって、例の村さ来という居酒屋に向かった。この狭い正方形の空間に8人も9人も詰め込まれていると、なんだか出荷されるハムにでもなった気分だった。

 チーン、という甲高い音がして、エレベーターが停止する。ガーっ、という重い音がして、扉が開く。眩しくもないのに、目を細めてしまう。新しい世界の、幕開けだった。

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