百一話
珍しく、美雪ちゃんは慌てた様子だった。
「いぇ美雪そんなつもりじゃ……」
「総決算みたいだ。軽く、走馬灯みたいだと感じてるよ。ありがとう、改めて覚悟は決まったよ。ぼくはいくよ。今まで散々罪を犯してきたぼくの、最初で最後の罪滅ぼしみたいなもんだと思うよ。ただひとつ、心残りは――」
「なんいいよっとやって」
どうして、と思った。
振り返った。
「みな、で……」「仲良く青春を、ね?」
そこには『友達』とグループ分けされていたメンツが、揃っていた。
なんできたのか、と思っていた。美雪ちゃんを見た。そこには驚くくらいのドヤ顔があった。聞くと、GPSを地上に残してきたという。それをキャッチした喜一郎を先導に、三人はやってきたという。なるほど、理屈はわかった。
だから理由を、聞くことにした。
「どうして、来たんだ?」
「わいの為やっか!」
ニカッ、と素敵笑顔で、親指立てられた。アハハ、と乾いた笑顔で応えるハメになった。
色々困ったので、嘉島のほうを向いた。困ったときは嘉島の法則だった。すると嘉島もまた笑みを、こっちはとっても良心的で裏など欠片も掬い取れない類のソレを向けるばかりだった、うん、こいつ喋らねぇよな。
で、結局菅原さんだった。やっぱりこういう時、大人の女性だよねって。
「え? なに?」
うん、あんまり察してもらってなかった。ていうかいつの間にか美雪ちゃんとガールズトークというかレディストークというか、そういうのかましてた。なるほど、うん、気まずい。
ぼくは苦笑いして、結局赤羽に戻ってきた。
「あ……あのさ、その……オ、オレのため?」
「おう、わいの為さ、当たり前やっか!」
「でも……お前、オレが話してる相手が、視えて――」
「あー、あれはおいが悪かった。ちょっとあん時おい、ちょっと外からの煙が目に入って、見えとらんかったとさね、うん、変なこと言ってすまん」
右手縦にして、普通に謝られた。それにぼくは、周りを見回した。嘉島はやっぱり、笑顔で頷いていた。菅原さんは、神妙な顔で頷いていた。美雪ちゃんは、
「……なんデスか?」
「や、いや……」
不機嫌そうな顔をされると、こちらとしてもなんとも言えそうになかった。ここは、察しろということなのだろうか。ぼくは考え、
「じゃあ、その……オレ、」
「行くとや?」
その通りだったが、しかしそれを先回りして言われると、どうしたもんだかわからなかった。
やはり答えを出さずに、先に進むことは出来そうになかった。
「――赤羽、」
「なん?」
「いや、その……お前命、賭けれる?」
「よかばい」
一瞬、空白時間が生まれた。
「……本気?」
「万知子にいいとこ見せる為なら、命ぐらいいくらでも賭けるばい、結婚するた――うごわっ!」
いきなりモノスゴイ勢いで、赤羽の顔――というか体が、真横に吹き飛んでいった。
代わりに右掌底を突き出した形の、菅原さんが現れた。
「九州から来たバカは放っといて」
「あ、そ、そうです、ね……」
「ま、ちなみにうちは命賭けたっても、いいわよ?」
「へ……じょ、冗談、ですよね?」
「ホンキ。うち、之乃ちゃん、かなり好きよん」
ペロ、と舌を出された。それに愕然としてしまう。そんなぼくに菅原さんはさらに、
「あと、菖蒲ちゃんも好きだしね。放っておくわけにもいかないってわけで、お姉さんの命なら、賭けてあげるわ。……でも、高いわよ?」
指差しでBAN!と撃たれてしまった。それにぼくは不覚にもキュン、とキテ胸を押さえてしまった。わーもうホントオレこのひとには敵わないわ。
「お、れ……」
震えるような声が、響いてきた。
ぼくはそちらに、顔を向けた。
「……いい、ぜ。いの、ち賭け……」
嘉島まで――という感慨に、ぼくは胸が熱くなっていた。なんて……なんてイイ奴らなんだろうというか、と涙溢れかけて瞼を拭い、
「おおおおオオオオオオオあああああああ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"!!」
地獄の咆哮が、炸裂していた。
「へ……?」
呆気にとられて手をのけると、なぜか嘉島は髪をおっ立てていた。
そして、久々に覗く嘉島のその瞳は、ギラっギラしていた。
「うごおおおおおおおおおおお、オ・レ・ノ・イ・ノ・チ、お前に賭ける、ZEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEッ!!」
デスボイスだった、つまりはデスメタルだった、びっくりした、部室では確かROCKだった筈、アレ、こいつ色々やってんのか?
ていうか、すげぇ迫力。




