私の席は特等席
「ねぇ、勉強って何するの?」
っふぇ?!
愛子のとぼけた言葉を聞き思わず口があんぐりと空いてしまった――
勿論、人間界での人間の偵察だが…
高校に通うならそれに合わせて勉強もしないといけないだろう。
でもそれをココで言えるわけがない。
目を丸くしていると達也くんの肩が揺れている。
「ッククク…なんて言った?やる気のないそのセリフに尊敬するわ」
っは?!
変な感じに思われたら困るよ…ミルさん言葉には気をつけて――
数学のプリントが配られちらっと流し見て耳元で声を掛けた。
「美紀?人間と同じ勉強を受けるの。まずこれをやればいいのよ」
高校三年の問題は…まぁ、天空で習うものと大体同じ。
しかも随分と昔に習ったものばかり――
だから悩むこともなくスラスラ書く事が出来た。
ふと透君を眺めるとスラスラと流れるように問題を解いている。
…意外に勉強ができるのか。
それを考えると余計に横の人間がよくわからない…
スラスラと問題を解いていても本気でやる気なく解いている。
…適当なのか?!
それとも判りきっているからなのか…っま、いいか。
渡されたプリントを眺めてスラスラ書いて提出した――
気づけば授業が終わっていた。
―― ッガシャ ――
扉が勢いよく開く音で目線を音の方向に移した。
すると、見た目でも明らかに悪そうな態度でツカツカと私を見据えて歩いてきた。
私の目の前に立った子は化粧が濃く髪の毛も不自然に茶色の髪の毛に染まっている―
おそらく自毛ではないのであろう。
何かを言いたいのだろうが…私が見据えているからなのか言葉が出てこないらしい――
私は首を傾げて言葉を待った。
「なんで…あんた達がそこの席に座っているわけ?」
…はぃ?
隣人と同じ事を言われるとは思わなかった。
この席な特等席なのだろうか?
逆に何故ココに私は座っているのだろうか?
私に対して投げかけられた言葉の返事を考える事もなく素で答えた。
「この席は担任から指示されて座っているの?それ以上にこの席になにがあるというわけ?」
相手に対してこの席がどんな席なのか聞きたかった。
…特等席なのか?
見据えて見えるのは相手の怨念ではないが己から溢れる悪い心が満ち溢れている…
一体なにが目的なのだろうか…一向に返事が返ってこない。
私は溜め息を付いて聞くことにした。
「なにが言いたいの?」
女の子たちは誰が私に言葉を投げ掛けるのか顔を見合わせている。
私は横の透君達の顔を見流し…自分の憶測だが想像ついた。
ふと透くんが笑っているのが判った。
「透君と達也くんに手を出したら絶対に許さないから…覚えておくことね!!」
…なんだそれは――
…でも予想通りだった――
あの子達は学校になにをしに来ているのだろうか…
でも、気持ちは判る。
きっとあの子達は隣の透くんと達也くんを好んでいるのだろう。
私はシンセ様と同じ時に学校を通っている状態ではなかったから…
学校で授業を聞いていてもシンセ様に早く逢いたいとよく思っていた。
もし同じ学年ならシンセ様の横の席を羨ましいと思うだろう――
だから、仕方がないといえばそう片付けられてしまうわけだが…
唯々…好きでココに座っているわけではない相手に文句をいうのはどうゆうものなのだろうか?
クラスの中から消えていった方向を眺めて考えた。
「初めに勢いは何処へやら…?ふふ」
笑いながら前をみるとミルが不安そうに聞いて来た。
「愛子?大丈夫?」
心配掛けさせたくないし…特に問題もないと想って笑みで答えた。
私は先ほどふと笑んだ隣人二人に声を掛けた。
「今の子達は彼女なわけ?」
達也くんは苦笑いを浮かべながら言葉を選んで話そうとしていた――
その間に横の透くんが…反吐が出るように話をしだした。
「あんな女は彼女にしたくはない。…付きまとわれてんだよ」
あらあら…
「二人共ずいぶん人気なのね?この席に座るだけで二度も文句いわれたわ…」
思わず1人でクスクス笑っていると、前の席のミルも隣の二人もクスクス笑っている―
休み時間はあっという間に過ぎてしまう…
まだこっちの時間の感覚に慣れていないからなのだろうか?
歴史やら地理的なものは…全くついていけなかった。
でもそれが新鮮に感じて、時間があれば勉強を後でしようと感じた。
先生の話と黒板に書かれている文字をノートに流し書いた。
「帰ってからまとめればいいか…」