人間界のクラスに
「初めまして菅野愛子と申します。今日からよろしくお願いします」
私はペコリと頭を下げた―
ミルも挨拶しなさいよと目線を送ると慌てて挨拶していた。
先生はそんなミルを見て笑っていた。
「菅野くんは堂々としているね?伊藤くんは恥ずかしがりやかな?」
周りの先生もクスクス笑っている。
私もなんとなく笑ってみたけれど…超作り笑顔なのがバレそうで怖いわ…―
先生は教室の見取り図を見せてくれて私達の座る席と教室の位置を教えてくれた。
「うん。君達は従姉妹なんだってね?家庭事情を聞いて心配してたんだが君達が元気そうでよかった。
女子高からの転入だから男子が居て困惑する事もあると思うが頑張りなさい?じゃ、ホームルームが始まるから自分たちで教室に行って」
そう言われながら内心でどんな家庭事情なのだ?と一人で考えを巡らせていたが、早々に私とミルは頭を下げて職員室を出た。
「…はぁ。心臓が破裂するかと思ったわ!」
溜め息と同時にミルが呟いた。
横目でチラっと顔色を見たがまだ大丈夫か…私もそれなりに緊張はしたけど―
「…問題は此処からだと思う」
三階にある教室まで階段を上がっていた。
「美紀?問題は教室に入ってからだと思うの。ほかの生徒が大勢いるんだから…怖かったら何も言わなくていいわ。私が代わりに言うからね?」
そう云うとミルはいつも通りにうんうんと頷いて答えてくれた。
「…ここか。よし美紀いくよ?話し方にも気をつけて敬語じゃなくてタメ語じゃないと違和感があるからね?」
クラスの後ろ側のドアを開けて中に入った。
既に教室にいる生徒達は此方を見て驚いているような目でみている――
小さく頭を下げながら担任の先生に言われた窓側の一番後ろの席にカバンと置いた。
席には菅野と紙で書かれておりミルの所には伊藤と書いてあった。
ミルと目を合わせ席に座って何となくクラスの違和感から抜け出そうとしていた――
すると1人の女子生徒が此方に話しかけてきた。
「転校生の菅野さんと伊藤さん?学級委員だから転校生が来たら席を教えてあげてっていわれてたの。でも、大丈夫だったね!女子はみんな仲良いから学校生活を楽しみましょ?」
そう云うと片手を差し出した。…きっと握手なのだろう――
意外に社交的な人間も居るのだと思いつつ握手をした。
しかし、学級委員は曇った顔になり手を合わせて急に謝りだした。
「ごめんね?席がココしか空いてないの。二人の隣の男子なんだけど…ちょっと問題児なの。
転校生に悪いから席順を変えようって提案したんだけど…皆があまり乗り気じゃなくて…ごめんなさい。…何かあったらすぐに言って?先生に報告するから?」
学級委員の子の謝る姿勢が本当に申し訳なさそうな顔付きをする――
…これは素直に優しい人だと思えば良いのだろうか?
…心を探れば早いと思うけど、そこまでしてこの子とに何かをするわけでもないから話半分で返事をした。
「気持ちだけで嬉しいから大丈夫!問題児でも私達が何もしなければ大丈夫なんじゃないのかな?…安心して?逆に悩まさせてしまってたらごめんね?」
そう返事を返すと遠くから女の子達の声が次々に聞こえてくる。
後ろの席の子は度胸があるとか学級委員に気を使っているだとか…変わってる子とか…
人間と天使の聴覚には違いがあるから聞こえても仕方ないか。
一先ず…は大丈夫そうかな?
学級委員の子は救われたかの様な顔付きに変わりありがとうと一言云うとみんなの所に戻って行った――
…あの子自体は本当に困ってたのかもしれないわ。
でも周りが同讃しなかったのね…それも可哀想だと思っておこう。
するとミルが後ろを向いて話しかけてきた。
「問題児ってどうゆう事なの?問題ってなに?」
軽くパニックを起こしているミルに私はふと笑ってしまった。
「…ふふ、問題を起こす様な危険人物って事よ?ようは暴れん坊さんかな?」
首を傾げながら笑っていうと、ミルは溜め息を吐いて窓から見える空を眺めていた。
「巻き込まれたらやだな…」
私も一緒に空を眺めながら呟いた。
「大丈夫。私が一緒に居るんだし…空を眺めて元気をだそう?」
しばらくするとチャイムが鳴り出し、皆が自分の席に座り始めた。
―― ガチャン ――
ふとチャイムの音と共に真横で椅子を動かす音がした。