アムエルとミル
ミルは足を組んでいたがやる気がなくなったのか?足を伸ばして空を眺め始めた。
「…アムエル?出発って明日でしょ?準備しないといけないわ」
うんうんと頷いて答えていた。
ふと眺めるミルの横顔は晴れた空を眺めていても不安げに感じる。
「ミル?これが終われば晴れて天使になれるわ?自分の好きな道を選べれるのよ?
私達は今まで手芸屋さんでバイトしてたし…その先はなんだろう?
正装を編む仕事でもする?それともドレス?色々考えれると思うと楽しくない?」
ミルを励ましながらも自分に言い聞かせても曇った顔は晴れない。
「…だって、天界を離れている最中にダグエル様に想い人が出来たらどうする?
まさか、告白されてお付き合いしてるのを戻ってから知ったら…
考えただけで涙が出そうになるわ…あぁ恋しいし逢いたいよぉ~」
本当に泣きそうになってるし!
あうもー!!!…ミルはダグ様一筋だから仕方ないか!
無理やりミルの顔を此方に向けさせて話を聞かせた。
「ミル?天界を離れるといってもそんなに長く期間ではないわ?それに中間報告があるんだから、逢えない事もないし…
きっとダグエル様もミルに逢いたがって下さるから…不安にならないの!
ダグエル様はあまり喋らない方よ?なのにミルに対しては凄く優しい顔で話しているのよ?
それを考えたら、私から見ると特別な存在なんじゃないかなって思うわ?
…私だってシンセ様に会えなくなるのは辛いわ?
でも天使に昇格できれば毎日逢えるし仕事にも就ける。お似合いに一歩進めると思ったら頑張ろうって思えてくる…わ?」
ミルはプイッと池を眺め、ダグエル様に想いを馳せている。
私だって…此処を離れてあの方に逢えなくなるのは寂しいわ。
優しく話してもらえるのも我慢しなきゃ…気づけばこの池を見て想いを馳せるのも良いかもしれないわ。
私とミルは天界にある孤児院で育ってきた…お互いを姉妹の様に感じている。
ミルの両親は魔界との戦いで亡くなり孤児院に入ってきた。
両親の記憶はあるんだろう…
それにひきかえ私といえば…まさに今、座っているこの辺で独りで大事に籠に入れられていたのを発見され孤児院に入った。
当時、魔界との戦いが頻繁にあった為に両親が子供を置いて魔界に行ったのではないか?と言われていた。
しかし戦いや偵察で家族を失う子供は多くいるために孤児院と言っても普通の家庭と変わらない生活を送れる。
そして、将来も期待される。皆平等とういう考えからそうなっているらしい…
ミルは中等部まで孤児院で育ちその後は寮に入っている。
私は小等部の後半に1人暮らしを始めていた。
寮の近くで大人が居るからいつ1人で生活をこなしていくかを選択させてくれる。
早く自立したいと思い、1人暮らしを始めたが…意外に大変だった。
今でも孤児院の人達とは交流もあるし、将来孤児院の手伝いをしたいとも思う。
そんな想いを池の波に馳せて考えていたら、ミルの言葉で我に返った。
「ちょっと?!素直に聞いて考えたけど。私とアムエルは違うのよ?!
アムエルはシンセ様のフィアンセよ?!って事は卒業したら…いつ結婚しても良いって事じゃないの。
前進も何も待っていてくださるわよ!片思いの私にそんな事をよく言うわ!」
ミルは私を突っぱねて怒って言うけど、そんな話し方も仕草も可愛く感じて微笑んでしまう。
更に怒ったりするけどすぐに笑顔に戻るのが判るから…尚更可愛く感じる。
お互い何時もそんな感じでいるものだから、周りに姉妹だとか…双子じゃないの?とよくクラスの同級生に笑われる。
…でも、それが幸せなんだ。
片方が幸せならそれを分かち合えるから尚更嬉しい。