臨界のダンサー
日常と、少し奇妙な現実の交差です。
薫は今日も、いつも通り自宅から出社するところだった。
玄関を開けると、やはり田中は、踊っていた。
田中(男)28才は、薫の向かいの住人だ。やはり今日も薫に声を掛けてきた。
「一緒に踊りませんか?」
薫は無視して、会社に行く。いつも通りのことだ。会社に着いたら、薫の後輩が今日の仕事の段取りを聞いてきた。特に今日は忙しくはない。いつも通りの指示をして、薫も机のパソコンに向かう。
18時。帰宅時間になった。自宅に戻り、晩飯を薫は食べた。最近、パスタばかりだからカレーを作って食べてみる。味は悪くなかった。
次の日の朝も薫は会社に行くために玄関を開けた。
「一緒に踊りませんか?」
田中が、また声を掛けてくる。もう、こんな朝が、どのくらい続いたのだろうか。久しぶりに田中に薫から返事をした。
「そんなダサいダンスはお断りですよ」
薫は、そう言って会社に向かう。
その日も18時に会社を出て、自宅に着いたら昨日、作ったカレーを食べる。
何故か昨日より、美味しかったが薫は、その理由が分からなかった。
次の日の朝も、薫は、会社に行くために玄関のドアを開ける。
「一緒に踊りませんか?」
田中が声を描けてくる。
薫は、田中を見つめた。
「俺はダンスが下手なんだよ」
そう薫は、言った。
田中は言った。
「インド人もビックリ!」
薫と田中は笑った。薫は、久しぶりに大声で笑った。
薫は、田中に言った。
「美味しいカレーが家にあるから、今から俺の家で一緒に食べないか?」
fin.
筆者の自宅の近所が少しだけベースになっております。