夢
「拓也、私と付き合って」
そう、言ってきたのは幼馴染の未来である。
家が近くなのと、二人とも帰宅部なことからいつものように一緒に帰っていた。今日は凄く静かだな、なんて思っていたら、先ほどの言葉である。
拓也は、少し驚きつつも、告白されることにはなれているので、すぐに返答した。
「お前のこと、そういう目で見たことないから」
「そっか、そうだよね!ごめんね」
未来はそういうと、走り去ってしまった。
「あっ…」
---悲しそうな顔…初めて見たな…
拓也は家に帰り、なんだか心の中にわだかまりを感じつつも、いつも通りに過ごしていく。
夜、なにもしていないと未来の悲しそうな顔が浮かぶため、それを振り払うようにすぐに眠った。
「拓也のことが好き」
未来が話しかけてきた。拓也が未来の言葉に焦りきょどっていると、未来が拓也に近付いてきた。そして、未来の手が拓也の頬に触れる。より距離が近くなる。
赤く、柔らかそうな唇が近付いてきて…
がばっ!拓也は跳び起きた。辺りを見回しても、未来はいない。いつもの自分の部屋である。
---なんだ夢かよ…
拓也が悲しんで、続きが見れないものかと思い、もう一度、眠ったら…なんて思ったが、時計を見ると、遅刻ギリギリの時刻となっていたので、今度こそ跳び起きて支度を始めた。
なんとか、ギリギリ学校に間に合うことが出来た。
クラスに入ると、未来と目が合った。
「おはよーギリギリじゃん!どうせ、寝坊したんでしょー」
拓也は、そう言って近づいてくる未来の唇に目がいってしまう。夢のように、赤くて柔らかそうである。
「拓也?」
なにも答えない拓也を、未来が不安そうな顔で覗きこんできた。近くなった距離に拓也は焦り、一気に後ろに下がった。
その姿を見て、未来は余計不安そうな顔になった。
「なんでもない」
拓也は、そう返すだけで精いっぱいであった。
その後も何度か、未来に話しかけられたが、どうしても唇に目がいってしまい、逃げ出すように、その場を去った。
帰りもいつもなら未来と帰るが、夢を思い出してしまうため、拓也は一人でそそくさと帰った。
拓也は、家に着くと今日見た未来の唇と、夢のことで頭がいっぱいになっていた。
---昨日あんな夢見るなんて…やっぱり未来に告白なんてされたからだろうな…でも、もう少しあのまま夢見てたら、キス出来たのにな…
拓也は、そこまで考えて、頭を振った。今日は夢なんか見ないで、ぐっすり眠ってやる!と勢いよくベッドに入っていった。
「拓也のことが好き」
未来が話しかけてきた。拓也が未来の言葉に焦りきょどっていると、未来が拓也に近付いてきた。
「拓也は?」
そう聞かれると拓也は未来の頬に手を伸ばした。
「俺も」
拓也はそう答え、赤く柔らかそうな未来の唇に、自分の唇を合わせにいった。
がばっ!拓也は跳び起きた。辺りを見回しても、未来はいない。いつもの自分の部屋である。
---なんつー夢だよ!!未来とキス…
拓也はそこまで考えると、顔が一気に熱くなった。落ち着くために何度も深呼吸をした。しかし、心臓はバクバクいうのがおさまることはなかった。
朝いろいろあったが、なんとか、今日も拓也は遅刻せずにすんだ。
教室に着くと、未来の姿を探した。そして、目が合った。
「おはよ」
未来に話しかけられ、拓也は、また心臓がバクバクといいはじめた。それに耐えることが出来ず、未来から目をそむけた。
その後も、未来の姿を目で追ってしまっては、目が合い、思いっきりそらすというのを放課後まで続けた。
放課後になり、拓也が昨日のように一人で帰ろうとしたら、未来に呼び止められた。
「今日は、一緒に帰って。お願い」
未来は悲しそうな顔でそう言ってきた。拓也は、未来といると夢のことを思い出してしまうとは思ったが、悲しそうな未来の顔を見て、一緒に帰ることを承諾した。
歩きながら、未来が話はじめた。
「告白なかったことに出来ないかな…?」
「は!?嘘だったのかよ!!」
「違うよ…ただ、無視されるとかはつらい…前みたいに普通の幼馴染に戻りたいの…」
「俺は、告白なかったことになんの嫌だ!」
「断ったじゃない?それに、それからずっと無視するし…」
「もう、俺のこと好きじゃないのか?」
「えっと…それは…」
「嫌だ!好きじゃなくなるなよ!!」
「告白断っといて、好きでいろなんてひどい!!」
「じゃあ、断らない!こないだのは無しだ!!」
拓也がそう言いきると、未来が驚いた顔をした。
「なによ、それ?」
「俺にもわかんねーけど、お前には、俺を好きでいて欲しいんだよ」
「告白断らないって意味わかってる?付き合うってことだよ」
「付き合うって…」
拓也は、付き合うイメージがわかないため、少し戸惑った。
「デートしたり、手つないだり、キス…したりとか…」
「したい!!」
「えっ!?私のこと好きじゃないんでしょ?」
「好きとかよくわかんねーよ。ずっと妹みたいに思ってきたし…」
「妹って思ってるのにキスしたいの?」
「…うん」
「拓也、私のこと好きでしょ」
「は!?そんなわけないだろう!!」
「じゃあ、拓也はやめて、他の人好きになろー」
「好きなやついるのか!?」
「ほーら、私が他の人好きになるのは、嫌なんでしょ」
「…ああ」
「馬鹿な、幼馴染のためにもう一回言ってあげる」
そう言って未来が、拓也を見つめる。
「拓也、私と付き合って」
無自覚、ヘタレが好きなんです。
もし、気にいって頂けたら、他の作品も読んで下さい!!