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カノンとちっちゃいおっさん

 今のあたしはそう、まさに般若。女子高生の格好をした般若だ。そして、手には生々しい蛸。いたい、いたい、吸盤で吸い付くなこんちくしょう。

 道行く人の不審者を見るような目など気にせぬ。気にせぬぞ!誰になんと言われようとも、この生蛸を奴めにぶつけるまではっ!!


 あたしは、彼の家の前に着く。なんか家庭の事情(面倒くさそうなので詳しい事は聞いていない)で一人暮らしをしているという、超高級マンションだ。渡されていた合鍵で中へ入ると、なんとクラスメートどころか教師達にまで忘れられていた彼の靴が置いているではないか!

 あたしが怒りに任せてリビングへ続くドアを力任せに開けると…


 ちっちゃいおっさんが彼の荷物をせっせと黒い穴に放り込んでいました。


 目をこすりました。何度も、何度も、瞬きをしても、そこにはまごう事無くちっちゃいおっさん。

 どこぞの物申している芸人よろしく、上半身裸のスパッツ姿。スパッツの上にのっかるメタボな腹。はげ散らかした頭。そんなちっちゃいおっさんは、突然入ってきたあたしを驚いた感じで見ている。

 いや、あたしの方が驚いたからね?…つーか…

「あんた、あたしの彼氏の荷物に何してんの。」

 手のひらに収まるほどのおっさんを鷲掴みにして睨む。

 ぁ…っ…何これ柔らか気持ちいい…


 おっさんは、手の中で気持ちのいいお肉をぷるぷると震わせ、怯えた目であたしに言った。

「ひぃぃぃぃおたすけをぉぉぉぉ!わたくしは、『セリ王子様』のお荷物を回収しに来ただけでございますぅぅぅ…」


 は…?『王子様』…?

 確かに、あたしの彼氏芹は王子様のごとく学校内外から扱われておりましたけども…

 まぁ、それは置いといて…

「おっさん、芹の行方知ってんの?」

「はい。はい。存じておりますぅぅぅ…セリ王子様は我が国の城におりますぅ…ああ、お命だけはお許し下さいぃぃぃ…」

 小汚い顔ですすり泣くおっさん。シロってなんだ。犬の名前?犬にいる?意味わかめ。


「ねぇ。どうでもいいから、あたしを芹のトコに連れてってよ。」

 この小娘はなんてとんでもない事を!と思ってんの、口に出さなくても顔に出てるよおっさん。

 いいからさっさと連れてけよー。とイライラして生蛸にグリグリしてやったら「のぉぉぉぉ!のん、でびるふぃっしゅ!のん、でびるふぃーーーっしゅ!」て叫んでる。お前はどこの西欧人だ。


 渋々了承したおっさんを野に放すと、なんといきなり尻をぷりん☆なんて可愛いもんじゃなく、ぶりぼりん★と出すじゃぁありませんか。君、その醜い毛だらけの尻を早くしまいたまえ。

「ちょっと黙ってて下さいよ。『道』を作るのに集中力が必要なんですから。」

 はぁ…そうですか…意味わかめリターンズだけど、ちょっと黙って見る。

 ん?尻文字かな?何々…


 し


 ね


 ………


 お ま え が し ね !!


 ちっちゃいおっさん狩りを敢行しようとした時、おっさんの尻が七色に光り出した。

「キモっ!!!」

 と叫んだ時には、おっさんの姿は無く…むしろ彼の部屋の中ですら無く………


 ………え?

 ここ、どこ?

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