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魔王の身代わりで勇者に殺されました。今世では普通に生きると決めましたが、世界が俺を放っておいてくれません。  作者: 瀬綺ララ


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報酬ガチャ、失敗。

 目が見えるようになってからというものの、俺の生活はかなり変わった。これまでは地面から伝わってくる振動で周りの様子を探っていたが、視力があるおかげで、そんな面倒なことをする必要も無い。


 それに、できることが増えた。以前は暇つぶしに筋トレばかりしていたけど、今は隣に俺の世話をしてくれる女の子_____スピカがいてくれる。


 一日に3回、スピカは食事を運びにやってくる。スピカはすぐには戻らず、俺が食べるのを見つめていた。


 目が見えなかった時も気配は感じていたけど、ここまでじっと見つめられると、ちょっと恥ずかしいな。


『美味しい?』


 スピカは身振り手振りで、俺に感想を聞いてくる。


 俺が頷くと、スピカは嬉しそうに微笑んだ。


『いつも君が作ってくれるの?』


 俺も、手を使って質問する。スピカは首を横に振った。


『私がやること、あなたを見ること、だけ』


 俺は、スピカに関する情報を知らない。彼女が何歳なのか、どうして俺を監視する仕事をしているのか、ここは彼女の家なのか。彼女は俺の敵なのか、味方なのか。


 でも、知らなくても良かった。少なくとも今は。


 スピカと一緒にいると、ついつい頬がゆるんでしまう。


 スピカは俺を虐めてきた上級眷属どもとは大違いだ。優しいし、俺を殴ったり蹴ったりしてこないし、何より可愛い。


 へへ。こんなに可愛い女の子にお世話してもらえるなんて、俺ってば幸せ者なのかも……。


 いや、いかんいかん。そんなことを思っている場合ではない。俺は一刻も早く力を取り戻して、こんな場所からはさっさとおさらばして、ヴァレンティナに復讐してやらなければならないんだ。


 女の子にうつつを抜かしている場合ではない。


 はぁ。でも、スピカって本当に可愛いんだよなぁ……。


 そんなことを思っていると、目の前に3枚の板が出現する。


 出たな、選択肢め。俺のここ最近の悩みの種。


 どれどれ、今日は何と書いてあるんだ。





『1.「君のような可愛い子に見つめられて光栄だ」と耳元で囁き、その小柄な肩を抱き寄せる』


『2.「君がいてくれるだけで俺は幸せだよ」そう言って、彼女を見つめながら微笑みかける』


『3.とりあえず筋トレをする』





 選択肢は一日に1回のみ現れる。この時に一番良い選択肢を選んで好感度を稼がなければならないのだが、見ての通り、ろくな選択肢がない。


 つうか、「耳元で囁き」とか「そう言って」とか言ってるけど、俺はまだ声が出ないんだっつうの。ふざけんなよ。

 

 いや、でも待てよ。ここで敢えてセリフ系の選択肢を選んだら、意外と声を出せるようになったりするんじゃないか? 試してみる価値はあるかもしれない。


 とりあえず俺は、一番無難そうな2番を選んだ。その途端、体が勝手に動き出す。


 手が、スピカの方へと一直線に向かう。


 おい、待てって! まさかまた、変なとこ触ったりするんじゃないだろうな!


 そう思っているうちにも俺は立ち上がっていて、スピカが背中をつけて座っている壁に手をついた。


 スピカの顔が間近に迫る。スピカは目を見開いて、俺を見つめ返す。


 口を開く。用意されている言葉を言おうとして、


「……」


 しかし、幸か不幸か声は出なかった。ほっと安堵のため息を吐いたのもつかの間、俺はスピカに引き寄せられた。


 腕が背中に周り、顔に柔らかいものが押し付けられる。


 スピカは俺の頭を撫で、背中を撫で、俺の耳元で何かを囁く。何を言っているのかは分からないが、熱い吐息が耳にかかるその感覚で、顔がカッと熱くなる。


 スピカはしばらく経って俺を解放した。


『大丈夫? 嫌な夢、見ちゃった?』


 困ったように俺に微笑みかける、その目はひたすらに優しかった。


 そりゃ怒られるよりはマシだけどさ、一応は男が迫ってるんだぜ。焦るなり顔を赤くなりしてくれれば良いものの、子供扱いって……。対等な存在として見られないっていうのは、ちょっと来るものがある。


『スピカの好感度が+2、付与されました』


 頭に響く声。ここまで体を張らせておいて、一日に貰える好感度はせいぜい1、2くらいだ。めちゃくちゃ渋い。


 俺、本当にここから出られる日が来るのかな……。


 俺らしくもなくナーバスになりかけた、その瞬間だった。





『ぱんぱかぱーん!』





 突然、鳴り響く謎の音。俺が体をびくつかせると、スピカも驚いたみたいに俺から距離を取る。


 周囲を見回した。ここには俺とスピカしかいない。ということは、今の音は頭の中で鳴っていたということだ。


『おめでとうございます。一定の好感度を取得したため、報酬を獲得できます。どの報酬を選びますか?』


……来た来た来た、ついに来たァ!


 目の前に3枚の板が再び現れる。


 ったく。待たせやがってよ。ようやく俺の時代がやってきたってわけだ。


 さぁてさて、どんな報酬を得られるのかなーっと_____






『1.母音、「あ」が発せられるようになる』


『2.母音、「い」が発せられるようになる』


『3.母音、「う」が発せられるようになる』







………………。


…………。


……。



 しょぼい、しょぼすぎる!







 *



 全ての発音を手に入れて喋れるようになるのに、俺は何と数年を要した。


 おかげでスピカとはかなり仲良くなれたけどさ……別に、モテてるってわけじゃないしさ……うん。


 まあ、神様ってのは、万能ではないんだな。








 

 

次回から、ストーリーが大きく動き出します。

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