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神様の目印  作者: ヒロ
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生まれた時から、うっすらと前世の記憶がある。

前世はアラサーのOLだった。お局さんと陰で呼ばれるような、若い人が多い職場で上にも下にも気を使って、地味に真面目に目立たぬように仕事をしていたのを覚えている。

なのに、お貴族様のお子様に転生してしまった。それも呪われた子だと言われ、無視され放置されている。ただ髪と目が黒いだけで嫌ですねー。


それでもお貴族様、子殺しは大罪で、乳母がいて少し大きくなるまで育ててくれた。感謝。今は9歳ぐらいか、誕生日も祝ってもらったこともないし、両親とは一度も会ったこともない。兄弟がいるのかどうかも知らない。離れで一人暮らしている状態だ。


家令のトマスは味方だ。だから食事はちゃんと出る。でも、家庭教師もマナー講師も雇われていない本当に放置だ。

家令のお陰で、着る服は1年に3着のワンピース、肌着は3セット、後は寝巻も3セットだけ新品がもらえる。

専任のメイドも侍女もいないので、洗濯も自分でやっている、お風呂はなく水で体を拭いている。前世の記憶がなければキツかっただろうな。


離れと言ってもお貴族様の離れだ。大きな商人の家ぐらいはある。昔、隠居した祖父母が住んでいたとか、結婚しなかった訳アリの娘が住んでいたとか、いろいろ噂はある。実際本当のところは知らないが、それらしい痕跡はあるし、半ば納戸か物置かと思われる部屋もたくさんあって推測できたりもする。後は食事を嫌々運んでくるメイドが時々吐き出す愚痴で知るぐらいだ。


家令に頼んで離れの図書室に入らせてもらっている。古い本が多いが、随分こっちの世界の知識が身についた。本を読むのは楽しい。

本館にも立派な図書室があって新しくて見た目が綺麗な本が多いらしいけど、この家の人は誰も本を読まないらしい。先祖代々かなりの数を集めているのに勿体ないことである。


綺麗なドレスも宝石もお花も身を飾るものは何もないけれど、前世でも趣味は読書だったから、今、これだけの本を読める時間はあるのは幸せである。

普通の貴族の子であれば、この年齢ならば家庭教師やマナー講師をつけられ日々お勉強させられただろう。

でも、わたしは自由だ。毎日本を読む。


言葉や文字は家令が、彼の仕事が終わってから教えてくれた。彼はおじいちゃんで優しい。わたしの唯一の家族だと思っているから、二人っきりの時は、家令とも、名前のトマスとも呼ばずに、おじいちゃんと呼ばせてもらっている。家令がいるからわたしは、生き延びるだけではなく楽しみを得ることができた。

知識は力だ。

本は友人であり、師であり、生きるための糧でもある。わたしがこんな現状でも腐らず生きていけるのは家令と本のお陰だと思う。


本を読めば読むほど、前世との常識が違うことに気づく。こっちの世界、本当に神様が身近にいて、呪いや加護もあるらしいと書いてあった。どこまで本当かわからない。いつかもっと学びたいなと思う。


わたしみたいに髪や目が黒いのは本当に美の女神から呪われているらしい。と、古いぼろぼろの本に書いてあるが、伝説なのか、実際のところどうかわからないけど、周りの人からは、呪われている、そう信じられているのはわかる。わたしを見る目がいつも険悪だ。


普通、母親ならば、愛する子が呪われたのであれば、その解除方法を探したりするだろう。

でも、うちは、真摯に女神に謝罪することなく、呪いを解く方法を探すのではなく、母親の中でわたしは生まれ無かったということにしてしまった。

それを旦那様である父だという人が追随したのだ。一番楽な方法だ。無責任とも言う。こんなのが、高位なお貴族様でいいんだろうか。この国がちょっと心配。


そのぼろぼろの本を読んでいくと、美の女神の呪いを解除する方法もあるらしいというので、じっくり解読してみた。


たぶん、この家、わたしが、15歳になったら、殺してしまうか、どうでもいいところに嫁に出されるかだなと。

15歳はこっちの世界の大人だ。子殺しは大罪だけど、大人になったら自分の子どもなら殺しても罪にはならないらしい。

それも本に書いてあった。読んだ時はおいおいと突っ込んでしまったよ。


また、呪われた子どもが子どものうちに死んでしまったら、呪いは母親の方へ行くと信じられているみたいだ。それもわたしが大人になるまで殺されない理由だろう。


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