第二十二話
「隼人。お前の強さを推し量ってみたんだが、源力量は確かに二回クリアした分はあるが、技量はそれほどか?」
「下手な挑発はお互い無意味だぜ。丈一。要するにこの戦いは魂刀を巧みに操った方が勝つ。俺がそんじょそこらの使い手に負けるかよ」
丈一は落ちていた小石を拾い上げて、空に放った。その小石が地面に落ちたのが合図だった。
二人は同じタイミングで抜刀し、駆けた。
「ホワイトアウト!」
「ブラックアウト!」
二人はまたもや同じタイミングで白と黒の煙幕をはる。二人は源力をそれぞれの刀に注ぎ込んで煙を生成した。
白と黒のその煙はまさに二人の必殺領域そのものであった。この煙の中では、指一つ動かすどころか、一息も相手に許さず、相手を殺すことさえできる。
丈一は早々に源力を使い果たす勢いで、黒煙を白煙で飲み込もうとする。隼人は包囲される直前、白煙の囲いからその身を逃がした。白煙が逃げる隼人を追撃する。
『どうする!?隼人!剣技になったら勝ち目はないで!黒煙は省エネや!省エネ!』
苛立たし気に隼人が吐き捨てる。
「いつもと違って会話は聞かれてる!黙っとけ!」
丈一は白煙では隼人を捉えきれないことを悟ると、出た白煙をそのままひっこめた。
丈一は白刀を、源力を込めたら源力より便利な白煙が出てくる装置だと認識していた。丈一が普段ではレベルが高くてできない源力操作も源力を白煙に変換することで可能になる。
言ってしまえば修二の真似事さえできる可能性があるのだ。もちろん修二の真似をするには、広範なスキルなどの知識が必要になるが。
「リユースだ!」
丈一は回収した白煙でクナイの束を創造すると、白煙でできた小さな雲で空を飛び、上から隼人を目掛けて飛ばしていった。隼人はそれを黒煙で創り出した盾で防ぐ。
『やばい!やばいで隼人!お相手さん、全然素人とちゃうやん!』
「うるさい!」
隼人は持っていた刀をそのまま丈一に投げつけた。丈一がそれを弾こうとすると、丈一の目前でそれは薄い黒煙となり、丈一を覆った。
「しまっーーー」
隼人が腕を下ろす。
「堕ちろ!重力操作!」
丈一は地面に叩きつけられる。丈一はとっさの判断で白煙を身に纏わせた。丈一が打ち付けられる十分な隙を利用して隼人が黒煙を展開する。
「終わりだ。丈一。お前はもう負けだ」
黒煙は完全に丈一を包囲していた。丈一はわずかに身に纏った白煙を揺らす。
「悪いが、俺の魂はまだ負けを認めてないようだ」
「そうか、なら死ね」
黒煙はその色を濃くしていき、巨大なクジラとなって丈一の下半身を食いちぎった。隼人は丈一の死を見届けると、刀を収めようとした。黒刀が警句を飛ばした。
『まさかっ!隼人!下や!』
黒刀が気づいたときには遅かった。地中から飛び出た五体満足の丈一は切っ先を隼人の喉元に突き立てていた。隼人は源力をそのまま使い強引に体を守る。丈一は相手の源力を削り取るまで攻撃すると、カウンターを警戒し、距離を取った。隼人が苦し気に呻く。
「まさか、最初から俺は分身と戦っていたのか」
「そうだ。最初の煙合戦の時点で、俺は地中に潜っていた。戦いは分身に任せてせっせと穴掘りだよ」
「マジかよ…初手で源力をすべて分身に預けたっていうことかよ。イカレてやがる…」
「イカレてるというより、世代だな。これは」
「は?」
「俺はナルト世代。お前はボルト世代だったてことだよ」
「ナルト…?」
丈一は刀を構え直した。下半身のない自分の死体を蹴り飛ばし、わずかに残っている源力を確認する。
「ちっ。見せてやるよ…。勝負はこれからってところをーーー」
『いや、もう終わりや。源力のなくなった隼人に勝ち目はない』
「やめろ!俺はまだできる!」
『丈一、ここからはワイと勝負や』
その言葉を皮切りに隼人の意識が途切れた。黒刀、黒縄誠一の意識が隼人に宿る。丈一はそれを感知して
一気に警戒レベルを上げた。
その男の立ち振る舞いは、師である村井よりも洗練されていた。
「まずい…こいつは…」
丈一は力量の差を悟った。
「おい!ホワイトアウト!お前にも何かできないのか?」
ホワイトアウトが鼻で笑う。
『はっ。似たようなことならできるがあいつ、完全に私より強いぞ』
丈一は悪態をつく。
「つくづく使えない刀だ…」
誠一が丈一に語りかける。
「丈一、あんたと隼人はよう似とる。本質的にも、魂的にもな。おそらく前世が双子やったとかとちゃうんかな」
丈一は腹を据えて、一撃にかけると決めた。
「ふぅ!俺が勝つ。死んでも俺が勝つ!」
「ははっ。頑固なところもそっくりや。まぁ、聞け丈一。隼人もな。勝手に突っ込んでは、できもしやんのにかっこつけてまうんや。それの尻拭いみたいなことを今日みたいにワイは続けてきた…。その結果がこの体たらくや…。ワイは隼人を甘やかしてきたんやろうか?」
丈一は誠一の言葉を斬り捨てる。
「知らん!おい!ホワイトアウト!お前俺が負けたら破壊されるんじゃないのか!?」
『それはそうだが…』
「せや。新しい勇者因子を持つ者をこれ以上生み出さんためにな」
「なら少しはやる気を出せ!ポンコツ!」
『おい、丈一。私をあまり怒らせるなよ…。私はこれでもなーーー』
「知らん!お前らは話が長い!畢竟!勝つか負けるかだ!」
二人は目を丸くする。誠一は甘えた自分の考えを反省した。もうすでに何かを語り合える次元は通り過ぎていたのだった。
「丈一。いくで」
誠一は刀を構えた。丈一はわずかな源力を身体強化に回さず、すべて刀に込めた。
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