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復讐を止める者

作者: 椎名正

 復讐はいけないことです。

 憎しみは憎しみを呼び、何も生み出さず破滅を拡大させるだけです。

 たとえ、復讐が成功したとしても、達成感などはなく、空虚な心が残るでしょう。

 それに、魔法使い協会は、復讐に魔法を使うことを禁止してます。

 それが、私がリリア伯爵令嬢の復讐を止めた理由です。


 確かに、リリア伯爵令嬢には、この王国と王子を恨むだけの理由があります。

 それでも、過去のことは水に流して前に進み、わだかまりを解いて手を取り合うべきです。

 リリア伯爵令嬢は、この王国が他国への侵略戦争を開始しようとした中で、反対の声を上げました。

 それだけで、王子はリリア伯爵令嬢の両親を処刑し、リリア伯爵令嬢の顔を焼き、追放したのでした。

 ですが、両親を失った心の傷はいつか癒えます。天国のリリア伯爵令嬢の両親も、復讐など望んでいないでしょう。顔の火傷も完全には治らなくても生きてはいけます。

 私は、魔法学園でリリア伯爵令嬢と出会いました。

 平民の私を、友達だと言ってくれました。

 この貧しかった村を、自立できるように、子供達に教育を与えてくださいました。

 私にとってリリア伯爵令嬢は、友人であり恩人です。

 それでも、リリア伯爵令嬢の復讐を認めるわけにはいきません。

 顔を焼かれたリリア伯爵令嬢は、私の元に現れ、復讐の協力を頼んできました。

 騎士団長を半日ほど足止めしてくれと。そうすれば王城を焼き尽くし、王子をなぶり殺しにできると。

 私は引き受けたふりをして、王国に密告しました。

 リリア伯爵令嬢の襲撃プランを教える代価として、二つの要求を私は王国にしました。

 一つは、私自身の手で、リリア伯爵令嬢の始末をさせてもらうこと。

 所詮は、リリア伯爵令嬢の復讐など成功するはずがないのです。

 いくら、リリア伯爵令嬢が魔法学園史上の天才魔法使いで、王都を焼き尽くせるほどの炎使いであっても、魔法封じの剣を持つ騎士団長のあなたにかなうはずがないのです。

 いつも王子にはりつき護衛をしているあなたの手にかかるぐらいなら、私自身の手で決着をつけたかったのです。

 そうして、私は王子を暗殺しようとやってきたリリア伯爵令嬢をだまし討ちし、魔法で氷漬けにしたのです。

 どんな天才魔法使いも、氷の中では呼吸ができません。呼吸ができなければ人は死にます。

 王国との取り引きの二つ目は、騎士団長であるあなたに、この村を荒らしているドラゴンの退治をしてもらうことです。

 そういうわけで、あなたにこの村に来ていただきました。

 復讐はいけないことです。

 リリア伯爵令嬢には、これから王子と話し合ってもらって、仲良くしてもらいたいですね。

 ですから、これから話し合ってもらいたいと。

 リリア伯爵令嬢は生きてます。

 王子は何か勘違いしていたみたいですけど、あの氷の魔法はもともと回復魔法なので、氷が解けたら元気に動けます。

 氷の中では呼吸はできませんが、魔法の氷の中では呼吸はできます。

 ちょうど、氷が解ける時間ですね。

 王都の方から火の手が上がってますね。

 ここから見えるぐらいですから、王城がまるごと燃えているのでしょう。

 そんなに急いで帰ろうとしないで、お茶でものんでいってください、騎士団長。

 どうせ、どんなに急いでも、この村から半日以上かかってしまうんだから。


     おわり

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