とにかく人間らしく
みんなが一斉に笑顔になれるわけじゃない
マラソンの一等賞は一人しか取れない
双六で一番になれるのは必ず一人だけなんだ
天は人の上に人を、人の下に人を作らないかもしれない
でも人は人の上に人を、人の下に人を作るんだ
百点の気分と0点の気分は違う
優勝の気分とビリッケツの気分は同じじゃない
そうさ僕らはみんな宇宙の小さな子供たち
神様の前ではみんな平等
だからそれって神様がいなきゃお話にならない
ほらね僕らはみんな概ね平等なんかじゃないんだぜ
僕ら人間は実のところ不平等
……と実のところあまりわかってない
みんな平等だと思ってるから
自分が恵まれてるとは思わないし
みんな平等だと思ってるから
他人の不遇さを自己責任だと思う
人間はみんな生まれながら
一人一人それぞれに何らかの差がある
そこを押さえない限り
“人権”はわからない
体力に個人差があるように、精神力にも
……という説明もわからない人にはわからない
彼も彼女もあなたとは異なる人間だ
あなたと同じように身体を動かせるわけじゃないし、
あなたと同じようなものの考え方をするわけじゃないし、
あなたが気づけることだからって気づけるわけじゃないし、
あなたが気をつけられることだからって気をつけられるわけじゃないし、
あなたの好きなものだからって嫌いなものだからって
……という説明が、わからない人にはわからない
“人権”が、わからない
みんな平等じゃないからこそ
平等にしようと思うし
みんな平等じゃないからこそ
平等とは何かを考えられるし
みんな平等じゃないからこそ
“助けて”と言える
なんて理屈がまかり通ったら大変だ
強者が強者たるのは努力の賜物で特別なことではなく
弱者が弱者たるのは自己責任だ
そういう風に考えなきゃ面倒臭いじゃないか
下駄を脱ぐのは嫌だし弱い奴らの救済なんて興味ない
だから、このままでいいじゃん
––––だから、“人権”が、わからない
わかっちゃうと損しちゃう