第9話 本坂満帆の誕生日に幸あれ!
俺は支度の準備中だ。
「兄よ、デートか?」
こいつは俺の弟去井(見良)忠芳だ
「そんなわけないだろ、ラノベ集めだ」
「まあ、知っていたぞ、はは」
「彼女作れよ」
「うるさい、余計なお世話だ!」
俺は力強くドアを閉めて出て行った。
電車の時間にぴったり着き、隣の市へ来た。
しかし道に迷い、16時半に着いた。
「へえ、一軒家なんだ」
けれど、この家からは鳴ってはいけない音が聞こえて来る。
恐る恐るインターホンを押した。
「……来たなー」
「ヒッ!」
「ぎゃ!」
あ、ドア閉めちゃった。
「いたた、去井くん酷いよ」
「ご、ごめん」
「入っていいよ」
「お邪魔しまーす」
いくつかの瓶が割れている。
「ええと、どうしてうつむいてるの?」
「酒谷くんが来たの」
酒谷とはこいつを振ったやつだ。
「酒谷だけなら十分じゃないの?」
「筒島美波さんも連れてきたの」
誰?
「それがどうしたの?」
「劇見せられた」
あいつ、何でこいつの心を折ったのだ。
「なんの劇?」
「ロミオとジュリエット」
こんな道中でよくやれたな。
あ、やばいこの話していたから、また何かを壊しそう。
「はい、誕生日プレゼント」
俺は青い箱を渡す。
「ありが……と?」
どうしたのだ、至って普通の誕プレの筈だぞ。
「この肩こり券有効期限切れてるけど、使える?」
肩こり券?……あ!昔母への誕プレに送ったやつだ。叩きとこり間違えたんだやつ。なぜ、ここにあるのだ。
…………持ってくる箱間違えた。
どうしよう、しかも細かいことに有効期限切れてるし。昔の俺ケチだな。
「あ〜それは誕プレじゃなく……」
「嬉しいから、貰っとくね」
え、貰うの?恥ずかしいから辞めといては欲しいけど。
「本坂さん、何か食べ物に行く?」
「行く」
よし、これを誕プレとしよう。そうしよう。
だが、なぜ徒歩数分で行ける自販機なんだ。
そんいや俺以外に人いなかったのは何故だ。
「本坂さん」
「なに?」
「俺や酒谷以外にも人来たんじゃないの?」
「来たけど……数分で帰っちゃうの」
「それはどうして」
「皆用事があるみたいなの……だから劇だけ見せられた」
酒谷以外にも心折るやついたのか。可哀想に。
お金を入れては飲み物を買う本坂なのだが、
どうしよう、お腹空いた。
「本坂さん、ファミレス行きませんか?」
「ファミレス?いいよ」
あ、1本飲み干した。
「本坂さん、好きな物頼んでいいよ」
「いいの?」
「ああ、遠慮なく」
誕生日だから許す。
「じゃあアイスクリームメロンソーダ」
そんな安くていいのか?てか前も頼んでたよな。
「すいませーん」
「はーい」
「アイスクリームメロンソーダを2つ」
「はい、アイスクリームメロンソーダを2つですね」
「はい」
「ねえねえ」
「え、何?」
「何でアイスクリームメロンソーダを2つも頼んだの?」
「俺も飲むからだけど」
「そうなの?」
「そうだけど」
「なーんだ」
まさか2つとも自分のと思ったのか、それなら頼んでくれればいいのに。
「お待たせしましたー、アイスクリームメロンソーダです」
「ありがと……」
「ありがとうございます!」
「ちょっと、本坂さん、それ俺のなんだけど」
本坂はそんなことを気にせず、またアイスクリームメロンソーダをWストローで飲む。
飲み終わると笑顔を見せてくる。勝てない。
「コーラ飲みたい」
さっき俺の飲んで、自販機でもコーラ買ってたのにまたコーラ。
飲みすぎだろ。糖尿病にならんのか?
「ドリンクバーなら頼んであるから好きにしていいよ」
「やったー!」
俺もドリンクバー後で行くか。
「ただいまー、はい、去井くんの」
コーラをギリギリまで入れてやがる。
「あ、ありがとう」
ストロー入れたらこぼれるよな。
口で飲むしかないか。
「あれ、ストローで飲まないの?」
「飲まない」
だって入れたらこぼれそうだし。
俺はコーラを少し飲み、本を読む。
「ねえ」
「なに、本を読んでいるんだけど」
「何で本を読んでいるの?」
何でって読みたいからに決まっているというのに。
何言ってんだ。
「読みたいから」
「……」
あ、忘れてた、今日の主役はこいつだったの。
あ、案外可愛い店員おるわ。高校生ぐらいの。
注文して未来を見るか。
「はーい、ご注文は如何なさいますか?」
……そういや考えてなかったな。
目に映ったこれでいいか。
「これってあります?」
「あります、特大メロンアイスクリームですね」
特大?まあ特大と言ってもそこまで大きくないだろ。
「はい、それです」
「かしこまりました」
んじゃ未来見ますかね!
「別れよっか」
あ、振られた。
「ねえ、そんなの頼んで大丈夫?」
振られた俺に対してよく話しかけること出来たな。
「大丈夫だとは思う」
「お待たせしました」
大丈夫じゃ無かった。そもそもこのぐらいの大きさのアイスを入れる皿どこに売ってんだよ。
「お皿は自分たちが作りました」
聞いてないし、なぜ心の声が聞こえている。
「へ、へえ、す、すごいですね」
店員は伝票を入れて帰っていった。
あ、特大アイス3000円……この量にしては安い。
「溶けてるよ」
え?やば、まだくそ残ってるのにお腹が満腹になってしまった。
「食べてくれない?」
「溶けたらね」
「え?」
どういう意味かは分からないが、20分ほど経つとアイスが全部溶けた。
そして、本坂は皿を掴んで、豪快に飲む。
プハーと言い、飲み干した。
未来の俺が振られたショックで気づかなかったが、
可愛いよな、普通に。
「本坂さん、言いたいことが」
「ええと何かな?」
「誕生日おめでとう」
「ごめ……、あ、ありがとう」
いまごめんと言おうとしたか?
謝る必要は無いと思うけど……。
まあ幸あれ!