番外編「付き合わないか?」
幼馴染の俊介に振られ、部活に入った本坂満帆。
しかし、年月がすぎ、本坂を振った俊介が「付き合わないか」と言ってきた。
園芸部に入ったけど、案外楽しくていい。一応慰め?の人もいるし。こう考えてる中、私を振った相手、俊介が走ってきた。
「俊介、どうしたの?」
「前はごめん」
「いいよ、気にしてない」
「そうか、なら良かった」
俊介は心をホッとさせている。一体、どうしたのだろうか。少し息切れもしているし。
「満帆、付き合わないか?」
「え」
俊介は彼女の筒島がいるのに、私と付き合いたいとか何言ってるのだろうか。
「筒島ちゃんが居るのに、俊介、何言ってるの?」
「アイツとは……」
え、別れたのかな?付き合って1ヶ月も経たないうちに?相性が合わなかったのだろうか。
私は俊介とは付き合っていない。けど、今好きな人から付き合わないかと、言われた。
付き合えるならそれは私は嬉しい。けど、別れた相手もいる訳だから、まだ返事は出せない。
「別れたというより、喧嘩してこのままだと破局なんだ」
まだ別れていない。危ない、紛らわしいことをするのは流石、俊介だなと思う。
もし別れたら、私は付き合えるのだろうか。前は帰宅部だから良かったものの、今はもう部活に入ってしまっている。
去井君なら、休んでもOKはしてくれるだろう。
「ダメ……か?」
泣きたいほど、嬉しいけど、やはり、私は悩んでしまう。
「私的には嬉しいけど、私は幸せを分けたいの」
「それは好きな人がいるのか」
それは私も分からない。筒島さんだって、悲しいと思う。まだ私には支えがある。けど、今の筒島さんを支える相手は彼しかいない。
「人が悲しかった心は相当忘れないんだよね」
私は彼に詰め寄る。そして彼を見上げる。
「貴方は他人の事を考えていない、もう少し考えてみて」
「他人の事……」
付き合うなら、人の事を考える事は大事なこと。それを俊介はあまり気にしていない。
「分かった。だが、もし駄目なら付き合ってくれるか?」
私は強めの口調で答える。
「付き合わない!」
「そうか」
彼にある恋愛感情もあるけど、私も1人にはなりたくなくて、2人になれるようにしたんだから、その人をもう一度1人にはさせたくない。
「もう一度言うね。何があっても私は付き合わない」
「否定が聞けて、俺は決心できた」
俊介は去っていった。さてと、私はこっそりと木の奥で見てる人に話す。
筒島美波、酒谷俊介の彼女。私の元ライバル。
「満帆、それで良かったの?」
心配の声をするが、今は間違っている。
「話してみない?喧嘩した理由を」
筒島さんは戸惑ったように見えたが、涙を堪えながら話してくれる。
「なるほどね〜、好き嫌いがヒートアップしていったと…」
「うん」
まあ、ヒートアップして行くことは私と俊介の時もあったけど、その時はテレビとか流して場を収めたけど、無理だったのかな?
「筒島ちゃん、別れていいの?」
「それは、嫌だけど、もうその方向に行ってるじゃん。俊介があれだと」
あの行動を見た後なら、仕方ないか。けど、
「謝って確認してみたら?」
「謝れる場所がない」
「なら、私が作ってあげるから」
「いいの?」
どちらにも非があるなら、謝る必要がある。ライバルとか関係なく、今はどちらも支える側として。
「満帆、ありがとう」
「いいよ、じゃまた明日ね」
「本当にありがとう」
泣きながら走っていく筒島ちゃん。なぜ、私は釣られて泣いてしまったのだろう。
少しだけ背を向けて、泣いていると1人の男子が話しかける。俊介がさっきの話を聞いて、また駆けつけたのだろうか。
「どうしたの?本坂さん」
私に話しかける男子の正体は去井 慎也。私の友達で私が入っている園芸部の部長である。
「ううん、何でもないよ」
「そう?そういう割には悲しそうだけど」
彼は私の顔を読み取るのは得意なのだろうか。悲しい理由なんて、1つしか見当たらない。
「コーラ飲み干しちゃった?」
全然違う。やはり、彼は感性がズレているのだろうか。コーラはまだ後1つ残ってるから泣くわけないのに。
「違うよ?」
「違うんだ。何れにせよ、悲しかったのは合っている?」
「うん」
彼は少しだけ私へ近づく。一体何をするのだろうか。
「はい、コーラ」
「え?」
唐突にコーラを渡されて吃驚した。彼は、頭を少し掻いて言う。
「いや、何か今日見てたら、悲しそうな表情だから、てっきり」
私は悲しさが飛ぶ程、急に嬉しくなった。
「へぇ、1日中見てたんだ?」
「あ、いや、別にそんな訳じゃ」
動揺してる。これは、見てたと私は推測しようかな。私は彼に肩をぶつけた。
「もうちょっと私の表情でも見とく?去井君?」
「それは置いといて、元気になって良かった」
置いとかれたのはちょっと癪だけど、今回は良いかな。
「本坂さんをあまり悲しくさせたくない」
彼は少しだけ笑みを浮かべた。彼が笑みを浮かべるなんて初めて見た気がする。
「ん?何か俺おかしかった?」
「ううん、少しだけあれだったくらいかな?」
「あれって?」
「いわない」
彼は言ってほしそうだったが、心の中で言おうかな。
少しだけかっこよく、おもしろかったよ、去井君。
後日、去井君には内緒で筒島さんと俊介を集合させ、仲直りをさせた。
シリアスな話でしたが、やっぱさすがですね。去井は。あそこで「コーラを思い浮かべるなんて」




