第4話 迷子の子供と俺に幸あれ!
現在俺は下校帰り中なのだが、
「ねぇ、君の家ってここら辺なの?」
なんか後ろにいる。
「ええと、本坂さん何でいるの?」
「君が送ってあげるとか言うから」
1ミリも言った記憶はないが。
「いやあのそんなことは一言も……」
「案外都会だね」
会話そらしたな、まあ合わせとくか。
「そうか?自然あるからいい街だよ」
「だって自販機あるじゃん」
こいつは自販機があれば都会だと思ってるんじゃないだろうな?
「レストランって高くて行けないよ」
「スーパーとかないの?」
「ゲーセンならある」
「ふうん」
「うぇ、え、え」
なんか泣いてる声するな。
本坂……さんじゃないよな。
あ、子供だ。
4〜5歳ぐらいかな。
「君、どうしたの?」
「去井くん、顔近いよ、防犯ブザー鳴らされても知らないよ」
防犯ブザー?大丈夫でしょう、泣いてる理由聞いてるだけだし。
あれ、ちょっと待て!君!そのボタン押すの待って!
「あ、君、大丈夫だよ〜あの人案外優しいから」
案外ってなんだよ、案外って。
「ほ、ほんとう?」
何だろう、小さい子に言われると、涙がこみ上げてくる。
「う、う」
「君、泣いちゃダメだよ〜」
「僕、泣いてないよ、ほらあの案外優しい人が」
「ちょ、ちょっと!去井くん、何で泣いてるのよ!」
理由は聞かないで下さい。
「おじさん、落ち着いて」
お、おじさん……
「うわあああん」
「ご、ごめんね!この人落ち着かせてくるね!」
「付き合ってるの?」
「「え?」」
付き合うって言葉、もうこの歳から習うんですか?
早すぎやしません?
「付き合ってないよ〜、ただのクラスメイトだよ」
「嘘だ!ただのクラスメイトから彼氏になるんだ!大抵の本にありそうなこと」
まずい、恋愛小説好きとか参ったな。
さて、どうやって誤魔化してくれる?
「ええと、それはまあ現実というか空想の話だから」
「あれって現実世界でもあるんじゃないの?」
この子のIQはどうなっているんだ。
「現実世界でもあるんじゃないかな〜、ね?去井くん」
確かに認めてやるが、今言うな!
あと残りを俺に丸投げするな。
はぁ、しゃーないか。
「いいか、君、あの人はね購買で5000円以上買う人なんだ、そんな人と付き合ってるとは心外だな」
「!!!」
よし視線は最悪だが、通り抜けよう。
「へぇ、そうなんだ」
「よーし、分かってくれたか?」
「うん、わかった」
「じゃあ、君ここで泣いてた理由は?」
「迷子になったの」
「そうか」
「よーし、じゃあ一緒に親探そうか、ね?未来くん」
あ、本名で言ってくるのは相当やばい。
「あ、は……い」
断ったら何されるか、分かったもんじゃない。
「君、電話番号とか分かるかな?」
「分からない」
「まぁ、そうだよねー」
想定していたのは、まあ当たり前か。
「交番一緒に行こっか、お姉さんたちと」
「行く」
交番まで届けるのはいいけど、
なぜおんぶをしなければならい。
この子供たしか『こんなおじさんの背中やだ〜』とか、俺のメンタルをバッキバキに折ったくせに
おんぶしてほしいとかなんだよ。
「ほら、着いたぞ」
「えっとまず取調室まで来てもらおうか」
「ちょっと、何でですか?」
「いや、余りにも嫌がってるものなので」
嫌がってる?なんか俺の服引っ張ってるような。
あと本坂笑うな!
「いや、迷子の子供です」
「いやはや、そうでしたか、早とちりして申し訳ありません」
「いいですよ、別に……」
「泣いてません?」
「泣いて……ない……です」
「この人は君の連れかな?」
「クラスメイトというか不審者なんで、どうにかしてもらえます?」
「な!違います!クラスメイトですから!」
「うーん、無理かな〜恋頑張ってね〜」
「冗談でも頑張り……ます……」
「ねぇ、去井くん、冗談ってなんの事?」
怒りっぽい声ではないから助かった。
「それは……」
「あれ、満ちゃんじゃん」
「あ、夏見ちゃん、奇遇だね」
「で、去井くんは何してるの?」
しまった!いきなり女子が出てくると、
隠れてしまう癖が!
「恥ずかしくて隠れたんだよ、きっと」
おいこら、言ってることは正しいが人の黒歴史を勝手に作るんじゃない。
「あ、どこか行こうよ」
「そうだね、じゃあ」
……なぜ俺ん家に来た。
「……なんかね」
「うん、地味」
おい、夏見さんはまだましとして、
本坂!お前のデリカシーはどうなってたんだ!
「あれ、いたん?え、うっわ」
「え、誰?」
「あ、紹介します、俺の弟の」
あれ、どうしようか……
「おい、弟よ」
「なんだ、兄よ?」
「俺はいま色々とまずい事になってるから苗字は去井と呼ばせてもらう」
「まぁ女子2人連れてるし、そんな事だと思っていたわ、OKだ」
どういう事は分からないがOKはもらったので
紹介にまた移る。
「はい、俺の弟の去井忠芳です」
「へぇ、去井くん弟いたんだ」
本当の去井に弟いるかは知らんが。
「へえ、妹いると思ってた、ラブコメ主人公みたいに」
お前は全てのラブコメ主人公には妹がいると思っていたのか。
今すぐ全国のラブコメ主人公に謝れ。ほんとに。
「妹はいないな」
「「仲良い?」」
なぜ弟の目の前でこの人達は言うのだろうか。
「良いですよ」
弟ナイスだ!
少なくとも俺から言えるわけが無い。
あれ、けど本坂は見えないとしても
夏見さんは未来見えるわけだよな?
じゃあ早速見るか!
お、見えてきたぞ………
「最低」
そしてなんかビンタ食らったような痛みがある。
何、この感覚。
まじ未来の俺何したの?
「なんか、泣いてる?」
「大丈夫で……す……俺の未来に幸あれ」
「「?」」




