第24話 弟が妹に!?幸あれ
合宿が終わり、あっという間に2学期始業式である。
教室へ戻ると、クラスはいつも以上に騒いでいる。
騒ぐのは無理でもない。
今日は修学旅行の部屋班決めだからだ。
うちの学校は特殊であり、男女2人1組で1部屋分なのだ。
このクラスの半数はカップルである。
「では、男女2人1組組んでください」
さて、どうするべきか。本坂以外に仲良く話せる女子の友達は俺にはいない。
「去井くん、組も?」
本坂が俺に問いかける。
ん?いいのか?
「じゃあ、組もうか、本坂さん」
視線の痛さはあまり感じない。なぜだ?
前までは視線中々に痛かった気がするが?
どうやら、話してるうちに俺と本坂が最後だったみたいだ。
「いいか、お前ら絶対に変な気を起こすんじゃないぞ!」
そういうなら、男女2人1組制度やめろと心の中で思う。
「告白はwelcomeだ」
この教師、何言ってんだ?
修学旅行の説明はしばらく続いた。
ラブ?みたいな話が50分長らく語られ、
チャイムが鳴り、終了した。
とある女子が俺に話しかけてくる。
筒島美波、本坂の幼馴染相手、酒谷俊介の彼女である。
「筒島さん、何か用?」
「満帆と順調?」
「何の事?」
「付き合ってるんでしょ?どうなの?」
班決めで一緒に組むとなったら、こうなるだろう。
だが、俺は首を横に振った。
「園芸部仲間として組んだだけ」
これこそ完璧な回答である。
筒島は「そっか」と言いながら、席を立つ。
付き合ってるねぇ……俺は振られているから付き合っているという意識はしたことがない。
それに本坂はまだ諦めてはいないだろう。酒谷俊介のことを。
帰りのHRもが終わったので、部長の話について園芸部の部室へ向かう。
園芸部の部室のドアを開けた。シーンとしている。本坂がいないだけでこんなに静かになるものか。
「部長について話を進める」
「俺は部長に南野雫さん、あなたを推薦する」
雫さんは嬉しいのか、涙が少しだけ溢れている。
「副部長にな姫咲雪乃さん、君を推薦する」
これは幽霊部員にならない為に考えた提案である。こうすれば、屋島はサポートをするだけであり、競争意識は少し収められると思ったからだ。
「では、以上」
俺は鞄を持ち、帰って行った。
「兄よ〜、帰ってきたな」
「ただい……ま?」
弟よ、お前そんな髪長かったか?
「弟、お前何があった?」
「いや、育毛剤を使ったのだ」
「何のために?」
「料理や家事もするのに弟だとなんか嫌な訳でな」
なるほど、そういう事か。弟が料理や家事は一般的には珍しいことではあるが、去井家では普通のことだ。
弟は友達の幅も広いし、いじめられることも無いだろう。
「俺呼びはやめとけよ?」
「分かってるって」
ほんとかな?まあいいや。
「兄――よ、この声でいけると思うか?」
弟は女声に近い状態である声を出す。
初めて聞いた声であったので、兄と呼ばれビックリした。
「兄とより、お兄さんの方がいいんじゃないのか?」
「兄よ、それ本気か?」
「本気だ」
「お兄さん、私が妹をよろしく」
日本語がめちゃくちゃだが、まあいいだろう。
そして、俺は弟の服をみる。女性になりきってる。
普通の人からすれば男とは気づけないだろう。
「じゃ、じゃあ妹としてよろしくね」
「うん!」
なぜか妹ができしまった。
話してると家のインターホンがなる。
今日は荷物あると親から頼まれていた為、
急いで向かった。
インターホンをみると、本坂であり、借金を返しに来たと言った。
ちゃんと覚えていてくれたのか。
「ねえ、去井くん、この子誰?」
「あ、弟です」
本坂は驚く反応をする。それはそうだろう。髪の艶といい、服といい、傍から見れば女であるからな。
「あ、はい、お菓子」
本坂から渡されたのは駄菓子ではなく、ポテチであった。
駄菓子じゃないもので返してくれるなんて……
「ありがとう」
本坂は帰って行った。本当に返す為だったのか。
「お兄さん、寝る時間だよ」
「はいはい」
やっぱ初日だとそれは慣れねぇな。
「おやすみ、お兄さん」
寝れるかな?あの声良く持つよな。
俺なら喉痛くなって数分でリタイアしてしまう。
「”な”」
やっぱこれ以上は喉が痛くなってしまう。
尊敬するな。
スマホの通知がなる。
なんだ?
『私の借金はチャラになった?』
本坂か。まあチャラということにしよう。
ここまでは遠かっただろうし。
おれはうん、と送り返した。既読は付かなかったがいいだろう。
俺は眠いので、目覚ましの時間を設定し、寝ることにした。
明後日からは修学旅行だから、早めに寝なければ当日に、何も出来なくなってしまうからな。
時間を見ると20時32分、早すぎたか?
まあいい、楽しめるように寝るか。
本坂満帆の日記ー妹
△君の弟が妹になっていました。
△君は了承してるみたいです。
私は心にモヤモヤがまま残ってしまいました。
いつかこれは晴らしてくれると私は思います。




