第22話 合宿は本当に幸ある…かな?
合宿2日目。
俺らは花火を見るまでの暇つぶしをする。
「去井くん」
俺に話しかけてくるのは本坂満帆、同じクラスで友達である。
「なに?本坂さん」
「日記書いた?」
え?日記?俺ら高校3年生だよ。
あるの?
「え、日記ってあるの?」
「あるよ、宿題だよ」
よりによって受験期に出すのか。
と言っても合宿以外に書くことがないし、どうしようか。
「本坂さん、後で少し見せてくれない?」
「だめに決まってるじゃん」
ですよね〜。
「プライバシーの保護ってことか、と言っても書くことないんだよ」
「じゃあ私が良いこと教えよっか?」
本坂が?昨日の件でなんかイタズラされそうなので、俺は断っておいた。
不満そうな顔をする本坂、やっぱやるつもりだったな。
花火までやることないし、商店街行くか。
皆を連れて商店街へ連れていった。
「屋島くん達は自由に行動していいよ」
「本坂さん、勝手に仕切らないでね」
こくりと頷く本坂。
「じゃ、去井くん、行くとしようか?」
「え?行くってどこに?」
本坂は俺の手を引っ張っり、ファミレスに連れて行った。
俺は状況を把握した。
「本坂さん、ごめんね、昨日は」
「え?」
え、昨日の件について忘れたのか?
そんなわけないよな。
「太っ……」
「太ってないし!」
はあ、とため息つきながら言う本坂。
「そんなわけないでしょ、ここの無料券あと2つ余ってたから」
無料券を目の前に見せてくる本坂。
なるほど、それで新入部員達を引き離したわけか。
「ドリンクバー頼む?」
「頼む!」
昨日の件はこれで落ち着くだろう。
店員を呼び、注文をした。
前別のファミレスに行った時とあまり変わらない注文をした。
店員に注文し、店員は「かしこまりました」で帰って行った。
「去井くんの分のドリンクバーも持ってこようか?」
「いや、いいよ」
前回と同じで、コーラを満タンに入れられたらたまらない。
「ふうん」
本坂は不機嫌そうな顔をする。
あのな、前のあれ飲みずらかったからな?
と思いつつも心の声は伝わらない。
店員に注文した物が届き、俺たちは食べた。
本坂よ、いい加減俺のアイスクリームメロンソーダを飲むの止めてくれ。
既に何回か言った記憶はあるが、本坂に俺は1度も口に出したことがない。
勿論、俺は1口すら飲めずに飲まれている。
ドリンクバー持ってくるか。
……本坂いるし、烏龍茶にしとくか。
席に戻ると明らかにチーズハンバーグが少し減っている。
本坂の口の周りをみると、チーズの欠片がくっついている。
はあ、また食べられた。俺だからよかったものの。
「本坂さん、そろそろでるよ」
無料券とお金を少し渡して、店を出て、
新入部員達と合流した。
今の時刻をみると17時32分。夏祭りには丁度いい時間帯だ。
「じゃ、皆いくぞ」
皆は張り切った大声で掛け声をする。
楽しみだな。俺も初めて来たのでワクワクしている。
そもそも弟とこんな行事に出かけたことなかったな。少しだけ心が痛めつけられる。
「去井くん、りんご飴あるよ〜」
本坂に話しかけられ、俺はほんのちょっぴり痛みが柔らかくなった気がする。
弟には受験終わったらどこか出かけよう。
りんご飴か、いちご飴、
え、ぶどう飴なんて置いてるのか、これ買おっと。
「新入部員達は大丈夫?本坂さん」
「あ〜大丈夫なんじゃない?」
お前のその疑問形は怪しい。
「どこ行ったの?」
「あっち」
本坂の指さす方向へ向かった。
本坂には少しばかりのお金を渡した。俺のとこへ来ないように。
人目のないところにいる。
俺は木の陰に隠れ、新入部員達をこっそりとみると、線香花火をしていた。
ふうむ、問題はなさそうだな。
「屋島くん」
屋島に話しかける女子。
ええと、名前誰だっけ。あいつから髪の特徴とか教えて貰ってないから全くもって誰のことか分からない。
「え、なに?」
ん?こいつ気づいてないのか?
「話があるの、耳を貸して」
「分かった」
ゴニョニョと伝える女子。
もう1人の女子は首を傾げている。
屋島の顔が赤くなっている。
俺は言葉は聞けてはいないが、理解をした。
その女子が自分の感情を伝えたことを。
もう1人の女子も伝えて、泣いているような顔である。
2人とも屋島とは反対方向へ別れていった。
あっぶね!何でこっち来るんだよ。
「去井くん、ここで何してるの?」
「え?」
俺は振り返った。
げっ!本坂いたのか。
この状況は明らかにまずい気がする。
「ねえ」
やっぱりな。
「どっちに行くと思う?」
え、そっち?俺の行動気にしないの?
だけど今は、屋島の方だな。
本当に悩んでいる。
ちょっと待て本坂、どこへ行く気だ。
屋島に何か言っている。
屋島は席を立ち、とある女子の元へ向かった。
俺はその別方向の女子へと向かった。




