第19話 能力バレ?に幸あれ!
さて、今日は新入部員で恋の未来を見るとするか。
「ねえ、去井くん」
俺に話かけてきたやつは本坂満帆、俺の能力が唯一使えなく、負けヒロインである。
「どうしたの?本坂さん」
「恋の未来って見える?」
「はい?」
なぜいきなり。
「もしも恋の未来見えたとしたなら何する気?」
「必ず勝てる未来で行こうかと」
彼氏作らない話はどこ行ったのだろうか。
「彼氏作らないって言ってなかった?」
「今年は作らないんだよ、分かった?」
こう話してる俺も俺だが授業中なんだよな。
先生が普通に喋ってる中話しかけるとすごいな。
「分かった、で結局何が言いたいの?」
「私の恋の行方を教えて欲しい」
「え、そもそも俺見えないけど?」
「見えそうな顔してるじゃん」
見えそうな顔とはどういう顔か鏡で見せてもらいたい。
「まあいいから、恋の行方を見て!」
ええ、本坂は見えないんだよな。
どうしようか。
「ネットからの検索じゃダメ?」
「ダメだよ、それは”仮説”なんだから」
「はい?」
「恋はね、何が起こるか分からないからいいものなの」
じゃあ、能力者に委ねるのもやめようか。
「本坂さん、恋は見るものじゃなくて、自分から進んでやるものじゃない?」
「それはそうだけど……」
そうならやめようか。
「けれど見てワクワクすることはあると思うの」
相手にとってはワクワクしなくないか?
「まあいま授業中だし、この話はまた後で」
さてとHR終わったし、園芸部へ行くか。
「どう……も?」
新入部員たちはトランプをしている。
一応園芸部なんだけど。
本坂は入ってきた俺をじっと見てくる。
「本坂さん、な、なに?」
「うーん、やっぱり見えないかー」
「な、何が?」
「3限目に言ってたのを実行してるの」
ええ、困る。それは。
主に俺が。
「何で俺にしてくるの?他の人でやれば良くない?」
「女子に試しても効果なかったよ」
あ、そっちで試したのね。
「あれ、男子は?」
「彼氏いなそうでチョロいと思われたくないからやってない」
「それを俺にしてくるのは何で?」
「だって妬いてたし」
「妬いてないって」
「やっぱりダメか、去井くんでも」
見つめられたこと、どっかで自慢しようかな。
「去井くんも私の未来見てよ」
今度は俺がやるのか。
まあ頼まれたならワンチャン見えるかも知れないしやってみるか。
「さ、去井くん」
「え、なに?」
「修学旅行にはまだ早いと思うんだよ」
何言ってんだ。こいつは。
修学旅行まであと5ヶ月ぐらい先だぞ。
班決めはまだ決めてないけど。
「いや未来見えるか試してるだけなのに」
「そ、そうだよね」
本坂はいつも騒がしいのは当たり前なのだが、
今日はなぜかオドオドしながら騒いでいる。
……ほんとに見えない。
「まあ俺も見えないからお互い様にしとこ?」
「よ、良し、そうしようっか!トランプ混ぜてもらおっと♪」
あ、いつもの本坂に戻った。
一体なんだったのだろうか。
「ほら、去井くんもやろ〜」
「いや、やってていいよ、ラノベ読むから」
「……」
俺の手から素早くラノベを取る本坂。
「本坂さん、返してくれない?」
「これは後で処分します、ちゃんと参加しよう?」
ええ、これから良いシーンとこだったのに。無慈悲な。後、園芸部なので園芸部らしいことしてください。
新入部員を見てみると、明らかに男子は小さなハーレムを構築している。
なるほど、負けたくないプライドの為、俺を誘ったわけか。
「ハーレムに対抗しなくてもいいと思うけど……」
「してないし!はやく神経衰弱やろっか」
ええ、俺1番苦手なんだけど。
……1枚しか取れなかった。
悔しい。
また本坂が1位か。強すぎるだろ。
どうにかして俺が最下位を回避する方法は1つだな。
「よし、皆で自販機行こうか」
「そうだね、よし行こう!」
さすが本坂だ、新入部員を引っ張っている。
「部長の奢りだからね」
誰も奢るとは言っていないが、今日は奢ろう。
……てか本坂、借金まだ残ってるよな?後で話して返してもらおう。
「皆何がいい?」
「「「コーラ!」」」
「いいけど、メントスコーラやるなよ?」
「「「大丈夫!」」」
本坂は無言だけど、コーラだろう。
いや、まてよ、無言ということは多分太ったのだろう。
よし、本坂にはカフェオレでいいか。
「はい、新入生にはコーラ」
「はい、本坂さんにはカフェオレ」
「あ、ありがとう、あれ去井くんは何も買わないの?」
「買うけど」
俺もカフェオレのボタンを押した。
「あれ、メロンソーダ買わないの?」
「だって今眠いし」
「だけど、カフェオレよりコーヒーの方が良かったんじゃ?」
「同じ物を持ってる人が1人でもいると安心するだろ?」
「そういうもんかな?」
「そういうものだとは思うよ、本坂さん」
恋の未来を最後にもう一回見とくとしよう。
……未来は未だに見えない。
能力はバレてないし、平和に高校生活を過ごそう。
そして幸が欲しい。




