第18話 新入部員に幸あれ!
今日は新入生の部活説明会だ。
この学校は特殊で説明会をやった後に入るか入らないか決めるのだ。
見学会とはなく、説明会で全てが決まる。
サッカー部が終われば理科部と園芸部の合同説明会である。
「続いて理科部と園芸部の合同説明会です」
きた。
「はい、理科部と」
「園芸部です」
「今日はですね、メントス花コーラをやります!」
あ、結局やるんだ。
新入生は全員クエスチョンマークの顔してるけど。
「では、本坂さんやってください」
「はーい、 まずはメントスとコーラを用意します」
あれ、昨日作ってたのが花ではないのか?
「鴨崎部長あれも入ってたんですか?」
「……あれは俺も知らない」
鴨崎部長は困ってる顔をした。
そう、つまりは本坂が自発的にやっているのだ。
なんてことをしてくれるんだ。
「これが普通のメントスコーラです」
新入生はおおっ!と驚いた。
そりゃそうだろうな、まずメントスコーラを床にぶちまく奴はいないからな。
雑巾とってくるか。
雑巾を部室からとってきて戻ってきた。
うわ、床ビショビショ、参ったな。
俺は本坂が汚した場所を拭いた。
鴨崎部長も部長だよ。なんでメントスコーラが思いつくんだ。
そんなもん体育館が汚れるに決まってるだろ。
「続いてメントス花コーラですよーー」
花以外園芸部の部分がない。
俺は拭くを一旦止めて見ることにした。
本坂はメントスを根っこのところに入れ、
コーラを上から注いだ。
グングンとコーラが勢いよく上がってくる。
そして花びらの形でコーラが吹き出した。
新入生は拍手と同時におおっ!とさっきよりもでかい声で驚いていた。
この人気なら園芸部は安泰……なのか?
むしろ理科部に全部取られそうな気がする。
「はい、以上です!」
本坂に喝采が送られる。
アンコールと言う新入生も数名。
「では理科部と園芸部によろしくお願いします!」
「絶対に入ります!」
うんうん、良かった。
「理科部に!」
良くなかった。本当に大丈夫かな?園芸部。
俺は新しい部活の説明会が続いていても床を拭いている。
床を拭くのはビショビショのまま、次の部活が説明できないからだ。
本坂は帰っただろうと思いきや、隣を見ると一緒に雑巾で拭いていた。
はあ、抜け出すと思ったら案外やるんだな。
責任なのか?まあいい、やってくれるならば。
「去井くん、ありがと」
「え、あ、別にいいよ」
ありがとって何が?あ、雑巾か。
「奢ってくれて」
昨日のコーラのこと、え、今に対して何もないの?
むしろそっちをありがとうを言って欲しかった。
1時間で大体終わり、部室のドアの前まできた。
1年生は許可証を出してもらう為に、部室にいる。
ここが運命の道!
俺は勢いよくドアを開けた。
男子1名、女子2名の合計3名だ。
ギリギリすぎだな。まあ嬉しいけど。
「あ、部長さん署名お願いします」
この学校は部長が署名し、その後1年生が入部届けを提出する。
それで晴れて部員となるわけだ。
新入生が届けを出したときに本坂が帰ってきた。
「新入生何人だった?」
「3人」
「うわ、ギリギリじゃん」
「まあ、廃部は免れてよかったよ、羽山元部長も廃部にはしたくないなと言っていたし」
「へえ、そんなこと言ってんだ」
「で、男子と女子何人だった?」
「ええと、男子が1人、女子が2人」
「ほお」
どうした、珍しいものを見た顔して。
「ええと、本坂さんなにしてるの?」
「分からない?」
「分からない」
だってスマホ持ってるだけだし。
「写真をとるんだよ」
とうとう一線を越えてはいけないところまで来たか。
「よし、本坂さん、君のためだ、警察へ行こう」
「何で?」
「何でって盗撮はダメだよ」
GPSならまあいいとするけど。
「……去井くん、部員と写真撮るのいけないかな?」
なんだ、そっちか。
「あ、それならいいよ」
「やったー!」
確か良かった気がする。
新入部員が戻ってきた。
「お、きたねー、みんなで写真撮ろうよ」
「去井部長さん、ええと誰ですか?」
「本坂満帆副部長だよ、3年生だよ」
「あれ、去井くん私副部長になるサインなんてしたっけ?」
「さて、写真撮ろうか、みんなで」
「……去井くんは写真撮る係ね」
あ、怒ってる。
「ごめんって、副部長は冗談だから」
「スマホ持って」
あ、本格的に怒ってる気がする。
「……」
「本坂さん、どうしたの?カメラの前では笑ってくれないかな?」
「やっぱ去井くんも早くこっち来て」
「え?撮る役じゃなかったけ」
「設定で出来るでしょ、はい、いいから」
理不尽。
「3、2、1」
カメラのパシャが聞こえる。
俺はニヤリと笑っている。ええ、なんか嫌だな。
「じゃあ去井くん」
「え?なに」
「新入部員に幸あれ!」
「「「?」」」
え、俺の心のセリフ……。




